黒の札束

川崎敬三主演による「黒」シリーズの第3作目(1963年・大映・村山三男監督)

物語。経営陣の交代でリストラに怯えているサラリーマンの檜山賢二(川崎敬三)のところへ、以前取引のあった印刷業者の宮川(見明凡太郎)が一千万円分の千円札の偽札を造ったので百万円で買ってくれと持ちかけてくる。賢二は会社を辞め事業を始めるという口実で恋人の瑛子(三条江梨子)から借りた百万円でその偽札を買い取り、旧友で元学生運動家の石渡(高松英郎)を仲間に引き入れ換金の方法を考える。だが石渡の不注意から石渡の妻(宮川和子)とその浮気相手(杉田康)にも偽札の存在が知られてしまい、仕方なく2人を仲間にする。やがて4人は、換金のためのある方法を実行するが…

田宮二郎、宇津井健に続くシリーズ第三の男として川崎敬三が登場。
テーマも1作目は産業スパイ、2作目は法廷物と来て、本作はふとしたことから偽札を手に入れてしまった平凡な男がそれをいかにさばくかに焦点が当てられているので、主役に川崎敬三を配したのは的を射たキャスティング。これが正義感の強そうな宇津井健だったら最初からそういう話には乗らないだろうし、逆に野心の強そうな田宮二郎じゃ迷わず嬉々として偽札使いに精を出しそうですが^^;いかにも気弱なサラリーマン然とした川崎敬三がおっかなびっくり偽札に手を出していく様にはリアリティがあって、観ている側も引き込まれます。
更にこれに加わるのがシリーズ常連の高松英郎。
1、2作ではやり手のエリート役でしたが、本作では挫折した元学生運動家の役で、国家権力に対する闘争として偽札使いに加担して行きます。正反対の役柄ですが、彼の場合はコワモテなのでどっちでも応用が利きますね。
物語は偽千円札で一千万円、つまり一万枚の偽千円札をどうやって本物の金に換えるかに中心が置かれているのですが、元手の百万円は恋人が体を餌に他の男から借りたものなので、川崎には恋人が浮気をしているのではないかと言う不安が常につきまといます。
一方、高松の妻とその浮気相手が途中から計画に割り込んできて、この2人が胡散臭いのでいつか仲間割れを起こすのじゃないかと観ている側としてはヒヤヒヤ。二重三重に不安要因が含まれている点も物語を面白くしています。
結局、偽札の換金計画自体はうまく行っていたにもかかわらず、最後は意外なところから…と言う結末がちょっと釈然としないところもありますが、それもこれも主人公への感情移入のなせる業。偽札事件を捜査する刑事役が北城寿太郎、守田学、千波丈太郎などいつもなら悪人役の面々なのも、ますます川崎の方を応援したくなる効果を生んでいます。
この頃の千円札って聖徳太子だったんですね。調べてみたら当時、現実に千円札の偽札事件が多発したことから、この映画の公開(1963年3月)直後の1963年11月に絵柄が伊藤博文の新千円札に切り替えられたようです。


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黒の切り札

田宮二郎主演「黒」シリーズ第10作目(1964年・大映・井上梅次監督)。

物語。親分を殺されたやくざの多田(待田京介)と父親を倒産自殺に追い込まれた林(山下洵一郎)に、根来恭平(田宮二郎)と言う男が近づいて来る。根来は、3人の共通の敵である新日本開発会長・深沢(内田朝雄)に復讐しようと言うのだ。一方、検事の大崎(宇津井健)は深沢に繋がる汚職事件を調べていた。或る晩、大崎の婚約者・知子(藤由紀子)は、学生時代の恋人だった根来と偶然再会する…

