眠狂四郎悪女狩り

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市川雷蔵の「眠狂四郎」シリーズ第12作目にして最終作。そして雷蔵さんと藤村志保さんの最後の共演作(1969年・大映・池広一夫監督)。今回の舞台は大奥です。

物語。江戸市中に偽狂四郎が現れ殺人強姦を繰り返す。その正体は、隠れ切支丹の川口周馬(江原真二郎)。大奥の権力争いに利用された周馬は切支丹たちをルソンへ逃がしてやるという約束で、大奥取締・錦小路(久保菜穂子)の邪魔になる人物を抹殺していたのだ。そんな周馬を妹の小夜(藤村志保)は止めようとするが・・・。

というわけで、最初のうちは「狂四郎が二人いてならぬという定めはない」などと半ば傍観を決め込んでいた狂四郎ですが、やがて事態に巻き込まれていきます。出演者は志保さん久保菜穂子伊達三郎という常連に加え朝丘雪路松尾嘉代吉田日出子小池朝雄など。
雷蔵はこの撮影前3ヶ月入院しておりこれが復帰作。
偽狂四郎を出して代わりに円月殺法をやらせたのは、病み上がりの体力を慮ってのことだったのでしょうか。
この時、既に病の進んでいた雷蔵さんの面やつれが指摘されることがありますが、もともと狂四郎は健康的なキャラではないのでさほど気にはなりません。むしろ藤村志保さんの方がげっそり痩せているように見えるのですが、それもそのはずで、当時彼女も体調を崩していたそうです。そのせいか、いつもにもまして儚げです。
原色を前面に押し出した映画の基調カラーは毒々しく、めまいがします。鳥装束の忍者や能面のくの一が踊り乱れる様はシュールですらあります。

それはさておき、隠れ切支丹を解放するという約束は真っ赤な偽りで、結局切支丹たちは捕縛され、更に志保さんの小夜も殺されてしまいます。いまわの際に狂四郎から十字架を握らされた小夜は呟きます。「狂四郎様、さようなら・・・」
って、実際にはこの半年後に雷蔵さんの方が死んでしまい、この撮影が志保さんとの今生の別れになってしまったんだよなぁと思うと、フィクションを通り越して思わず涙を禁じ得ません。
またラストの偽狂四郎との対決シーンでの狂四郎の台詞「今まで眠狂四郎が何人いてもかまわないと思っていたが、やはり狂四郎は一人でなければならん」がまるで既に己の寿命を悟っていた雷蔵さん自身の遺言のようにも聞こえてまた思わず(略)
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関連タグ: 市川雷蔵 藤村志保 大映

二百三高地

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近代日本のターニングポイントとなった日露戦争における旅順攻防戦を描いたオールスター映画(1980年・東映・舛田利雄監督)。

物語。明治37年、中国大陸でロシアと利害の衝突する日本は明治天皇(三船敏郎)の裁可を得て遂に開戦。圧倒的に国力の劣る日本は勝敗を何とか引き分けの線まで持って行った上で有利な講和をはかるべく、元老の伊藤博文(森繁久弥)、参謀次長の児玉源太郎(丹波哲郎)らは苦慮していた。
旅順攻略のため新たに編成された第3軍司令官・乃木希典(仲代達矢)のもと、ロシアを愛しトルストイを愛読する小学教師・小賀(あおい輝彦)も召集され小隊長として満州に渡る…。

と言う訳で、伊藤、児玉、乃木ら政府・軍首脳側から見た戦局全般の動きと、あおい輝彦率いる小隊の無名の兵士たちの側から見た戦場の実態との両面から描かれています。
出演者の三船、森繁、佐藤允、平田昭彦…おまけに特撮が中野昭慶と言った顔ぶれだけ見ると、森谷司郎監督の東宝映画かと錯覚してしまいそうですが、これは東映製作の映画です。

戦後生まれの日本人にとっちゃ乃木将軍なんてどーでもいい存在で、名前も知らない人が大部分でしょう。しかし戦前までは教科書にも載っている偉人、軍神だったんですね。例えば私の母方の祖父なども、大の乃木ファンでした。
尤も私自身は司馬遼太郎の影響で愚将と思っていたので、この映画も昔見た時は期待通り?乃木が無能に、そして児玉源太郎がカッコ良く描かれていたことだけで満足していました。
しかし先日見返したら、「人」として乃木の優しさ、指揮官としての苦衷、悲哀…というものもしみじみ伝わってきました。年を取った証拠でしょうか^^;また、その機微を演じきった仲代の演技力はさすがですね。目ん玉ひん剥いて力演する時の仲代は好きになれないのですが、こういう静かな芝居をする時こそ際立つ表現力の豊かさは確かなものがあります。
一方、丹波哲郎はいつもいつも同じ芝居、同じ丹波。なのに、この映画を見て以来児玉大将というと必ず丹波の顔を思い浮かべてしまうのは不思議です。

