動脈列島

田宮二郎対近藤正臣。新旧クールガイの知的対決!(1975年・東京映画・増村保造監督)

物語。新幹線騒音による衰弱で老婆が死んだ。老婆を看取った研修医の秋山(近藤正臣)は騒音を直ちに解消しなければ10日後に新幹線を破壊すると国鉄に予告。警察庁の切れ者科学捜査官・滝川(田宮二郎)は緻密なプロファイリングで秋山を割り出し犯人と断定するが、その間にも秋山の計画通り次々新幹線は事故を起こす。やがて予告の日は目前に迫る。果たして新幹線はどのような手段で破壊されるのか・・・?!

「新幹線大爆破」(東映)と同じ年に製作・公開されたことから、よく比較される作品です。ただ「新幹線大爆破」の方はスリルとサスペンスが中心で新幹線はあくまでその舞台に過ぎず、また犯人の動機など社会性はストーリーの背景にあるだけなのに対して、こちらの方はまず新幹線の騒音問題自体がテーマなのでサスペンスの度合いはやや低く、ストーリーも淡々と進みます。従ってこの当時、新幹線騒音公害のみならず、やれストで年中電車は止まるわ、やれサービスは悪く運賃だけ高いわと、民営化前の国鉄が社会の憎まれ者になっていた時代背景を知らないでただサスペンスだけ期待して見ても、あまり面白くないかもれしませんね。
また、犯人と行きずりの女(梶芽衣子)との孤独な者同士のつかの間の愛、なんてあたりの展開には、いかにも70年代的なテイストを感じます。

むしろ個人的にこの映画で辟易するのは犯人より権力側のぬるい描き方。
田宮二郎の捜査官が神の如き洞察力で1億人(!)の中からあっという間に犯人を割り出す・・・のは、まぁいいとしても(だって田宮だからw)、国鉄総裁・山村聡は実に高潔な人格だし警察長官の小沢栄太郎も何だかんだ言って責任を回避せず決断力に富む人物なのは、あまり現実離れし過ぎていてシラけます。現実の国鉄総裁やら警察庁長官なんてのは所詮役人に過ぎないわけで、責任逃れと優柔不断でオタオタしているのがオチでしょう。もっともそれじゃあ、映画と違ってあっさり新幹線が破壊されてしまいそうですが^^;

近藤正臣は新幹線騒音に静かな怒りを燃やす青年医師を好演。また梶芽衣子、犯人の恋人役関根恵子の両女優も色っぽくていいですネ。
ちなみに「新幹線大爆破」で捜査課長役だった鈴木瑞穂がこの映画では新聞記者、同じく鉄道公安課長役だった渡辺文雄が野党代議士、新幹線車両部長役だった山本清が国労の委員長など、両方で被っているキャスティングを比較して見るのも面白いです。


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昨日消えた男

元祖「暴れん坊将軍」?
(1964年・大映・森一生監督)

物語。幕府と朝廷の確執が取り沙汰される中、今年下向する勅使は直言居士の公卿だと言うので、剛直な上様と衝突して大変な事になるんじゃないかと幕閣は憂慮していた。
一方そんな心配も知らずしてか、将軍吉宗(市川雷蔵)は夜な夜な退屈しのぎに小姓を集めてなぞなぞゴッコしていた。しかしそれにも飽きてしまい、町奉行大岡越前(三島雅夫)に頼み込んで同心になり一件だけ事件を捜査しようとする。困った越前は既に解決済みの事件をあてがってお茶を濁そうとしたが吉宗にばれてしまう。
越前たちの目を掠めて逃げ出した吉宗は寺子屋の先生・大橋兼四郎(宇津井健)と知り合い、お浪(藤村志保)のやっている一膳飯屋で一杯飲んでいると、「美濃屋の持ち船・竜神丸が幽霊船だった」と話している男がいる。兼四郎の長屋に帰ると、先刻の男が死体となって発見される。
翌日、吉宗と兼四郎は死んだ男の雇い主である回船問屋・河内屋に話を聞こうと訪ねるが、何故か河内屋は余計なことをしないでくれと怒る。河内屋の娘・お園(高田美和)は、父親が三年ほど前から急に人柄が変わってしまったと嘆くのだった。
やがて兼四郎を訪ねてきた浪人者、河内屋の船頭、更に竜神丸に乗っていたお浪の兄(木村玄、現・元)が次々殺される。
事件の鍵は幽霊船にあると睨んだ兼四郎、お園、お浪は竜神丸へ、そして吉宗は美濃屋に忍び込んで行き、そこで幕朝間の不仲につけ込んで幕府転覆を図る陰謀を知る・・・

