切腹

海外でもそのまま「Seppuku(Harakiri)」で通ってしまう映画(1962年・松竹・小林正樹監督)

物語。井伊家の江戸屋敷を訪れた津雲半四郎と名乗る初老の浪人(仲代達矢)が「切腹のため玄関先を拝借したい」と願い出る。それを聞いた家老の斎藤勘解由(三国連太郎)は苦々しい顔をする。当時、食いつめた浪人者が、切腹するので門前を借りたいと称して大名家から金品をせしめることが流行っていたからである。家老は津雲を屋敷に上げ、先日も若い浪人(石浜朗)がそのように申し出たので、見せしめのため無理矢理腹を切らせたという話をする。その若い浪人こそ津雲の娘婿だった…。

冒頭から画面いっぱいに張り詰めたような緊迫感がみなぎります。物語は舞台劇のように固定された場面で殆ど仲代と三國の対話のみで進行し、その中に回想の形で仲代の身の上が語られて行きます。

貧乏な浪人生活で妻(岩下志麻)と幼い子供が病気になっても医者に見せることもできない石浜朗は、窮余の末、井伊家で切腹狂言の挙にでます。しかし家老と井伊家の侍たち(丹波哲郎、中谷一郎、青木義郎)にネチネチといたぶられた挙句、本当の切腹、しかも竹光での切腹に追い込まれてしまいます(この切腹が実に痛そう!)その後、妻と子も相次いで死に、やがて舅の仲代が復讐のため井伊家に乗り込んでくる、というお話です。

この映画を子供の頃テレビで観た時の印象では、単に仲代が、苛め殺された娘婿の復讐をする話だと思っていました。でも見返してみると、それだけではないのですね。
仲代は、娘婿が妻子のため刀を売り払っていたのに、自分は武士の体面のため刀と言う形だけのものにしがみついていたことを愧じており、そのような「武家社会の体面」そのものに対する復讐を挑もうとするんです。
一方、三國も単に悪役というわけではなく、井伊家=徳川譜代筆頭の家老の立場は武家社会の体面を守り抜くのが使命なのですから、それを汚す者は容赦なく処断するというのは、それはそれで筋が通っています。
従ってこの物語は、体制と反体制、互いに価値観の相反する立場の激突。必ずしもどっちが正邪とも描かれていないところに深みを感じます。

仲代はこの時まだ29歳なのに初老の役を演じても全く違和感ない風格が凄い。
三國連太郎は憎々しい役を演じると光ります。仲代に「武家社会の体面など所詮上辺を飾るもの」と嘲笑れて内心愕然としながらも非情を装う演技が素晴らしいです。
丹波哲郎は石浜朗をネチネチと切腹に追い込み、最後は仲代と対決して髻を切られる敵役。この頃の丹波は役者としてまだ大物ではなく、中物ぐらいの格ですね。
ちなみに仲代と丹波の決闘シーンでは、刀はホンモノの真剣で行われていたそうです。
出演者は他に稲葉義男、佐藤慶、小林昭二ら。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

関連タグ: 仲代達矢
スポンサーサイト

柳生一族の陰謀

yagyuichizokunoinboop.jpg
時代劇版「仁義なき戦い」(1978年・東映・深作欣二監督)

物語。将軍秀忠亡き後、三代将軍の座をめぐって長男の家光(松方弘樹)を推す松平伊豆守(高橋悦史)・春日局(中原早苗)と次男の忠長(西郷輝彦)を推す秀忠未亡人崇源院(山田五十鈴)・土井大炒頭(芦田伸介)らが対立。一方、京都の公家達(金子信雄、成田三樹夫、梅津栄)はその対立を煽り、混乱に乗じて王政復古を目論む。家光派の柳生但馬守(萬屋錦之介)は息子の十兵衛(千葉真一)らを使って策謀を張り巡らせる…

まるで勧進帳を読み上げる弁慶の如き大仰な台詞回しの錦之介、やたらと無駄に熱い男・千葉真一、そしてカン高い「おじゃる」言葉で喋る烏丸少将の成田三樹夫…はっきり言って出演者の濃いキャラクターだけでもっているような映画です。肝心のストーリーの方は、だらだらと長いだけで盛り上がりに欠けます。監督が深作だけあって、将軍家の跡目をめぐる抗争をヤクザ映画のノリで描いているわけですが、時代劇という制約があるので弾けっ振りが今ひとつ。しかし退屈しそうになるとタイミングよく錦之介が登場して眠気を吹き飛ばしてくれます。