三船敏郎の明治天皇はドスが効きすぎていて違和感がなくもないのですが(三船が司令官で戦地へ行けよと思ってしまうw)、ラストシーンで仲代の背中に手を置いて様になる役者は、やはり世界のミフネしかいないと納得。そういう俳優の格とか貫禄が役に反映されているのは、まだ映画黄金時代の余韻がかろうじて残っていた当時ならなのでしょう。
ただ独りよがりな主題歌は最悪。コイツの悲壮ぶった金切り声を聞くと悪寒が走ります。
出演は他に夏目雅子、天知茂、新沼謙治、佐藤允、他

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関連タグ: 三船敏郎 仲代達矢 東映

妖星ゴラス

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この映画から後にビートルとイデ隊員が「ウルトラマン」にスピンオフしました(1962年・東宝・本多猪四郎監督)

物語。1980年、パロマ天文台は質量が地球の6000倍ある怪遊星「ゴラス」を発見。日本の隼号が観測に向かったがゴラスに引き寄せられて爆発する。隼号の送信データから田沢博士(池部良)と河野博士(上原謙)は、ゴラスが2年後に地球に衝突すると報告。ゴラスを避けるため、国連は南極に巨大噴射口を設け、地球の軌道を変える計画を推進する。しかしその間にもゴラスは周囲の星を次々吸収し質量を増加させながら地球に接近し続け…。

黒色矮星の衝突で地球が木っ端微塵になり人類が滅亡するかもしれない、という危機を描いたSFパニック映画。
この映画は凄いですね。
何しろ、「地球をロケットのようにして動かす」と言うんだから壮大です。
これほどスケールの大きな「夢」を描いた作品は他に例を見ないんじゃないでしょうか。

ただ、その割りに冒頭の隼号遭難シーンを除いて悲壮がかったところは殆どなく、全体のトーンはやけに明るく陽気です。背景にあるのは「人類の叡知を結集すれば危機は乗り越えられる」という科学理想主義と沢村いき雄扮する暢気なタクシーの運ちゃんに象徴される大衆の楽天主義。
宇宙パイロット役の二瓶正典(現・正也)なんかは早くもイデ隊員のノリでボケかましてるし、池部良は人類の危機を嘆きながらドサクサ紛れにちゃっかり白川由美とラブシーン演じてるし、脈絡なく突然現れた怪獣マグマは何かマヌケで可愛い。
更にゴラスを回避した後にも、今度は地球の軌道をまた元に戻すという大事業が控えているにも関わらず、池部良の「やらなくっちゃ!!」の一言で済んでしまうんだからすごい。「日本沈没」も小林桂樹じゃなくて池部良が博士だったら何とかしてくれたんじゃないかと思うぐらいです。

尤も、池部良の冷めた演技には、頼もしいと言うより本人の特撮物への思い入れのなさ・やる気のなさがアリアリなので萎えます。同じクールなキャラでも、特撮物の常連・平田昭彦のカッコイイ演技が安心して見られるのとは対照的。
ちなみに怪獣の登場シーンは不評のようですが、個人的には志村喬の活躍が見られたので無問題。それより久保明の記憶喪失エピソードの方がストーリー上意味がないし不要だと思うのですが。
白川由美は毒にも薬にもならないご令嬢役。水野久美は入浴シーンなどもありますが、後の「マタンゴ」や「怪獣大戦争」に比べると普通の役です。
政府高官役の佐々木孝丸、小沢栄太郎、河津清三郎、西村晃は、地球の危機そっちのけで汚職とかにうつつを抜かしていそうな胡散臭い顔ぶれです^^;
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関連タグ: 東宝

若親分

東映の任侠映画に影響された大映が看板大スター市川雷蔵主演で作った「若親分」シリーズの第1作(1965年・大映・池広一夫監督)。

物語。時は明治末期。南条組の親分が滝沢組に草鞋を脱いでいた男に斬殺された。海軍士官の身分を捨てて跡目を継いだ一人息子の武(市川雷蔵)は襲名披露の夜、単身、滝沢組に決闘を挑み、相手の巳之助親分(石黒達也)の片腕を切り落として仇を討つ。
先代親分の供養のため浪曲師・桃中軒雲右衛門(三波春夫)の興行を計画していた南条組だが、大田黒組の伊蔵(佐藤慶)の策謀であわや横取りされそうなる。しかし若親分はまたしても単身、大田黒組へ乗り込み、伊蔵と差しの花札勝負を挑み勝つ。更に若親分は、伊蔵に金と力ずくで妾にされていた芸者の千代梅(藤村志保)を助けて、無事恋人の高瀬(山下洵一郎)と駆け落ちさせてやる。面子を丸潰れにされた伊蔵は刺客を放つ。実は伊蔵こそ先代を殺した黒幕だったのだ・・・。

