地上

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1957年/大映/吉村公三郎監督
出演/川口浩、野添ひとみ、香川京子、田中絹代、川崎敬三、佐分利信、滝沢修、小沢栄太郎ほか

物語。大正期の金沢。芸者置屋の二階で母親(田中絹代)と貧しい生活を送る中学五年の大河平一郎(川口浩)は社長令嬢の和歌子(野添ひとみ)と恋仲になるが引き裂かれ、退学に追い込まれてしまう。平一郎を慕っていた芸妓の冬子(香川京子)も東京の政商天野(佐分利信)の妾にされてしまい…大正時代のベストセラー小説の映画化。

原作者・島田清次郎については杉森久英の伝記小説「天才と狂人の間」に詳しい。
弱冠二十歳にして「地上」の成功により時代の寵児となるも、不祥事件を起こして文壇から追放され、最後は精神病院に収容され三十一歳の若さで死んだ、早熟の破滅型天才作家である。
10代の頃、「天才と狂人の間」を読んで大いに興味をそそられ「地上」も読んでみたいと思ったが、その頃は絶版。
暫くして復刻されたが、その時には既に関心が薄れていたせいか、正直言って期待したほど面白くなかった。
映画は今回初めて見たのだが、原作の大筋を借りつつ、もっと叙情性の強いものなっているようだ(脚本は新藤兼人)

主人公には、貧しいながらも相思相愛の恋人はいるし、他にも想いを寄せてくれる芸妓や友人の妹、更に理解のある級友や恋人の兄もいて…と、これだけ人間関係に恵まれているにもかかわらず貧富の差や社会的差別の壁は如何ともしがたく、最後は世の中を変えようと再出発を計るべく上京するところで物語は終わる。
一種の「青春残酷物語」なのだが、演出が淡々としすぎているせいか、あまり主人公の情念が伝わってこない。
ヘタすると退屈してしまいそうな物語なのだが、それを救っているのは、金沢の町並みの美しさ、そして清楚で可憐な香川京子の美しさ。
野添ひとみの令嬢も可愛いんだけど、薄幸を絵に描いたような香川京子の儚い美しさ、そして演技力にはかなわない。
母親役の田中絹代をはじめ、小沢栄太郎、滝沢修、佐分利信、上田吉二郎、山茶花究、ワンシーンのみの三宅邦子や殿山泰司らの配役も豪華だし、みな上手い。
尤も肝心の主役の川口浩は、イマイチ印象が薄い。この人にはもう少しふてぶてしい不良役とかの方が似合うと思う。
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刑事コロンボ 意識の下の映像

1973年制作/米・ユニヴァーサル作品/1974年8月10日NHK総合放送

物語。意識調査研究所所長のケプル(ロバート・カルプ/声・梅野泰靖)は顧客を恐喝して会社を拡大させていた。しかしノリス産業社長が恐喝に屈せず、逆にケプルを告発しようとしたことから殺害を計画。販売促進用の映画にサブリミナル効果を仕込み、ロビーにおびき出し銃殺した。コロンボ警部(ピーター・フォーク/声・小池朝雄)はケプルを犯人と睨むが、凶器の拳銃が見つからなかった。そのため、あるトリックを仕掛ける… シリーズ21作目。