「黒」シリーズで過去にそれぞれ主役を務めた田宮二郎と宇津井健が共演した、まさに「切り札」を切ったようなキャスティング。でも中身はあんまり黒シリーズらしくない感じ。
全部観たわけじゃないのですが、このシリーズって知能犯罪を扱ったサスペンスと言うのがスタンダードな物語じゃないのかと思うのですが、今回の話はまるで日活みたいなアクション物です(監督も日活でアクション映画を手がけた井上梅次だし)。尤も、それはそれとして映画自体はなかなか楽しめるのですが。
まず、ヤクザ(待田京介)と元会社社長の息子(山下洵一郎)と言う、身分も立場も違う2人と手を組む謎の男(それが田宮二郎)…と言うプロットが面白いです。田宮の正体は元子爵の息子で法学部中退で、現在はサックス吹き…って何じゃいそりゃと思う経歴ですが、最初はただお互い利害で結びついた3人がやがて同志的友情に芽生え一致協力して復讐に挑みます。特にこの面子からすると、どうも待田京介あたりは途中で命を落としそうな予感が働くので彼等の運命がどうなるのかにハラハラ(結局死にませんでしたが^^;)
物語は最後に、爆破寸前のロープウエイに閉じ込められた田宮たち3人が、縄梯子でヘリコプターに脱出するという見せ場が用意されていて、翌年「ガメラ」を手がけるスタッフ(撮影・築地米三郎、助監督・湯浅憲明)が迫力ある特撮シーンを演出しています。ちなみに後年、やはり井上梅次が監督した江戸川乱歩の美女シリーズ「妖精の美女(黄金仮面)」でも同じようなシーンがありましたね。
田宮二郎は両親の復讐のため、恋人も全ても捨てて立ち上がる男。はっきり言って、こう言うハードボイルドな熱い主人公は田宮さんらしくもないので、観ててちょっと笑っちゃうところもあります。
一方、田宮の元親友で今は検事になっているのが宇津井健。宇津井さんの方は、またもや正義感に一途な(しかも例によって少し詰めの甘い)検事(笑)この宇津井は表から正攻法で悪を攻め、一方田宮たちは裏からストレートに悪を倒そうとする展開が平行します。尤も、どうせ宇津井の方は役立たずなんだろうな…という予想は立ちます(実際は最後にちょっと役に立ちましたが)
そして宇津井の婚約者で田宮の元恋人の役なのが知的でエレガントな美人・藤由紀子。実生活で田宮さんとはこの約1年後に結婚するので、当然この頃は既に恋仲になっていたんでしょうね(田宮を「根来さん」と呼ぶ藤由紀子の台詞が「ねぇ吾郎さん(田宮の本名)」に聞えてしまいました)。
更にセクシーでエキゾチックな美人・万里昌代も出ているので、少々話が雑でもこのキャスティングだけで個人的には満足してしまいます。


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新・座頭市 破れ!唐人剣

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勝新太郎の座頭市シリーズ第22作目(1971年・勝プロ・安田公義監督)

物語。座頭市(勝新太郎)は片腕の唐人剣士・王剛(王羽、ジミー・ウォング)と中国人の子供に出会う。子供は南部藩の行列を遮ったため両親を殺され、それを助けた王剛ともども藩士とやくざの藤兵衛(安部徹)一家に追われていたのだ。3人は百姓の与作(花沢徳衛)の家に泊めてもらうが、市が酒を買いに行っている間に藤兵衛一家に襲われ与作夫婦が殺される。王剛は市が密告したと思い込み、怒りに燃える…