とにかく、のっけから終始一人だけ別の世界で芝居をしているのが錦之介。序盤の高橋悦史との掛け合いなんて、全く演技が噛み合ってないので笑えます。違和感アリアリなのですが、しかしやがて見ているうちにだんだんと引きずり込まれてしまい、そのオーラに圧倒されてしまうから、あら不思議。「夢だ夢だ、ゆ~め~で~ご~ざ~るぅ~!!」と言うラストまで、まさに夢幻の錦之介ワールドが展開されます。
他にも三船敏郎、丹波哲郎、原田芳雄、夏八木勲ら個性の強烈な面々が続々登場し、得手勝手に大芝居。これは映画の出来云々より、オールスター演技合戦だと思って見た方がいいですね。

矢吹二郎(千葉真一の実弟)、志穂美悦子、真田広之ら当時の千葉ファミリーは勿論出演しています。この頃の真田広之なんて、まだまだあどけない感じです。
ちなみにこの手の時代劇に出てくる真田広之の住む村って、いつも焼き討ちに合っているような既視感があるのですが、、、気のせいでしょうか。
出演者は他に大原麗子、室田日出男、中谷一郎、工藤堅太郎、浅野真弓など。
yagyuichizokunoinbo01.jpg
yagyuichizokunoinbo02.jpg
yagyuichizokunoinbo03.jpg
yagyuichizokunoinbo04.jpg


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

関連タグ: 松方弘樹 三船敏郎 千葉真一

太陽を盗んだ男

taiyoop.jpg
若くて細かった頃のジュリーのヌードもあり(1979年・キティフィルム製作/東宝配給・長谷川和彦監督)

物語。中学の理科教師・城戸誠(沢田研二)は、東海村の原子力発電所に潜り込みプルトニウムを強奪、小型原子爆弾を作り上げる。彼はその原爆を盾に、日本政府へ破天荒な要求を突きつける…。

警察庁長官(北村和夫)に電話をかけたジュリーが「あんたイモだから」と言うシーンで笑ってしまいました。公開当時の映画館内では大爆笑だったんでしょうか?(知らない人は「イモジュリー事件」で検索してみそ)。他にも菅原文太の「日立ビーバールームエアコン」とか、ギャグとパロディが随所にちりばめてあります。

爆弾犯人が警察(政府)に要求…と言うと一見70年代前半に流行ったパニック物めいていますが、我らがジュリーの要求はなんと「ナイター中継の延長」。当時のナイター中継は9時終了延長なしだったんですね。延長どころか地上波での野球中継自体が少なくなってしまった今では、隔世の感ですが。

それはともかく、原爆と言う世界で8つの国家(当時)しか所有していなかった巨大な力を持ったにもかかわらず、ジュリーの犯行には基本的に何の動機も目的もありません。
映画の序盤でジュリーたちの乗った修学旅行のバスがジャックされ、犯人の老人(伊藤雄之助)が「天皇との会見」を要求します。この時、勇猛果敢に犯人を逮捕したのが菅原文太の刑事。
この2人にはそれぞれ命を賭けてもやりたいこと、守りたい信念があったのですが、ジュリーには何もありません。言い換えると生きる目的が何もないこと自体が犯行の動機になっているわけで、この辺は「シラケ世代」と言われた当時の気分を映し出していように見えます。

スケールの大きさ、派手なアクションの一方で人物像の描写などが全くされないためメリハリがなく、波長の合う人はハマるでしょうが、そうでない人には退屈かもしれません。見る人を選びそうな映画です。
出演者はほかに池上季実子、神山繁、佐藤慶、水谷豊、風間杜夫など

taiyio01.jpg

taiyio02.jpg

taiyio03.jpg

taiyio04.jpg


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

関連タグ:

遊び

関根恵子主演の大映末期の青春物(1971年・大映・増村保造監督)

物語。工場で働く少女(関根恵子、現・高橋恵子)には郷里に病気の姉と母がいて、時々母親が金の無心に来る。嫌気がさした少女は元同僚をたよってホステスになろうとして公衆電話で電話番号を探しているところへ、チンピラの少年(大門正明)が声をかけてくる…。