「刑事コロンボ」がNHKで放送されていた頃は、金持ちでもなければビデオデッキなんて持っていませんから、もう一度見たい、と思ってもなかなかその機会がありません。そこで重宝?したのが小説版。二見書房からノベライズドされたコロンボシリーズが出ていました。このうち私が持っていたのは「意識の下の映像」「ロンドンの傘」「パイルD-3の壁」「溶ける糸」の4冊だけ。今年約30年振りで再見するまで殆ど忘れていた話が多かった中で、この4作は小説版を何度も読み返していたので覚えていました。
「意識の下の映像」を初めて見た時は、なんとも言っても潜在意識を利用する「サブリミナル効果」と言うインパクトあるトリックに驚かされました。こんなすごいことがあるのかと思ったし、最後にコロンボがそれを逆手にとって犯人を嵌める結末も鮮やかでした。
後年、TBSがオウム事件の報道番組の際サブリミナルもどきの映像を使ったことが問題化した時、まっさきに「意識の下の映像だ!」と思ったのは、私だけでないはず。まさか現実に使われることがあるとは思ってもみませんでした。
尤も、このドラマで使われたように都合よく行くもんじゃないということは今はわかっているし、結末自体も結構粗雑ですね。犯人が銃口の変換装置をいつまでもスタンドに隠しておくのが変だし、コロンボもサブリミナルを逆用するなどと言う面倒ことをせずとも、スタンドを覗けば一発で発見できたはず。なので、ちょっと傑作とは言えないかもしれません。
ただこの作品はロバート・カルプ演じる犯人とコロンボの対決が秀逸で、執拗に追い詰めながらいつもギリギリのところでは余裕でかわす犯人、と言う攻防戦の構成がうまくできているからこそ、最後にコロンボがとった行動が映えるのでしょう。そういう意味では、ミステリーとしてはやや弱いかもしれないけど、知的闘争劇として面白いものになっていると思います。シリーズを代表する犯人役として何作か出ているカルプも、この話の犯人が最も魅力的でした。
ちなみに、劇中に名前だけしか出て来ないタニア・ベイカーと言う女性。小説版には実物も登場しているので、てっきりドラマにも出ているシーンがあったと思い込んでいました。記憶なんて、いい加減なもんだな^^; (12/22に全面改稿しました)


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刑事コロンボ パイルD-3の壁

1971年制作/米・ユニヴァーサル作品/1973年8月11日NHK総合放送

物語。建築家のマーカム(パトリック・オニール/声・川辺久造)は実業家ボー・ウィリアムソン(フォレスト・タッカー/声・勝田久)の夫人ジェニファーを抱き込んで、夢の新都市ウィリアムソン・シティに出資させようとしたが、計画を知ったウィリアムソンが出資を拒否したため殺害する。マーカムはウィリアムソンの死体を隠し、失踪に見せかける。ウィリアムソンが生きているとみなされる限りでは夫人が財産を自由に使うことができるからである。ウィリアムソンの前妻ゴールディは、彼が殺されたとコロンボ(ピーター・フォーク/声・小池朝雄)に捜査を依頼するが… シリーズ9作目。

初めて「コロンボ」を見たのがいつだったのか、よく覚えていない。
もともとこの時間帯(土曜夜8時)は「8時だョ!全員集合」や「欽ちゃんのドンとやってみよう」を見ていたのだが、 NHKで75年秋に「土曜ドラマ」がスタートしてからは、親にチャンネル権(死語)を奪われてしまった。「コロンボ」は土曜ドラマと交互にやっていたので、その流れで見るようになったのかもしれない(ちなみに同じ枠で「警部マクロード」「署長マクミラン」というのもあったが、それには興味なかった)

「パイルD-3の壁」は再放送時に見たのだが、当時二見書房から出ていた小説版も買ったぐらい、好きなエピソードのひとつだったので、久し振りに再見してみた。

言うまでもなく「コロンボ」は倒叙物だから、犯人と殺人の動機は最初からわかっている。
ただこの話は、死体の隠し場所が視聴者にもコロンボにも最後までわからないところがミソ。
なぜなら、単に殺害するだけでは犯人の利益にならないので、被害者がまだ生きているように見せかける必要があったからである。
このため、いつものようにコロンボが犯人を追い詰めるだけではなく、犯人の方でもある意図を持ってコロンボをミスリードしようとする。この虚虚実実の駆け引き、心理戦が面白い。
尤も、建設現場の巨大なパイルを掘り返させよう、などと言う大胆なトリックは、相手がコロンボのような型破りの警察官であることを予め前提にしていないと成立しないし、また、お役所の許可がそう簡単に下りるもんなんかいな、と言う気はする。でも、そこはまあ、お話である。
まんまとコロンボを罠にはめ、あわや完全犯罪成立か…と視聴者を最高潮にはらはらさせた後で、最後の思わぬ瞬間に現れて事件を解決し、ほっとさせるコロンボ。その後で犯人が未練たらしく悪あがきせず、悠然としているのもいい。このカタルシスはシリーズの醍醐味だろう。
ちなみに、わざと捜索させた場所に改めて死体を隠そうとする、と言うプロットは後に江戸川乱歩の美女シリーズ「魅せられた美女」でも使われているが、パクったのだろうか。