香港映画に詳しくないので知りませんでしたが、今回のゲスト、ジミー・ウォングという人は香港映画のアクションスターとしてかなり有名な人で、特に「片腕の武芸者」が当たり役なんだそうですね。従って本作はそのキャラクターをそっくりそのまま持って来て座頭市とコラボしたということになります。
機を見るに敏な勝新が香港映画ブームに乗ってこの映画を企画した…のかと思ったら、日本で香港空手映画ブームが起きたのは73年からなので、この作品の方が早いのですね。
物語は、このジミー扮する唐人剣士と座頭市が、言葉が通じない故の誤解から敵として対決せざるを得なくなる…と言うもの。「言葉が通じない」ことは目の見えない(耳だけが頼りの)座頭市にとって、想像以上にキツイ状況なんですよね。過去に座頭市の敵たちは、市の耳を封じる様々な手段を講じてきたのですが、今回は逆に、言葉が通じないためにその耳が役に立たず、心ならずも相手と敵対してしまう悲劇に見舞われてしまいます。なのでこのプロット自体は面白いのですが…しかし作品そのものは凡庸な印象です。
シリーズ後半作の全てに言えることですが、座頭市の性格に陰影がなくて最初からエラソーに「正義の味方」面しているのが、物語を薄っぺらくしてしまいますね。特に、いかに悪人とは言え相手の耳を削ぐと言うような残虐趣味は過去に見られなかったものなので、引いてしまいます。
この映画の見せ所は座頭市の殺陣と並んで、ジミー先生の華麗なアクション。しかし、片腕と言う設定に加えてジミーの武器が短剣なので、日本の長い刀とのチャンバラはイマイチ見映えがしません。
花沢徳衛の娘で、ジミー同様に市を仇だと誤解する百姓娘役が寺田路恵。この人は確か文学座の女優さんだったと思いますが、百姓の娘にしては知的で理路整然とした口調が不自然でミスキャスト。もう1人のヒロイン、座頭市を助ける娼婦を演じたのは浜木綿子。後年テレビで「女監察医・室生亜希子」を演じた頃とちっとも変わらないですね。
それとこの映画にはコメディリリーフとして、てんぷくトリオ(三波伸介、伊東四郎、戸塚睦夫)が出演しています。私なんかの世代でも戸塚睦夫(73年没)は記憶がないので、3人揃った姿を見られるのは貴重です。
ちなみに香港版では本作とは逆に「座頭市が負ける」結末になっているという話が流布しています。でも実際にそれを「観た」と言う人の話を全く聞いたことがないんですよねえ。。
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複雑な彼

三島由紀夫原作、田宮二郎主演、そしてモデルは…あの人!(1966年・大映・島耕二監督)

物語。会社重役(佐野周二)のご令嬢・森田冴子(高毬子)は国際線の飛行機の中で見かけたカッコいいパーサー・宮城譲二(田宮二郎)に惹かれる。冴子の伯父で新聞社重役の須賀(中村伸郎)はイギリス赴任時代に譲二を知っていた。須賀の紹介で譲二とデートした冴子は恋仲になるが、謎の紳士(若山弦蔵)が現れ、譲二は傷害事件で執行猶予中の身だと言う。なにやら譲二の過去にはいろいろ複雑な事情があるらしい。やがて冴子は父親の仕事でリオ・デ・ジャネイロへ赴き、現地で譲二と再会するが…