と言う訳で大立ち回りが演じられ、最後に事件を解決した吉宗がお城に戻って勅使を迎えると、なんとそれが兼四郎だった・・・というオチ。幽霊船の謎がチャチだとか、吉宗はまだしも公卿が浪人になるのは無理だろうとか、ツッコミどころはいろいろある荒唐無稽な話ですが、そういう野暮は言わずに雷蔵の颯爽たる活躍を楽しむのが主眼の痛快娯楽時代劇。
同心になった吉宗がしたり顔で「全て事件の裏には女がいることになっておる」なんて説いたら出てきたのは腰の曲がった婆さんだったり、袖の下として出された小判を本物のお菓子だと思ってかじりついたり、つい将軍の癖が抜けずにいて慌てて居住まいを直したり、軽妙でとぼけた芝居をさせると雷蔵さんの持ち味が光ります。知的で気品があって決して嫌味な感じのしない、こういうスターは銀幕の中からしか生まれて来ないのでしょうね。ただ雷蔵さんは足腰が弱いせいか刀に振り回されているように見えてしまい、チャンバラシーンにやや安定感が欠けるのが玉に瑕です。

藤村志保さんは1人で飯屋を切り盛りする娘役で、陰謀の秘密を漏らした兄が殺されてしまいます。しっかり者で、でも悲しい目に合う役廻りと言うのは狂四郎でも明朗時代劇でも変わりませんね。どうせなら高田美和の演じたおきゃんな娘の方を演じて貰いたかったですが。宇津井健は後年の大映ドラマで有名になった声を震わせるオーバーな演技を、この頃はしてなかったんですね。


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眠狂四郎無頼剣

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天知茂主演「テロリスト愛染の野望」・・・(ウソ)、市川雷蔵主演の眠狂四郎シリーズ第8作です(1966年・大映・三隅研次監督)

物語。江戸一番の油問屋・弥彦屋(香川良介)に白昼、浪人が押込み強盗に入り、大塩中斎秘伝の油精製法を記した図録を持ち去った。浪人の名は愛染(天知茂)。先年、乱を起こして斃れた大塩の残党一味の首領だった。愛染たちは大塩を裏切った商人と幕閣に復讐を果たさんとし、江戸を火の海にしようと計画していたのだ。
ある晩、狂四郎は偶然出会った愛染一味、更に謎の女芸人(藤村志保)から大塩の嫡子・格之助に見間違えられ・・・

というわけで狂四郎は事件に巻き込まれていき最後は燃え盛る江戸の町をバックに、同じ円月殺法を使う愛染と大屋根の上で対決と相成ります。
明と暗のコントラストが効いた映像美、格調高い伊福部昭の音楽(でもエンディングは怪獣物と同じ^^;)、そして陰翳を帯びた天知先生扮するテロリストの描き方などは抜群です。

ただその反面、主役の狂四郎の影が薄杉。ヘコヘコ頭を下げるわ、お尻がむず痒くなるようなマザコン丸出しの台詞を吐くわ、、、と、キャラ壊れ気味です。まして濃ゆいニヒルの天知先生が相手なので、どっちが主役かわかりません。更にストーリーの多くが台詞によって長々説明されるので、一度見ただけじゃ理解できないのもやや難点か。