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おーい中村君

1958年/大映/原田治夫監督
出演/川崎敬三、近藤美恵子、柴田吾郎(田宮二郎)、毛利郁子、若松和子、若原一郎、船越英二ほか

物語。電気器具会社に勤める中村和夫(川崎敬三)は気弱で純情なサラリーマン。毎朝通勤電車の中で出会う美人(近藤美恵子)に惚れているが、声をかけることができない。一方、同じ課の後輩で同姓の中村二郎(柴田吾郎こと後の田宮二郎)はやり手のプレイボーイ。その二郎がチンピラ(伊藤直保こと後の三角八郎)の彼女にちょっかいを出したことから、二郎に間違われた和夫はチンピラと喧嘩になり、警察のブタ箱のご厄介になる。翌朝、和夫を釈放してくれた婦人警官はなんと例の美人だった…。

43分の短編。おそらく長編大作(「日蓮と蒙古大襲来」あたり?)の添え物だったのだろう。
まだ本名で端役だった頃の田宮二郎が珍しく準主役で出演している。
内容はタイトル通り、若原一郎のヒット曲「おーい中村君」にちなんだ歌謡映画。
若原本人も出演して歌声を披露している。
気弱で頼りなげだが、お人よしで憎めないサラリーマンを演じたら天下一品の川崎敬三が相変わらず持ち味を発揮。
近藤美恵子は山本富士子同様ミス日本出身なんだけど、イマイチぱっとせず中堅女優に終わってしまった人だが、きりっとした美貌が婦人警官らしくていい。
が、見所はやっぱり、柴田吾郎こと田宮さん。
プレイボーイで仕事の要領もいいが、根は裏表がなくて、先輩思いの快活なサラリーマン役を演じている。
後年の「田宮二郎」だったら、同じサラリーマン役でも出世に野心を燃やす産業スパイとかになっていただろうから、こういうあっけらかんとした軽い田宮さんを見るのも楽しい。
高度成長期以降のモーレツサラリーマン物とは違い、舞台である会社ものんびりしていて上司も社員も何だか間が抜けている。


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関連タグ: 田宮二郎 大映

毒蛇島奇談 女王蜂

1952年/大映/田中重雄監督
出演/久慈あさみ、菅原謙二、森雅之、岡譲二、船越英二、見明凡太郎、植村謙二郎、瀧花久子ほか

物語。昭和7年、伊豆の孤島・月琴島に代々続く大道寺家を2人の大学生、日下部達哉(船越英二)と速水欣造(森雅之)が訪れる。日下部は大道寺家の一人娘琴絵(久慈あさみ)と恋仲になるが謎の死を遂げ、琴絵も達哉の子・智子を産み落とすと海に身を投げて死んだ。
二十年後、美しく成長した智子(久慈あさみ二役)は恋人の澤村(菅原謙二)と島に渡ろうとするが、不気味な警告状が舞い込む。澤村は先輩の名探偵金田一耕助(岡譲二)に相談する…横溝正史原作ミステリーの映画化。

「女王蜂」の映像化は市川崑監督&石坂浩二コンビのシリーズが最初なのかと思ったら、原作の発表当時に早くも映画化されていました。
しかもこれ、雑誌連載の終了が5月号なのに2月に公開されています。ということは、まだ小説の連載中、つまり完結する前に公開されたのでしょうか??
そのせいか、物語の導入部は概ね原作通りですが途中から少しストーリーが違って来ます(ただし犯人は同じ)。
ヒロイン智子への三人の求婚者などは現れないし、物語も月琴島の中でのみ展開します。
しかし最大の違いは何といっても金田一耕助。中折れ帽にスーツ姿、変装の名人と言う、多羅尾伴内か明智小五郎のようなダンディで颯爽とした中年紳士。昔の映画の探偵ってみんな同じスタイルね。
実際、演じた岡譲二は明智小五郎も演じたことがあります(そればかりか「蜘蛛男」の畔柳博士までやっています)
その金田一が、せむしの爺やに変装して大道寺家へ潜り込み二十年前の事件の真相を探り出すのですが、拳銃で撃たれて崖から転落して行方不明に。しかし終盤にはまた別の人物に変装して鮮やかに復活し、推理を披露する…と言う、まるで「江戸川乱歩の美女シリーズ」そっくりの展開となっています。