三島原作としては純文学ではない、「夏子の冒険」とか「永すぎた春」などの系列に属する軽いロマンチック小説ですね。
この作品の主人公・宮城譲二のモデルが「塀の中の懲りない面々」の作者、若き日の安部譲二だと言うことは今では有名な話です。安部譲二が作家として世に出、三島の小説のモデルでもあったことが知れ渡ったのは1987年のこと。なので、それ以前から小説またはこの映画を知っていた人は安部サンを見て、さぞ衝撃を受けたことでしょう。
何しろこの物語の主人公と来たら、ソフトでエレガントで知的でミステリアスで、女にモテモテの二枚目男。ここから実物の安部サンを想像力するのは至難の業です。またそもそも、こんな歯の浮くようなキザな男を恥ずかしげもなく平然と演じ切れるのは田宮二郎をおいてほかにいないでしょう。
お話は、この田宮とお金持ちのご令嬢の高毬子が恋に落ち、日本からブラジルまでまたに掛けてデートを繰り広げる様子が延々続くというだけのものです。昔のご令嬢のことですから、「結婚するまではあなたのお部屋には行けないわ」などと言って清らかな交際に終始していますし、一方、田宮の方にも人に言えない秘密があって積極的な関係になれません。とどのつまり、その秘密と言うのは若気の至りで背中に「鯉の刺青」を入れているので、ハイソなご令嬢とは結婚できない、と言う、それだけのオチなんですが…最後は謎の紳士・若山弦蔵とともに「アジア民族のための戦い」とやらのために去って行く、何だかよくわからない結末です。とにかく田宮さんのカッコよさを堪能すること以外に、この映画の楽しみ方はありませんね。
この映画での田宮さんの職業はパーサー(客室乗務員)。過去に就いていた職業がカメラマン助手、バーテン、ボクサー、井戸掘り人夫etcと言うことで、井戸掘りはともかく、パーサーのカッコイイ制服姿やボクサーの引き締まった肉体、更にブラジルでのデートシーンでは真っ白な上下のスーツ姿と、まるで田宮二郎コスプレショーかいってぐらい、様々な姿が見られます。特に後半のブラジル編はゴージャスで、どうせ神戸あたりを外国に見立てて誤魔化すのかと思ったら、本当にリオまでロケに行ってるんですよ。1ドル=360円の時代に、この程度の映画でわざわざ海外ロケまでするとは随分大盤振る舞いしたものです。
ご令嬢を演じた高毬子、飛び切りの美人と言うわけじゃありませんが、清楚でおっとりしている感じがまさにご令嬢と言う感じで、浮世離れしたこの物語によく合っていました(ご令嬢の名前が「さえこ」なので、そこへ田宮二郎と中村伸郎が出てくると「白い巨塔」を連想します)。
ご令嬢の父親役は往年の二枚目スターだった佐野周二。この頃は脇に回っていたんでしようが、それにしても何もわざわざ社外から佐野周二を呼んでこなきゃならないようなものとは思えない、いたって平凡な役です。
田宮の元カノジョ役に滝瑛子、イーデス・ハンソン、真理アンヌ、渚まゆみ、紺野ユカ。
謎の紳士・若山弦蔵(顔を初めて見ました)は「ガメラ対バイラス」のバイラスのボスの声なので、イーデス・ハンソン(「ガメラ対ギロン」でトムのママ)とはガメラ・コンビ。ちなみに主題歌を歌っている西田佐知子は、佐野周二の息子・関口宏の現夫人。


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黒の報告書

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宇津井健主演による大映の「黒」シリーズ第2作目(1963年・大映・増村保造監督)

物語。会社社長の柿本が殺され、凶器から人見十郎(神山繁)の指紋が発見される。人見は社長の後妻(近藤美恵子)と愛人関係にあり、更に2300万円の金も行方不明だ。
事件を担当した城戸検事(宇津井健)は有罪を確信して人見を起訴する。だが凄腕で知られる弁護士・山室(小沢栄太郎)が人見の弁護についたことから、裁判は意外な方向に…。