この映画での藤村志保さんは、角兵衛獅子の女芸人・勝美の役。
かつて弥彦屋の甥の一文字屋にそそのかされ大塩格之助の図録を盗んでしまい、その贖罪のため一文字屋を狙っているという役どころです。
狂四郎ガールズがぞろぞろ出て来てエロを振りまく他のシリーズ作品と違ってこの作品で女性キャラは事実上志保さん一人。なので露骨なエロはありませんが、志保さんの艶っぽさは満開。
天知先生の発散する男の色気と言い、この辺は三隅演出の面目躍如足るものがあります。

何の必然性があるのか、愛染に拉致され裸に剥かれた勝美が布団に包まって横たわっているシーンもあります。しかもそれを間に挟んで狂四郎と愛染が大真面目に問答。よく考えてみればコントみたいです。
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市川崑監督死去

映像の魔術師、巨匠・市川崑監督逝く。
92歳だから大往生と言えるものの、やはり淋しいです。
数多くの名作、代表作がありますが、個人的にはリアルタイムで見ていた金田一耕助シリーズに尽きます。「犬神家の一族」の時は見なかった(当時は横溝正史自体知らなかった)ものの、「悪魔の手毬唄」から「病院坂」までの4作品は全て封切時に映画館へ足を運びました。そういう意味では少年時代に日本映画の面白さを教えてくれた恩人ともいえます。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
「金田一シリーズ」のパンフレットから。

「悪魔の手毬唄」製作発表にて。

「獄門島」撮影セットを訪れた原作者横溝正史氏と。


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眠狂四郎女妖剣

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市川雷蔵主演の眠狂四郎シリーズ第4作(1964年・大映・池広一夫監督)。
前3作までの人気がイマイチだったらしくテコ入れが図られ、この作品からエログロ趣味が強化されたということです。そのおそらく最大の目玉だったであろうのは藤村志保さん。デビュー以来清純派で売っていた志保さんがヌード(?)になっているという、衝撃作です。

物語。狂四郎は鳥蔵(小林勝彦)という男から、隠れ切支丹を助けてくれるよう頼まれるが断る。やがて鳥蔵は幕府に捕縛される。それからまもなく、狂四郎は往来ですれ違った娘の顔に死相が出ているのを見る。娘は鳥蔵の妹・小鈴(藤村志保)だった。小鈴は役人から、兄を助けたくば、切支丹の宣教師を転バテレンするため体を与えよと命じられたのだ。しかし約束は守られず、更に小鈴は河原者たちに襲われてレイプされ、狂四郎が駆け付けるも間に合わず自害する。狂四郎は今際の鳥蔵から、びるぜん志摩(久保菜穂子)という自分と縁のある女がいると聞かされ、浜松へ向かう・・・。

そして以下道中の狂四郎に様々な刺客が襲って来た挙句、最後には狂四郎出生の秘密が明かされるというお話。狂四郎の敵方に扮するのは根岸明美、春川ますみ、稲葉義男、中谷一郎、若山富三郎など豊富です。ただ肝心の中身は脈絡のないエピソードのつまらない羅列に終わっているので話の出来はイマイチです。

でもって藤村志保さんの登場シーンは冒頭20分余りまでで終わり。それも単なる脱ぎ要員、汚れ役という、くだらない使われ方。勿論ヌードと言っても胸の谷間から上が見えるぐらいだいし、また実際には水着を着て撮影したようです。しかし当時のことですから清純派の女優さんが衆人看視の撮影現場で肌を見せるのはかなり勇気がいったことでしょう。従って劇中で見せる自暴自棄の思いつめた表情はあながち演技ばかりではないのかもしれません。
というわけで志保さんの見所がないのですが、恩義ある雷蔵のため体を張った甲斐あって映画はヒットし、打ち切りの危機に瀕していたシリーズはめでたく続行して後の世まで雷蔵の代名詞となったのが救いです。
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不毛地帯