琴絵&智子の二役の久慈あさみは後に東宝の「社長シリーズ」で森繁社長の奥さん役として有名。宝塚の男役出身と言うことで、長身できりっとした美貌です。
智子役と言うと後に市川崑監督版で中井貴恵が演じて以降はアイドルまがいの小娘が割り振られることが多いのですが、本来は女王蜂と言われるぐらい絶世の美女なんだからこのぐらい凛とした気品があってもおかしくはないでしょう。
船越英二と菅原謙二はまだ20代だったので、当然ながら若いです。
菅原さんはデビュー間もないもののヒロインの恋人役なので最後まで出ずっぱりですが、まだブレイク前だった船越さんはすぐ死んでしまう役と、役柄に差がついています。
森雅之は既に名優の地位を築いていたはずですが、こんなB級スリラーにも出ていたとは意外です。市川版での仲代達矢もそうでしたが、40代で学生服姿の森さんが見られます。
最後は拳銃で撃たれ、何故かシェパードにも噛まれた上、血だらけになりながら崖から転落、と言う凄い死に方。浦辺粂子が「八つ墓村」の濃茶の尼みたいな妖婆役というのも意外と言えば意外です。


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関連タグ: 横溝正史 大映

風速七十五米(メートル)

1963年/大映/田中重雄監督
出演/田宮二郎、宇津井健、叶順子、菅原謙二、高松英郎、浜田ゆう子、見明凡太郎、菅井一郎、北原義郎ほか

物語。「いつか風速七十五メートル以上の大型台風がやって来たら東京のネオンは危険だ!」と説く新聞記者の田村(宇津井健)は台風記者の異名を取っていた。その田村の恋人・照子(叶順子)の父親(見明凡太郎)の経営する建設会社が請け負った巨大ネオンの建設をめぐって、ライバル社の遠藤(菅井一郎)が妨害工作を仕掛けてくる。
ある日照子は学生時代山岳部の仲間だった木谷(田宮二郎)と再会する。木谷は、ネオン建設妨害のため遠藤が送り込んだ手先だった…

物語の実質的な主役は宇津井健ですが、配役クレジット上のトップは田宮二郎です。おそらく大映社内における田宮さんの序列の方が上だったためでしょうが、専属制時代の映画界でこういう現象は珍しくありません。

タイトルからすると一見、台風がテーマのように思えますが、内容は男と女の恋、そして男同士の友情と対決が炸裂する、日活風のサスペンス・アクション物。ただラストでは銀座の街が巨大台風に見舞われる大掛かりな特撮もあるので、サブテーマよりはずっと大きいです。
のっけから巨大台風の襲来を予言して1人で騒いでいる宇津井健の言動は今見るとちょっと奇矯で唐突な感もありますが、当時は伊勢湾台風による甚大な被害の記憶もまだ新しい頃だったので、十分観客にアピールする社会性もあったわけです(伊勢湾台風のニュースフィルムも劇中に使用されています)

お話は、巨大ネオンの危険性を唱える新聞記者の宇津井と、その巨大ネオン建設を請け負っている会社の娘の叶順子が恋仲らしいので、一種のロミオとジュリエットなのかと思ったらそうではなく、父親公認の間柄。その関係が微妙になるのは、叶の昔の恋人で実はネオン建設を妨害するライバル社の手先でもある田宮が現れてからで、そのライバル社に父親を殺されても叶は田宮への想いを断ち難く懊悩します。正義感を振り回すだけの単細胞なお人好し宇津井より、複雑な影を持ったワルの田宮の方が魅力的、と言うわけです。
怒りに燃える宇津井は田宮と対決。しかし、それが正義感からなのか、嫉妬からなのか、よくわかりません。
最後は宇津井の予言どおり七十五メートル級の大型台風が東京を襲い、倒壊するネオンから叶を守ろうとして田宮は死んでしまいます。
結局おいしいところは全部田宮に持っていかれた宇津井健なのに、本人はそれに気づいていないのか、愛する田宮を失い亡き父が最後まで守ろうとしたネオンまで失い(建設費用の莫大な借金だけは残って)茫然としている叶順子をなぐさめるでもなく、例によって「台風は人災だ!」と相変わらずの持論を力説してる・・・というオチ。
こう書くとコミカルになってしまうのですが、一応シリアスなストーリーです。なのに宇津井健のオーバーな熱血芝居のせいなのか、まったく違うところに印象が行ってしまうのは困りもの。後年、大映ドラマに特有の大げさな芝居は大映時代劇の影響だって言う人がいますけど、どー考えてもルーツは宇津井さん本人でしょう。