「黒」シリーズの2作目ですが、前作とは全く別の物語で、主演も田宮二郎から宇津井健にスイッチ。
タイトルの印象からすると、まるで検事が調書を捏造して無実の人間を罪に陥れる話みたいですが、実際のストーリーは全く逆です(そもそも宇津井健がそんなダークな役をやるわけありません^^;)
前半では警察の地道な捜査の模様が描かれ、検事の宇津井は万全の証拠固めをして自信満々に被疑者の神山繁を起訴に持ち込みます。
後半は裁判のシーンが中心。社長秘書で愛人の叶順子、社長の弟・上田吉二郎など、捜査段階では検察に有利な供述をしていた証人たちが、悪辣な弁護士・小沢に買収され悉く証言を翻してしまい、宇津井は窮地に追い込まれます。結局、検察は裁判に敗北、宇津井は左遷されてしまうと言う、悪が栄え正義が滅びる全く救いのないお話です。
宇津井健は正義感あふれる情熱派の検事で、しかもちょっと甘いところがあると言う、この人のいつも通りのキャラ。正しい法の秩序を信じる宇津井と、「裁判はゲームやスポーツのようなもの」と言い切る小沢の弁護士の対決が物語の軸になるわけですが、老獪な小沢に対してあまりにも一本調子ですぐ興奮する宇津井を見ていると最初から勝負は明らかなので、法廷劇の醍醐味はありません。不条理な結末にもかかわらず観ていてあまり暗い気分にならないのは宇津井の爽やかな持ち味ゆえですかね。もし主役が田宮二郎だったら最後までやりきれない思いで終わりそう…尤も田宮さんが検事だったら裁判に負けてないかもしれないですが^^;
証言が二転三転するヒロインを、叶順子が前作に続きふてぶてしく陰々滅々と演じています。ただ増村監督の映画にしては物語全体の中で女性の比重が軽い感じです。
捜査係長役に中条静夫。後年演じた「あぶない刑事」でのとぼけた近藤課長と違い、この映画ではなかなかキレ者です。考えてみたら宇津井、中条、神山の3人は、この後始まった大映テレビ室製作の人気ドラマ「ザ・ガードマン」のメンバーですね。大映ドラマの原点はこの作品だったのかも。粘り強く捜査する叩き上げのベテラン刑事を殿山泰司が好演しています。
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連合艦隊

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太平洋戦争で日本海軍の連合艦隊が終焉するまでを描いたオールスター戦争映画(1981年・東宝・松林宗恵監督)

物語。昭和15年(1940年)、海軍は山本五十六(小林桂樹)連合艦隊司令長官らの反対を押し切り日独伊三国軍事同盟締結に同意。翌昭和16年、日米開戦。昭和17年、ミッドウェー会戦で大敗した日本軍はジリ貧に追い込まれ、やがて山本は戦死。そして昭和20年4月、戦艦大和の伊藤整一(鶴田浩二)司令長官に最後の出撃命令が下る…

前年(1980年)に東映が製作した戦争映画の大作「二百三高地」の大ヒットにあやかったのか対抗したのか知りませんが、戦争映画では本家とも言える東宝が久々に放ったオールスター大作戦争映画です。
過去の戦争映画とやや違う点としては、「二百三高地」同様、戦記一辺倒ではなく庶民の視点を導入している点ですね。ただし、この映画の主役は連合艦隊そのもの、或いは船とか飛行機なので、人間の側に特定の主演者はいません。
一応、配役のトップに来るのは山本五十六を演じた小林桂樹ですが、山本が戦死した中盤以降は機動部隊の小沢長官(丹波哲郎)や参謀長の宇垣(高橋幸治)、草鹿(三橋達也)、或いは民間人の森繁久弥と、その息子である二人の海軍士官(永島敏行、金田賢一)、財津一郎と中井貴一(これがデビュー作)の父子などによる群像劇で進み、最後は二人の息子を亡くした森繁が主題歌をBGMに、ひとり海辺に佇んでいるシーンで終わります。
ん?森繁のこういう姿って他にもどこかで観たぞ…と思ったら、2年後(1983年)の「小説吉田学校」で、森繁演じる吉田茂だけが一人長生きして海に向かって佇んでいる終わり方と全く同じなんです。現在の森繁本人を思うと、まるで現実を先取りしたようなシーンを二度も(もっとあるかもしれない)演じていることに感慨を覚えます。尤も、森繁は軍人という柄じゃないので、戦争映画に出るとすれば政治家でなければ市井の老人ぐらいでしか使い道がないのですが。
オールスター映画、特に戦争映画と言うといつも同じような顔ぶれが集まってしまうのですが、若い頃は士官クラスの役だった俳優が、年取って将官クラスを演じているのが観られるのも、この手の映画の面白いところ。例えばかつて「雲ながるる果てに」(1953年)で若い特攻隊員を演じた鶴田浩二が本作では沖縄に特攻出撃する戦艦大和の伊藤司令長官(中将)の役になっています。尤も、階級は大いに上がりましたが、やってることは同じなんですね。
一方、年取ってもあんまりステータスがあがらないのは佐藤允。「独立愚連隊」(1959年)でコンビだった中谷一郎が本作では大和の艦長(大佐)へと大出世しているのに、佐藤の方は相変わらずの下士官役です(ちなみに前年の「二百三高地」でも、俳優座同期の仲代達矢が乃木大将役だったのに対して佐藤はやくざ上がりの二等兵役でした)。でもやっぱりこの人にエリートは似合わないので、叩き上げのイキのいい下士官役が一番合ってます。
出演は他に小沢栄太郎、藤田進、長門裕之、古手川祐子、友里千賀子など。
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新・座頭市物語