と言う訳で、真相を知った若親分が巳之助親分に詫びると、巳之助は笑って許してくれるのですが、片腕を切り落とされても寛容な人がいるのか?!って、かなり無茶苦茶な筋立てです。まぁ、そこが任侠世界の論理なんだということになるのでしょうが、こういう話に見慣れていないとついていけない展開です。また、大勢の子分を従えながら再三の出入りを悉くたった一人で片付けてしまうなんて若親分あまりにも強すぎ。こうも完全無欠過ぎてはキャラクターとしての面白みに欠けます。愛社精神から会社のために引き受けたのでしょうが、雷蔵さんにとってあんまり必然性のあった役とは思えないですね。

また、残念ながら今作での藤村志保さんはヒロイン(雷蔵の相手役)ではなく、出演シーンも少なくて顔見せ程度という感じ(大河ドラマ『太閤記』のレギュラーで忙しかったせいか?)それはいいとしても雷蔵さんの恋人役が朝丘雪路というのはどうも。こういうベタベタしたタイプは私の苦手な女優さんなので、イマイチしっくり来ません。
それはともかく、志保さんが伊蔵の追及から逃れるシーンでは、なんと頭を剃って尼姿、丸坊主になっています。と言っても顔と頭が同時に映らないので、おそらく代役か何かでしょう。でも観ている方としては笑っていいシーンなのかどうかと悩むところです^^;

若親分の母親役には原泉。あの妖怪婆からどうすれば爽やかな雷蔵さんが生まれてくるのかと小1時間。
あと、怪優・成田三樹夫が南条組の子分役で出ていますがこの映画じゃ至ってノーマル。この頃はまだ悪役じゃなかったんですネ。

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関連タグ: 市川雷蔵 藤村志保 大映

日本映画名作劇場

昭和時代の映画放送番組と言えば、淀長さん(淀川長治)が解説の「日曜洋画劇場」(テレビ朝日)、荻昌弘氏の「月曜ロードショー」(TBS)、水野晴郎の「水曜(後に金曜)ロードショー」(日本テレビ)、高島忠夫の「ゴールデン洋画劇場」(フジテレビ)などが思い出されます。
しかしこれらは全て洋画の専門枠。
邦画を放送してくれるのは東京12チャンネル(現テレビ東京)の「日本映画名作劇場」(土曜夜10時)が殆ど唯一の枠でした。

この番組は80年代始めに終了してしましたが、その後も事実上深夜に移行したような形で、「土曜名画劇場」だったか何だったか名前は忘れましたが、やはり長らく日本映画を放送していました(更にいえば、東京12チャンネルでは平日の午前中にも邦画を放映していた時代もありました)。

解説者は初代が映画評論家の白井佳夫氏だったらしいのですが、私の記憶にあるのは髭と眼鏡、落ち着いた口調が印象的だった品田雄吉氏の時代。
「名作劇場」と言っても、実際は誰もが知っているような名画はあんまりやらず、よく放送していたのは大映や日活の末期、ATGのマイナーな作品でした。

例えば松坂慶子主演の「夜の診察室」(1971年・大映・帯盛迪彦監督)、関根恵子主演の「おさな妻」(1970年・大映・臼坂礼次郎監督)、夏純子主演の「女子学園 悪い遊び」(1970年・日活・江崎実生監督)、緒形拳・安田道代主演の「セックスチェック 第二の性」(1968年・大映・増村保造監督)、細川俊之主演の「音楽」(1972年・ATG・増村保造監督)、篠田三郎主演の「金閣寺」(1976年・ATG・高林陽一監督)、永島敏行・森下愛子主演の「サード」(1978年・ATG・東陽一監督)…などなどをこの枠で観た記憶があります。
大映・日活に比べATGの方はやや高尚というか芸術的と言う違いはあれど、大部分に共通するのは70年代初め頃の、いかにもあまりお金のあまりかかってなさそうな、しかもちょっとエッチなテーマもしくはシーンの出てくる映画が多い、と言うことでした。
中でも思い出深いのは「夜の診察室」が放送された時のこと。

当時人気絶頂だった松坂慶子が19歳の頃に初主演したお色気物(ヌードもあり!?)と聞いていたので、前の週から放送を待ちかねていたのですが^^;しかし週末の夜10時と言ったらまだ家族も起きている時間帯、それもテレビは茶の間に1台。周りの目を気にしながらこそこそとテレビのチャンネルを合わせたところ、映画が始まるやいなや、いきなりイヤラシイ女の唇がアップで現れ、甘ったるい声で開口一番「セックスゥゥゥゥ!!」
…身の縮む思いとはこのことでした。
(なお、映画の中身は大してエロと言うほどではなかったし、お目当ての松坂慶子も勿論ヌードなどありませんでした)

ちなみに、この番組以外で当時日本映画を放送していた枠というと、日曜日の午後によく日本テレビやフジあたりで大映の「座頭市」「眠狂四郎」、東映の「新吾十番勝負」、東宝の「社長シリーズ」などの時代劇、喜劇をやっていたほか、NHKで休日稀に小津や木下恵介などの名作物を放送することもあったように記憶しています。

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