タイトルの印象とは違って10代男女の純愛物語。
たまたま知り合った、ともに貧しく恵まれない家庭に育った2人が惹かれ合い、全てのしがらみから逃れようとするまでの約1日間を描いた作品です。2人が一夜をともに(勿論お約束の、関根恵子のぽちゃっとしたヌードあり^^;)した翌朝、沈みかけた小船にしがみつくようにしてあてどなく海へ漕ぎ出していくラストシーンが切ない。貧しさとか、みじめったらしさとかでも、若さゆえに詩になると言う描写が許された時代の作品という感じがします。
大門正明と言うと私には「♪いつかは~お前も親父~その日には~」と歌っていたCMのイメージが強いですが、これがデビュー作。不器用でぶっきらぼうでも根は優しい人というオーラが当時から出ています。大門の母親役・根岸明美の、酒と男にだらしのない中年女振りはいつ見ても上手いし、若い頃の蟹江敬三が演じるチンピラの兄貴分の、爬虫類的なねちっこさも印象的。
ちなみにこれは松坂慶子の初主演作「夜の診察室」との併映作だったようですが、この映画にもチョイ役で松坂慶子が出ています。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

関連タグ:

悪名一番

勝新太郎&田宮二郎コンビの「悪名」シリーズ第8作(1963年・大映・田中徳三監督)

物語。街の金融会社で取り付け騒ぎが起こり、朝吉(勝新太郎)と清次(田宮二郎)が仲裁を買って出る。聞けば、社員が一億円近い金を持ち逃げしたのだという。朝吉と清次は逃走した社員を追って東京に乗り込む。だが初めての東京では戸惑うことばかり。おまけに朝吉と清次は些細なことから仲違いしてしまう…

東京タワーや建設中の高速道路が映し出されるなど、劇中に登場する東京の風景はどうみても撮影当時(1960年代)の「現代」。とすれば、シリーズ第1作で満州事変の頃(1931年)に戦争に行った朝吉なんぞはもうとっくに50歳を過ぎているはずですが、相変わらず若いまま。主人公がだんだん年齢不詳になって行くのはシリーズ物にありがちなご都合主義なのでいいとしても、いつまでも朝吉が着流し姿で、しかも大都会の街中を闊歩する様はあまりにも時代錯誤で浮いています。
尤もそれがこの映画のテーマ自体にもなっていて、靖国神社を巡る朝吉と清次の仲違いから新旧の価値観を対立させ、結局は時代が変わっても滅びない古き良き日本人気質の体現者=朝吉の普遍性を描くというところへ話を持っていこうとしているようです。しかし果たしてその意図は成功しているかどうか。むしろこの映画で活き活きとしていてやたらかっこよく、事実上の主役をさらっているのは都会的でモダンな田宮=清次の方。私には、心の広い若者が時代遅れのオッサンを立ててあげている物語に見えてしまいました。

本作のヒロインは江波杏子と雪代敬子の2人。しかし悲しいかな、クールで都会的な美女・江波杏子とドンくさい勝新では全く釣り合いが取れません。それを補うためか昔気質なやくざの娘・雪代敬子なんかが出てくるわけですが、そっちの方ともこれと言った間柄に発展せずに終わります。本来ならモダンな同士で、江波と田宮の関係を濃厚に描いたらいいと思うんですが、それじゃ勝新の立場がなくなっちゃうせいか、折角の江波の個性が生かされず実に中途半端なのが勿体無いです。
他の出演は安部徹、名和宏、丸井太郎、遠藤辰雄、藤原礼子、芦屋雁之助・小雁兄弟など。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

関連タグ: 勝新太郎 田宮二郎

忍びの衆

市川雷蔵の「忍びの者」を松方弘樹が引き継いだ作品(1970年・大映・森一生監督)藤村志保さんの大映ラスト作でもあります。

物語。天正11年。柴田勝家(内藤武敏)との決戦を目前にした羽柴秀吉(戸浦六宏)は、その前に勝家の奥方で信長の妹であるお市の方(藤村志保)を盗み出すよう、伊賀者のボス、音羽の城戸(内田朝雄)に依頼。密命を帯びた木城の与四郎(松方弘樹)、鬼瘤(峰岸隆之介、現・峰岸徹)、名張の助太夫(本郷功次郎)、おりん(安田道代、現・大楠道代)、そして音羽の城戸の娘の小弓(南美川洋子)は、"鉄の不落城"と呼ばれる勝家の居城・北の庄城に向かう・・・