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勝新太郎の座頭市シリーズ第3作目(1963年・大映・田中徳三監督)

物語。座頭市(勝新太郎)は以前斬った勘兵衛の弟・島吉(須賀不二男)たちに襲われる。そこへ割って入ったのは座頭市の剣の師匠・伴野弥十郎(河津清三郎)だった。弥十郎の家に行った市は弥十郎の妹・弥生(坪内ミキ子)と再会。弥生から求婚された市は堅気になることを誓うが…

3作目にしてカラーになった座頭市シリーズ。
この映画でカッコイイのは、座頭市よりも須賀不二男の演じた島吉です。
彼が市を狙うのは、兄貴の仇討ちとか復讐心からではありません。どうせあの兄貴のことだから斬られても当然だったのだろうが、しかし、メアキがメ〇ラに斬られて黙っていたんじゃヤクザの意地がたたねえっ!…と言う、非常に男らしいと言うかストイックな理由から。なので、座頭市の居合いで自分が斬られるのも覚悟で挑んで来ます。ところが弥生と結婚して堅気になる決心をした市から許してくれと頼まれ、じゃあサイコロ勝負で市が勝てば見逃してやるが、負けたらその右腕を叩っ斬ると条件を出します。そしてその勝負…、本当は市が負けていたにもかかわらず、島吉はわざと「俺の負けだ」と言って、市を心で祝福して潔く去って行きます。
うーん、カッコ良すぎるぞ、須賀不二男(笑)。ってか、こんな善人役の須賀不二男なんて、初めて観ましたね。悪役俳優が稀に演じる「いい人」は儲け役。印象に残ります。
悪役と言えば、いつもはやくざの親分役が定番の遠藤太津朗が、本作では弥十郎に女房を取られてしまっている情けない飲み屋の亭主と言うのも珍しいです。
さて、お話の方は、座頭市の剣の師匠・弥十郎が登場し、市の剣法が我流ではなくかつて弥十郎の道場で死に物狂いで会得した結果であると言う過去が明かされます。
この弥十郎、かつてはひとかどの人物だったらしいのですが、今では天狗党一味による強盗の手引きをするまでに成り下がっていて、弥生と結婚したいと言う市を罵り追い出したばかりか、市の恩人ある島吉を些細なことから斬ってしまいます。そして最後は市との対決となるのですが、、、第1作では心の友、第2作では実の兄、そして本作では剣の師匠と、本来「斬っちゃならねえ人を斬ってしまう」と言う座頭市の宿命と業を描くという点でシリーズは一貫しています。
ただ、尺の関係か、後半の展開がバタバタしているので、弥十郎が何で堕落してしまったのかとか、その人物像がイマイチ描き切れていないのが残念。でもこのあたりはプログラムピクチャーの宿命として仕方のない部分なのでしょうねえ。。。
それよりもこの話でちょっと納得がいかないのは、弥生から求婚された市があっさりそれを受け入れてしまうこと。だって、確か第1作でおたねさん(万里昌代)に求婚された時の座頭市は「自分はメ〇ラでヤクザだから」とか何とか言って断っていたはずなので、辻褄が合いません。おたねさんより弥生の方が良かったんですかねえ?坪内ミキ子より万里昌代の方がいい女なのに…ってそういう問題じゃなくて^^;)
実は元々の脚本では、弥生は足が悪いと言う設定だったとのこと。つまり障害者同士の恋と言うプロットで座頭市の内面を描く予定だったのでしょうが、大映の永田ラッパ社長から「新人女優(坪内ミキ子)に足の悪い設定なんて縁起でもない!」と横槍が入り、ストーリーが変更。その結果、何だか唐突な弥生の求愛と、それをあっさり受け入れてしまう市と言う、薄っぺらい話になってしまったようです。外野が口を挟むとたいていロクなことにはなりませんね(そういう意味では、今の四方八方に気配りしてあたりさわりのない内容になってしまう、「製作委員会」方式の映画なんて尚更ですが)
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ごろつき犬