叶順子はこれが引退作となってしまいました。更に言えば、長年大映現代劇を支えてきた菅原謙次にとってもこれが最後の大映出演作。大映はこの前後に大看板の長谷川一夫、山本富士子を始めとする主演・準主演級の俳優が相次いで退社しています。今にして思えば、この頃から大映没落が始まっていたわけです。

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関連タグ: 田宮二郎 大映

佐藤慶&北林谷栄

一度に2人も名優の訃報に接し鬱だ。

まず北林谷栄さんは言うまでもなく名お婆さん役。
最も印象に残っているのは田宮二郎さんの「白い巨塔」での、奈良県十津川村の老婆山田うめさんの役。原作から抜け出て来たとしか思えない名演だった。しかもこの方にはどんな田舎の汚いお婆さん役でも気品がある。映画「華麗なる一族」では佐藤栄作首相夫人のそっくりさんを演じている。

佐藤慶さんで真っ先に思い出すのは東京12チャンネル(現テレビ東京)の「日本怪談劇場」。
この中で情婦の三浦布美子とそのヒモの津川雅彦に殺されて化けて出る按摩の役を演じていた。うろ覚えだが、三浦と津川が按摩を罠に嵌めて殺し、もう大丈夫と安心していると、この按摩がしぶとくて血みどろになりながら何度も蘇って来るのである。最後は三浦と津川をとり殺し井戸の中に叩き落して怨みを晴らすのだが、その様子が怖くて怖くて、夜トイレに行けなくなった。クールで知的な役も得意とした慶さんだが、幼い頃最初に見たこの役の印象が一番強烈だ。
滅多にバラエティには出なかったと思われるが、TBSのトーク番組「すばらしき仲間」に大島渚、筑紫哲也と出演したのを見たことがある。盟友の大島監督はともかく、筑紫とどういう繋がりがあったのかはよくわからない。
その時のやりとりで覚えているのは、白髪頭の筑紫から「一番年上の慶さんの髪の毛が一番黒いですね」と言われて「これは営業用で染めているんです」と笑いながら答えていたこと、大島監督との出会いについて聞かれて「『青春残酷物語』と言う映画でインテリ・ヤクザの役を演じたんです」と答えたところ大島監督から「この人が勝手にインテリにしちゃったんですよ」と突っ込みが入り、「え、そうだったの?」と半ば本気で驚いていたことが印象的だった。合掌。


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濡れ髪喧嘩旅

1960年/大映/森一生監督
出演/市川雷蔵、川崎敬三、山田五十鈴、仁木多鶴子、浦路洋子、真城千都世、浜田ゆう子、スリー・キャッツほか

物語。遠山金八郎(川崎敬三)はかの名町奉行遠山金四郎とは一字違いだが、勘定方のしがない下っ端役人。ある日、美濃太田金山の代官(荒木忍)の不正摘発の旅を命ぜられる。失敗したらクビは確実という状況にヤケになった金八郎は、一生の思い出に官費の大名旅行と洒落込んだが、美人局にひっかかって無頼漢に取囲まれる。隣室のおさらば伝次(市川雷蔵)という旅烏に助けを求めるが、伝次は前金で手数料をよこせと言う…「濡れ髪」シリーズの4作目。

市川雷蔵と川崎敬三の初共演作。
大映は時々東京から現代劇の俳優さんを京都に連れてきて時代劇に出す。マンネリ化防止策だったのかもしれないが、時代劇の所作、台詞回しが全くできないので浮いてしまう。この映画の場合、川崎敬三本来の気弱なサラリーマン的な持ち味を当て込んで現代劇調に作られているにしても、正統派時代劇俳優である雷蔵さんの演技とはあまりにも異質で噛みあわない。まあそこが面白いと言えば面白いのだが。

ちなみに田宮二郎だけは時代劇に1本も出ていないし、従って雷蔵との共演も全くない。まあ、田宮さんのあのルックスにちょん髷は似合わないだろうし、早口の台詞回し、腰高な体型も全く時代劇向きではない。第一、長身の田宮さんと並んだら雷蔵さんの見栄えが悪くなる。なので回避されたのだろう。