これは「忍びの者」シリーズの第9作…と言っていいんでしょうか。少なくともタイトル的にはその系譜上にあることを意識させたネーミングですが、「者」から「衆」へと、単数が複数に変わっているあたりに何だかバッチもんみたいなチープさを感じてしまいます。内容的にも市川雷蔵主演の時代とはかなり違っています。
前半のストーリーでは、その素顔を誰も見たことが無いという齢100歳の伝説の忍者・愛染明王が松方らの前に立ちふさがるという、なかなかスリリングな展開。ところが、愛染明王は中盤であっさり倒されてしまうので、以後の物語に当然絡みません。また、北の庄城に侵入するのはさも困難そうにほのめかしていた割には、後半で簡単にお市の方を盗み出してしまっています。なんだか前半と後半では別の人が脚本を書いてるんじゃないかと思うぐらい出来の落差が激しいです。
厳格な忍者のリーダー本郷、忍者に飽き飽きしている不良っぽい峰岸、そして忍者の生き方に疑問を抱きながらもこの仕事を成し遂げることで己れを取り戻そうとしている松方…という人物設定と相関関係はうまくできています。戦国の世の無常を漂わせたラストも良く、もう少し全体の構成を工夫していたらもっと面白くなったかもしれません。

松方は以前「刑務所破り」を見た時も感じましたが、割と淡白な演技で、後年のアクの強さが苦手な私個人としてはいいのですが、主役としては物足りない感じもします。ムードメーカー峰岸徹の好演が目立ちます。
藤村志保さんは、雷蔵さん主演の頃だったら忍者の側(くの一)の役だったんですけど、既に忍者を演じるにはトウが経ってしまった…せいだかどうだか知りませんが、今回はお市の方。大映時代の志保さんのお姫様とかお方様の役って案外少なくて、これと「大魔神怒る」ぐらいなんですね。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

関連タグ: 藤村志保 松方弘樹

続・新悪名

勝新太郎&田宮二郎コンビの「悪名」シリーズ第4作(1962年・大映・田中徳三監督)

物語。闇市がなくなり、ぶらぶらしていた朝吉(勝新太郎)は靴磨きの少女・ひろみ(赤城マリ)を助け、自分の宿へ連れて帰る。そこで今は役者になったオカマのお銀(茶川一郎)と再会し、女剣劇一座の五月淳子(近藤美恵子)が演芸館主の玉島(遠藤辰雄、現・太津朗)の嫌がらせで芝居が出来ずにいると聞く。朝吉が玉島の元へ話を付けに行くと、そこには用心棒として雇われていた清次(田宮二郎)がいた…

このシリーズのタイトル名は「悪名」「続悪名」「新悪名」と来て、この4作目が「続・新悪名」。頭がこんがります。
前作では終戦直後の大阪の闇市が舞台になっていましたが、今作では既に闇市がなくなっているので、昭和25年ぐらいまで来ているのでしょうか。戦災孤児のひろみ(実は母親がいるのですが)が話の中心になっているあたりはまだまだ時代背景を感じさせます。
さて、旅一座を助けて無事興行を成功させたまでは良かったものの、ギャラを悪徳興行師(杉田康)に持ち逃げされてしまった朝吉。第1作と2作に登場した因島の女親分に借金に行きますが、旧知のおしげ(阿井美千子)から親分はもう亡くなっていると知らされ愕然。そこへ、これまた第1作で朝吉が助けて一時は恋仲になっていた琴糸(水谷良重)が金を持ってきて…と、お馴染みの登場人物が重層的に出てくるあたりはシリーズ物としての繋がりを踏まえた構成になっています。
一方、ひろみに歌手の才能があると知って、のど自慢コンクールに出そうと英語の歌を教える清次。ここで田宮がギターを弾きながら「センチメンタル・ジャニー」を歌うシーンがあるのですがこれが何気にいい声で、上手!いや、こんだけ上手いなら裕次郎やアキラの如く「歌う映画スター」として売り出しても良かったんじゃないかと思わせますが、大映の路線とは違ったんでしょうかね。ただ今作では朝吉と清次が一緒に行動する場面が少なくて、田宮の出番がやや控え目なのが残念。
全てが片付いた後、ラストシーンで朝吉がふと淋しそうな表情を見せる時の背景が、「戦後」ではなく「現代」(映画の撮られた当時)になっているように見えるのは何やら暗示的です。
ひろみのだらしない母親役がミヤコ蝶々。大阪が舞台の話にはやはりこの人が出て来なくっちゃと膝を叩く芸達者振り。のど自慢の司会者で浜村淳が出ていて、こんな昔からやっていたのかと芸歴の長さに驚きました。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