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戦争に負けても誇りは失わなかった男が戦後ビジネスの世界で見たのは荒涼たる風景だった(1976年・芸苑社)

物語。11年間のシベリア抑留から帰国した元大本営参謀の壱岐正(仲代達矢)は近畿商事に入社。当時近畿商事は次期戦闘機選定を巡って東京商事と熾烈な競争下にあったが、戦争が心の傷になっている壱岐は当初、軍関係の仕事を避けている。しかし国防が政治家の利権絡みで決められてしまうことを憂える戦友の川又空将補(丹波哲郎)の勧告もありやがて商戦に参画。ライバル東京商事の鮫島(田宮二郎)を相手に、政界を巻き込んだ激しい売り込み工作を繰り広げて行く。最終的に商戦には勝った壱岐だが、その代償に失ったものは・・・

「華麗なる一族」(1974)「金環蝕」(1975)と続いてきた山本薩夫監督の政財界物の第3作です(原作は全部山崎豊子・・・?いや「金環蝕」だけ石川達三)。ただしエンターテイメントとしての醍醐味は作を追うごとに低下しシリアス度が上昇。
群像劇として展開された前2作に比べ本作は専ら壱岐1人が主役。特に前半は、軍関係の仕事を拒んでいた壱岐が何故戦闘機売り込みの商戦に携わるようになったのかという経緯を、途中シベリア時代の回想シーンなども織り交ぜつつ長々描いているのでちょっと退屈。仲代独特の陰々滅々たるマイナスパワーが炸裂します。
漸く面白くなってくるのは商戦が本格化する後半からですが、それでも陰気なトーンは相変わらずでなかなか話に乗っていけません。極めつけは、最後に商戦の犠牲となった川又が自殺か事故かわからない轢死を遂げ人間の原型をとどめないほどバラバラの肉片で発見されるという生々しくもやりきれない結末。これが現実と言ってしまえばそれまでですが、娯楽映画としてはどうしたものか。前2作ではさほどでなかったヤマサツの左翼プロパガンダもかなり露骨になっています。

近畿商事社長役の山形勲は、「巨悪」と言ったら真っ先にこの人が浮かぶ重厚な風格のある役者さん。敵役・防衛庁の貝塚官房長役の小沢栄太郎は嫌になるぐらい憎々しく、小沢の狸芝居が大好きな私でもこの映画に限っては投げ飛ばしてやりたい気分になります。
ちなみに貝塚のモデルとされる海原治は80年代始め「竹村健一の世相講談」ゲストで何度か見かけたことがあるので、へぇあの人が・・・と感慨深いです。モデルとなっている実在の政治家では
久松経企庁長官(大滝秀治)・・・迫水久常(元書記官長、池田内閣経企庁長官)
山城防衛庁長官(内田朝雄)・・・赤城宗徳(岸内閣防衛庁長官)
三島幹事長(杉田俊也)・・・川島正次郎(岸内閣幹事長)
原田空幕長(加藤嘉)・・・源田実(自衛隊空幕長、のち参院議員)
などは容易に推定できます。他にも、岸信介もどきの出っ歯の総理大臣はギャグに近いし、神田隆と久米明は「金環蝕」に引き続きそれぞれ佐藤栄作と池田勇人のそっくりさんで出演。
またヤマサツの社会派オールスター映画では脇役チョイ役にまで無駄に?有名俳優が出演しますが、この映画でも仲谷昇、山口崇、北大路欣也、山本圭、中谷一郎、石浜朗などが顔見せ。
一方、豪華男優陣に対して女優陣は八千草薫(壱岐の妻)、秋吉久美子(壱岐の娘)、そして藤村志保(川又の妻)の三人だけ。
ちなみに藤村志保さんにとっては大映倒産後初めての、6年ぶりの映画出演だったわけですが、出番は最後の最後にちょっとあるだけ、それも泣き役に過ぎないのでさしたる見所はありません。
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