お話は、女に弱い川崎のサラリーマン侍と、どういうわけか金にがめつい雷蔵の渡世人との、珍道中。
劇中、川崎さんが雷蔵さんを「兄貴」と呼ぶのがなんか妙な気がしたが、考えてみたら実際、雷蔵さんの方が年上なのね。
道中で知り合う旅芝居一座の座長役が山田五十鈴。昔の映画を見ていると今は大ベテランの俳優さんがみんな若くて驚くのだが、50年前でもベルさんは既にベテランだ。
一座の歌手として、当時の人気女性グループ、スリー・キャッツがそのままの役名で出てくる。「黄色いサクランボ」って、元祖はこの人たちだったのか。
終盤で、伝次が金にがめついわけは、生き別れた妹のためと明かされるが、その妹は既に死んでしまっていたと言う悲しい事実がわかり、ちょっと話がしめっぽくなる。
最後は、伝次の助けも借りて金八郎が首尾よく任務を果たして江戸への帰途につく。


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関連タグ: 市川雷蔵 大映

三兄弟の決闘

1960年/大映/田中重雄監督
出演/長谷川一夫、川口浩、藤巻潤、叶順子、弓恵子、志村喬、河野秋武、角梨枝子、大辻伺郎、左卜全ほか

物語。組長(志村喬)の身代わりで服役していたやくざの宗太郎(長谷川一夫)が5年ぶりに出所してくる。宗太郎の次弟・圭二郎(川口浩)はやくざに反発して新聞記者となり、もう1人の弟・錬三郎(藤巻潤)は学生でボクシングに打ち込んでいた。
組の乗っ取りをたくらんでいた弟分の兵頭(河野秋武)は、警察に密告して組長を逮捕させる。だが組の実印は宗太郎が預かっているので、兵頭の思うとおりにならない。そんな折、錬三郎の恋人・美也子(弓恵子)の父親を殺害した犯人として5年前逮捕されたのが宗太郎だったとわかり、交際を反対された錬三郎と美也子は家を飛び出す。兵頭は錬三郎を利用して実印を手に入れようとする…

時代劇の巨星・長谷川一夫の珍しい現代劇、それもアクション物。
しかも川口浩、藤巻潤との共演でタイトルが「三兄弟」…と言うことから嫌な予感がしたのですが^^;
案の定な内容でした。

何しろ長谷川先生は当時52歳、川口と藤巻は24歳なのだから親子でもおかしくない年齢差なのに、三人の役柄は兄弟。
と言うことは長谷川先生はせえぜえ30代後半ぐらいの設定なんでしょうね。
しかし様式美が優先する時代劇でなら何とか若作りで誤魔化せるでしょうが、さすがに現代劇では年齢は隠せません。

特にアクションシーンでは、かなり足元がおぼつかないです。
殆ど棒立ちで、ただぎこちなく腕を振り回しているだけなのに、相手が勝手に飛んでゆくというありさま。
思わず晩年のジャイアント馬場の十六文キックを連想してしまいました^^;
日活に感化されて作ったアクション物なんだろうけど、線の細い二枚目の多い大映(勝新はこの頃まだブレイクしていなかった)には主演の適任者がいなかったので、せめて貫禄に期待して長谷川先生の登板となったのでしょうか。

尤も、よく見ればアクションにはそれなりに独特のリズムがあるので、さすが長年時代劇の殺陣で培った勘は伊達でないと感ぜられるし、床に転がっての取っ組み合いシーンもこなすなど熱演しています。

ただ、日活の場合なら主役(裕次郎)を恋い慕う相手役(北原三枝)を絡めるんでしょうが、、大映で長谷川先生に匹敵する女優さんはそうそういないです(まさか京マチ子というわけにもいかんし^^;)
なので、弟二人にはそれぞれ恋人がいるのに、主役である兄貴は恋人が自殺してしまったという設定で女ッ気がないのは少々寂しいところです。

叶順子は川口の恋人であり長谷川先生の死んだ恋人の妹でもある設定。
長谷川先生が「本当にあんたは死んだ姉さんにそっくりだ」と言いながら叶順子をじっと見つめるシーンは、ひょっとしてモーションかけてるんじゃない?という感じですが、残念ながら若い弟の方がよかったのか、叶順子はただ恥らうだけで陥落せず。時代劇では数々の女性を悩殺してきた長谷川先生の流し目も現代劇では通用しなかったようです。
藤巻潤が長谷川先生のタイコ腹をジロジロ見つめながら「兄さん、太ったなあ」なんて、聞いているこっちがひやひやするような大胆な台詞をズケズケ言えるのも、現代劇ならではか。