関連タグ: 勝新太郎 田宮二郎

風林火山

furinkazanop.jpg
甲斐武田家の軍師・山本勘助の半生を描いた戦国巨編(1969年・三船プロ・稲垣浩監督)

物語。牢人の山本勘助(三船敏郎)は甲斐武田家の重臣・板垣信方(中村翫右衛門)に取り入り武田晴信(後の信玄、中村錦之助)に召し抱えられる。晴信は諏訪頼重(平田昭彦)を謀殺。その際、勘助は諏訪の姫・由布姫(佐久間良子)に心を奪われる。更に晴信は信濃を攻略。信濃の武将たちは越後の上杉謙信(石原裕次郎)を頼る。信玄と謙信はやがて川中島で激突する…

三船・錦之助・裕次郎の三大スターが共演した大作(と言っても、裕次郎は終盤ちょっと出るだけで台詞もない特別出演ですが)。他にも中村錦之助&賀津雄兄弟、平田昭彦&久我美子夫妻、中村翫右衛門&梅之助親子の共演もあり、三船プロの社運を賭けた(かどうか知らないが)一大戦国時代劇絵巻です。
後年、黒澤明の「影武者」が公開された際、同じく信玄を扱った大作として引き合いに出され、合戦シーンのスケールの大きさが改めて評価されたりもしたものです。

三船は少し老け過ぎの感じもしますが、調べてみると勘助が武田家に仕えたのは40代後半ぐらいらしいので、当時48歳の三船が演じてもおかしくはないのですね。それに貫禄ある三船の雰囲気は、若き晴信(信玄)=錦之助との対比の上でも効果十分。晴信と勘助の、由布姫を巡る微妙な関係なども交えつつ物語性豊かに描かれているので、3時間近い上映時間が決して長くは感じません。
また、オールスター映画なので、実に様々な顔ぶれが見られます。

緒形拳は勘助の槍持ちのひょうきんな侍。4年前にNHKドラマ「太閤記」で主役を演じたとは言え、演劇界の重鎮が結集した中ではまだまだ軽いポジションだったことが窺えます。
田村正和は晴信の弟、信繁役。今とは全くイメージが違いますね。
中村勘九郎(現・勘三郎)は元服前の武田勝頼役。太ってます(笑)

大作物にありがちな、やや大味なところはあるとは言え、超一級の娯楽作に仕上がっていると思います。
出演はほかに志村喬、中谷一郎、月形龍之介、土屋嘉男、香川良介、大空真弓など。
furinkazan01.jpg
furinkazan02.jpg
furinkazan03.jpg


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

関連タグ: 三船敏郎

連合艦隊司令長官 山本五十六

yamamotoisorokuop.jpg
東宝男優陣総出演の戦記映画(1968年・東宝・丸山誠治監督)。翌69年にはほぼ同じ顔ぶれで「日本海大海戦」が製作されています。

物語。昭和14年、山本五十六(三船敏郎)は海軍次官から連合艦隊司令長官に転任。昭和16年、山本は日米開戦に極力反対するが、事志と異なり戦争に突入する。山本は早期講和実現のため有利な条件を獲得しようと作戦を進める。しかし日米の戦力差は圧倒的で、山本は苦慮する…。