田宮二郎の「犬」シリーズ第3作目(1965年・大映・村野鉄太郎監督)

物語。鴨井大介(田宮二郎)は温泉で一夜を過ごした女・三沢葉子(水谷良重)から、一六会幹部の稲取(根上淳)、川勝(成田三樹夫)、辺見(山下洵一郎)に夫を殺されたので復讐して欲しいと頼まれる。大阪に戻った鴨井は、ショボクレ刑事(天知茂)と再会。同僚刑事を射殺したのが稲取らしいので探って欲しいと頼まれ一六会に潜り込むが、捕まって拳銃を奪われてしまう。しかもその拳銃を使った殺人事件が起こり…

田宮二郎が拳銃と女を愛するお調子者の一匹狼ならぬ一匹”犬”鴨井大介を演じるコミカルなアクション物。
冒頭、颯爽とバイクで爆走していたのもつかの間、事故って立ち往生。そこへ通りかかった高級外車の女・水谷良重に助けられて「またモテてしまった。ま、ええ男やさかいしょうがないけど!」と独白する鴨井大介こと田宮二郎。本来、キザな二枚目の田宮二郎が言ったら完全に嫌味な台詞なんですが、トッポイ(死語)二枚目半が板についている鴨井が軽妙な関西弁で言う分には全く無問題。二枚目が演じる二枚目半または三枚目役には味があります(逆はつまんないけど)
二枚目と言えば、田宮、天知、根上、山下、成田と、大映の誇る新旧二枚目役者が勢揃いしたようなキャスティング(おまけにワンシーンのみで宮口精二なんかまで出ている)は、いちプログラムピクチャーにしてはなかなかの豪華版。特に、かつては根上主演映画で駆け出しの田宮は端役だったことを思うと、その田宮主演作で今度は根上が引き立て役に回っていることに大映スター変遷史を見るかのようで興味深いです(ちなみに6年後の大映倒産時には二人ともいなかったんですけどね)クールな江波杏子とセクシーな水谷良重、常連の坂本スミ子など女優陣もいい感じです。
お話の方は、大手会社を脅迫して大金をせしめ、更にその分け前を巡って内紛する暴力団の事件に鴨井と天知茂先生扮するショボクレ刑事が絡んでいくというもの。いつも電話のみで指令してくる組長の正体が最後までわからない(でも観れてば途中で誰だかわかりますが^^;)というのがミソになっています。
ショボクレこと木村刑事は1作目以来(2作目は出ていない)の登場。尤も、1作目ではまだショボクレと言う呼び名はなかったはずなので、本作でいきなりショボクレにされてしまった天知先生の心境やいかに。鴨井を捜査に協力させるため「俺は胸を病んでるのでもう長くはない…」などと白々しいウソをつくショボクレの台詞には、「あれだけタバコをプカプカ吸っててよく言うよ!」とツッコミ入れたくなります。
それにしても冒頭での水谷良重の髪型には時代を感じますね~。そう言えば昔、山東昭子(タレント議員)なんかもこんな頭してたな(笑)


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