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関連タグ: 長谷川一夫 大映

一刀斎は背番号6

1959年/大映/木村恵吾監督
出演/菅原謙二、叶順子、仁木多鶴子、小林勝彦、浦辺粂子、菅井一郎、春川ますみ、滝田裕介、十朱久雄
稲尾和久、中西太(西鉄ライオンズ)、田宮謙次郎、山内和弘(大毎オリオンズ)ほか

物語。後楽園球場の「大毎対西鉄」の試合前に行われた素人打撃腕自慢コンクールで、髭面・下駄履き・袴姿の男(菅原謙二)が、稲尾投手(本人)の速球を見事ホームランする。男は剣豪・伊藤一刀斎17代目の子孫で、合気道の達人と勝負するため奈良から上京してきたのだった。やがて大毎オリオンズに入団した一刀斎は、次々とホームランを打ちまくり…。

大毎オリオンズは大映の永田雅一社長がオーナーを務めていたプロ野球チーム(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)。
大毎の結成パーティには市川雷蔵、山本富士子らスター俳優も多数駆けつけ、選手たちをびっくりさせたそうな。
選手より親会社の社員の方が有名、なんてのも、映画会社がオーナーの球団ならではの話。
その大映が作った野球映画という事で、大毎の選手たちが大挙出演。

何しろ、巨人やセ・リーグならまだしも、パ・リーグの大毎なので、選手の顔と名前が一致しない。
同じリーグのよしみでか出演している西鉄の稲尾、中西、豊田泰光と言ったところは、今でも昔の映像を見る機会が割と多いのですぐわかったが、山内(後のロッテ監督)、田宮(元阪神OB会長)、荒巻淳(和製"火の玉投手")、榎本喜八(伝説の初代"安打製造機")、小野正一(当時の大毎のエース)あたりは、背番号とつき合わせて漸く確認できたような次第。
ちなみに、劇中で一刀斎にホームランを打たれる小野正一は、この映画にも出演している大映の女優仁木多鶴子と数年後に結婚。これも"社内結婚"なんだろうか。

映画の内容自体は、野球映画らしいのは前半だけで、後半はむしろ、一刀斎が宿泊している旅館が舞台の下町人情コメディ風。
旅館の娘(叶順子)には恋人(小林勝彦)がいたが、次第に素朴な一刀斎に惹かれて行ってしまう。しかし、そうとは知らない両親(菅井一郎・浦辺粂子)はどんどん結婚の話を進めてしまうので、最終的には故郷へ帰る一刀斎への思いを断ち切り、両親の気持ちを慮って恋人と結婚しようと決意する。

頽廃的なお嬢様のイメージを持っていた叶順子の、下町のおきゃんな娘役と言うのは初めて見た。

菅原謙次と言うと、私がテレビで見た頃は寡黙でちょっとコワイ顔のおじさん、と言う印象だったが、若い頃は無骨さの中にユーモアのある二枚目俳優としてなかなか人気が高かったようで、雑誌『明星』の人気投票1位になったこともある。この映画でも菅原のとぼけた持ち味は如何なく発揮されている。

仁木多鶴子は芝大門に住んでいる合気道の達人の娘役で、合気道の達人は増上寺の森に「東京タワー」なる赤白の無粋な梯子段が建てられたことに立腹して家を飛び出してしまった、と言う設定。
東京タワーはこの前年(昭和33年)に完成。劇中でも「東京の新名所」との紹介がある。その地位も今やスカイツリーに奪われつつある。嗚呼昭和は遠くなりにけり。

叶順子の恋人役・小林勝彦、スポーツ新聞記者役の滝田裕介、一刀斎に言い寄る踊り子役の春川ますみは、若過ぎて最初誰だかわからなかった。
滝田の助手のカメラマン役は、後に服飾評論家となり「サントリー緑茶」のCMにも出演していた市田ひろみ。こちらの方は、昔から全然変っていない(つまり若い頃からオバサンだった?)
「なんと申しましょうか」の口癖で有名だった野球解説者の小西得郎、原作者の五味康祐も本人役で出演。小西は他にも映画出演歴があるせいか、結構演技が上手い。五味康祐は晩年、髭を生やしていた記憶があるが、この当時は髭がなくてのっぺりした顔(台詞は棒読み)。


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