この映画は正直言って、戦史ファンか特撮ファン以外にはやや退屈なんじゃないかと思います。
基本的に戦史をなぞって淡々と描いているだけなので、とにかく飛行機がやたら飛び回っている場面が延々と続きます。
山本が主役と言っても、司令官である彼は会議室か艦橋で報告を聞いている時ぐらいしか出番がありません。いくつかその人柄を伝えるエピソードは盛り込まれているものの、人間性が深く掘り下げて描かれるわけじゃないので、単に「山本はエラかった」という上っ面の域を出ません。
そうしたドラマ部分の欠如を補うものとして、前半に黒沢年男扮する若い将校と恋人の酒井和歌子の関係なんかは出てくるのですが、後半に全く続かないので、あってもなくてもいいような感じ。
結局、映画で戦史をお勉強しましたという以上の作品的印象は殆ど残りません。尤も、映画の公開当時は戦後まだ23年目で大半の大人は戦争経験者ですから、観客はこの程度の出来でも往時を回顧することで満足だったのかもしれませんが。。。

三船敏郎はこの作品も含め3回か4回、山本五十六を演じているはずで、私も子供の頃から山本五十六と言うと三船の風貌が刷り込まれてしまっていました。そのせいで後年、実際の山本が博打好き芸者遊び好きでユーモアのある性格と聞かされても、三船の無骨なイメージと合わずに戸惑ったものです。
他の出演者で印象に残ったのは森雅之の近衛文麿。他の映画ではデブの千田是也とか神山繁とか似ても似つかぬ近衛役が多いのですが、貴族的な雰囲気を持つ森雅之はピッタリでした。
出演者はほかに加山雄三、稲葉義男、平田昭彦、土屋嘉男、藤田進、司葉子、中谷一郎、松本幸四郎(先代)など。
yamamotoisoroku01.jpg
yamamotoisoroku02.jpg
yamamotoisoroku03.jpg
yamamotoisoroku04.jpg


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

関連タグ: 三船敏郎

あゝ陸軍隼戦闘隊

katohayabusaop.jpg
陸軍戦闘機隊の撃墜王・加藤建夫中佐の半生を描いた戦記映画(1969年・大映・村山三男監督)

物語。昭和4年、所沢飛行学校の教官となった加藤建夫中尉(佐藤允)は徳原校長(島田正吾)の紹介で加寿子(藤村志保)と見合いし結婚。加藤の教え子には連隊旗手から転じた木原少尉(平泉征、現・平泉成)や中国陸軍からの留学生・趙英俊(藤巻潤)がいた。
昭和12年、日支事変が勃発し、加藤戦闘機隊も北支戦線に出動。しかし木原が趙英俊の機に撃墜され戦死。加藤は泣く泣く趙英俊の機を撃墜する。
やがて日米は開戦し、最新鋭機“隼”に機乗した加藤少佐たちはマレー半島に進撃する…。

「エンジンの音轟々と…」という「加藤隼戦闘隊の歌」で有名な(と言っても若い人は知らないでしょうが)加藤中佐の伝記映画。私も歌は聴いたことありましたけど、加藤中佐の人となりはこの映画を見て初めて知ったような次第。
ちなみに加藤中佐の伝記映画は戦時中既に藤田進主演・円谷英二特殊技術で戦時高揚映画として製作されており、初代加藤中佐役だった藤田進がこのリメイク版にも別の役で出演しています。
内容的には、戦闘機パイロットとしての華々しい活躍よりもむしろ加藤中佐の人間的側面の描写に重きをおいているようです。中国人留学生との友情や指揮官としての苦悩、そして妻との愛情など、戦記物にあまり興味のない私でもさほど退屈せずに見られました。戦死した部下の遺族を一人一人訪ね詫びるシーンは特に印象的。
特撮の一部にやや安っぽい感じのするところはありますが、末期の大映製作にしてはお金もまあかかっている方でしょう。ただ佐藤允と言えば東宝の戦争映画で活躍したスター。それを主演に持ってこざるを得なかったところに大映の人材不足を露呈しています。
出演は他に本郷功次郎、宇津井健、峰岸徹(当時、峰岸隆之介)、長谷川明男、南美川洋子、露口茂など。
katohayabusa0101.jpg
katohayabusa0102.jpg
katohayabusa04.jpg
katohayabusa05.jpg


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

関連タグ: 藤村志保
カレンダー
08 | 2008/09 | 10
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
管理人のサイト
土曜日の美女たち
管理者用
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR