くちづけ

1957年/大映/増村保造監督
出演/川口浩、野添ひとみ、三益愛子、小沢栄太郎、若松健、河原侃二、若松和子、村瀬幸子、見明凡太郎ほか

物語。選挙違反で逮捕された父(小沢栄太郎)の面会に行った欽一(川口浩)は、やはり父が汚職で逮捕された章子(野添ひとみ)と知り合う。二人はバイクで海岸へ向かい、ローラースケートで戯れ、そして酒を飲む。実は章子は母(村瀬幸子)の入院費や、父の保釈金の支払いを迫られていて、自分に関心を寄せる大沢(若松健)に身を売ることさえ考えていた。章子の窮状を知った欽一は、別居中の母(三益愛子)に用立てて貰った金を渡そうとするが…増村保造の監督デビュー作。

三島由紀夫は映画「からっ風野郎」(1960年大映、増村保造監督)に出演した時の経験をもとにして「スタア」と言う短編を書いています。その主人公は、当時流行の「太陽族」風の若手人気俳優という設定。なので、てっきりそのイメージのモチーフは石原裕次郎だろうとずっと思っていました。
でもよく考えてみると、むしろ川口浩だったんでしょうね。「からっ風野郎」と同じ大映だし、増村保造だし。そうそう、長谷川一夫を思わせる老醜の二枚目俳優も出てくるし。
若い頃の川口浩には確かに魅力がありました。
裕次郎のような野性味には欠けますが、育ちのいい品があって、ちょっと拗ね者で、青臭くて、甘ったれたような感じが母性本能を擽って。今では晩年の「探検隊長」のイメージでしか語られることがないですが、もっと評価されていい俳優だと思います。

この映画は、まるで川口ファミリーの映画のような作品。原作が作家で大映の専務だった父親の川口松太郎。川口の母親役が実の母である三益愛子。そして恋人役が後に妻となる野添ひとみ。
松竹から移籍してきた野添は、これが大映初出演で、川口浩とも初共演。
ラストで、川口が「あの子だよ」と野添を紹介すると、三益が「面白そうな子だね」と言うシーンがありますが、今観ている者としては、ああ良かった、お姑さんは未来の花嫁を認めてくれたようだな…って、何だか現実が被ってしまいます。
野添ひとみは抜群にスタイルがいいし、美人ではないが今でも通用しそうなコケテッシュな魅力があります。
川口が公衆電話をかけるシーンでは、東京都内の電話番号が全部一冊の電話帳に収まっていることに時代を感じました。
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ルパン三世

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「ルパン三世」第一シリーズ(1971年10月~72年3月、全23話)を何十年振りかで再見。
この作品はもともと大人向けとして企画され、本放送時には視聴率不振だったそうだが、無理もない。当時の大人はアニメなんか見なかったし、大部分の子供は裏番組の「カルピスまんが劇場」(「アンデルセン物語」「ムーミン」)見てたもの。私が初めて見たのも数年後の再放送時だった。「ど根性ガエル」とか「新オバケのQ太郎」とかやってた夕方6時の再放送枠だ。

1話目を見た時は文字通り「息を呑んだ」と言ってもいい。
だってそれまでアニメ(なんて言葉はまだなかったかな。昔は「テレビ漫画」と言った)のお色気シーンは、パンチラか、せえぜえ「キューティーハニー」ぐらい。まだ「健康的なお色気」と言う程度しか知らなかった。なのにこの番組は一気に「大人のエッチな世界」にまで引き上げて?くれたのだ。
何しろ、スケベそうなハゲ親父が「コースは山あり谷あり、意外な落とし穴が」とか言いながら、磔にされたグラマーなお姉さん(峰不二子)の身体をマジックハンドで撫で回しているのである!なんてイヤラシイんだ。今ほど性的なものが氾濫していなかった時代の小学生にとってはかなり刺激的な光景だった。

と言うわけできっかけはエッチなシーン目当てに見始めたようなもんだったが、無論それだけではない。作品そのものが非常にダークでハードで頽廃的な雰囲気。たまにテレビで垣間見たことがあるフランスのギャング映画のようなカッコよさだ。中でも「魔術師と呼ばれた男」「脱獄のチャンスは一度」「殺し屋はブルースを歌う」などにはシビレた。これらを含む前半期のエピソードはさすが大人向けに作られただけあって、今見ても面白い。一方、子供向けにややシフトした後半期のエピソードは、イマイチ。特に不二子のキャラが変わって、ただの添え物になってしまったのがつまらん。聞けば後半期の演出をしていたのは、あの宮崎駿だったとか。どーりで。私、この人嫌いなんでね。

声優さんは、ルパンの山田康雄さん、次元の小林清志さん、銭形の納谷悟朗さんは以後もずっと同じだったが、峰不二子の二階堂有希子さん、五右衛門の大塚周夫さんは第一シリーズのみ。でも私はこの2人の方が好きだ。特に不二子は二階堂さんじゃないとダメ。萌えない。あのクールでドライな声と口調こそ大人のエロスに満ちている。後でご主人が「ハンターーチャーーンス!!」の柳生博さんだと知った時は驚いたが。キャラクターも、色仕掛けでルパンを騙して働かせて、最後にお宝だけ横取りする後年の計算高い不二子と違って、自らが非常に行動的だった。
五右衛門も、チャールズ・ブロンソンの大塚さんが声を当てていることからも明らかなように、硬派で無骨な、より男臭いキャラクターだった。第二シリーズ以降で声優さんが替わってしまったのは、やはり路線変更の影響なんだろうか。
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仮面ライダー


Youtubeより、元祖「仮面ライダー」第1回(1971年)
http://www.youtube.com/watch?v=0K_Ih1P25Sw part1
http://www.youtube.com/watch?v=uArVuGfO5Oo part2
http://www.youtube.com/watch?v=vSCJEMNgZ4Y part3
これ初めて見たかも。
放送当時、私が見始まった時は既に2号ライダーに代わっていた後だったから、1回目ってたぶん再放送でも見たことがない。なるほど、こう言う始まりだったのね。
やはり最初はフォーマットがいくつかの点で違う。
まだナレーションの中江真司のサブタイトルコール(「怪奇!蜘蛛男!!」)がないし、ライダーに変身ポーズがないのは勿論のこと、「ライダ~キ~ック~!!」と言う技の掛け声もしていない。
ダークグリーンを基調にしたライダーのデザインも地味だし、本郷猛が緑川博士の娘ルリ子に父親殺しと間違われるなど話も暗い。藤岡弘が怪我をせずこの路線のまま行っていたら、さほど人気も出ないまま半年ぐらいで終わっていたのだろうか。
尤も、ライダーの配色はこの旧1号の方がカッコイイのにと子供の頃から思っていたが。
今思うと「仮面ライダー」の作品世界観には不思議なことが多い。
世界征服を企む恐ろしい組織がいるというのに、戦っているのはライダーと協力者の立花藤兵衛のみ。政府や警察はいったい何をやっているのか。
また、そもそもライダーである本郷猛や一文字隼人は普段、何をやって生計を立てているのかよくわからない。立花藤兵衛も最初は喫茶店のマスターだったかと思うと突如としてレーシングクラブに衣替えしたり、更には後に個人で少年ライダー隊なんかも組織したりしているが、どっからそんな金が出ているのか謎だ。よほどの資産家なのだろうか。


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刑事コロンボ 野望の果て

1973年/米ユニヴァーサル/1974年8月17日NHK総合放送
物語。上院議員候補のヘイワード(ジャッキー・クーパー/声・中谷一郎)は確執のあった選挙参謀を殺害し自分と間違われて暗殺されたように見せかける。コロンボ(ピーター・フォーク/声・小池朝雄)はいくつかの矛盾からヘイワードの犯行と睨むが…シリーズ20作目。

これはいわゆる第三シーズンの作品群のひとつで、「別れのワイン」と「意識の下の映像」の間のエピソード。シリーズで最も脂の乗り切った時期だったと思いますがl、これも傑作のひとつでしょう。とにかくプロットが非常に緻密です。

今回の犯人は上院議員候補。大事な選挙の直前にたかが愛人のことで殺人を犯すのは一見動機として少々弱い気もしますが、それは単なるひとつのきっかけに過ぎず、伏線として自分を操り人形にしようとしている被害者と長年確執があったこと、更に自分が狙われたと思わせて有権者の同情を買おうとしたことなどが複合的な要因になっているので、別に違和感はありません。
コロンボの捜査もかなり詳細に描かれています。
事件現場には署長まで来ているのに話を全然聞かず、自分独自の勘で動いていますが、それでも署長はコロンボに全面的に捜査を委任しているあたり、結構信頼されているらしいです。
現場の街灯が消えていたことから被害者に銃弾を撃ち込むのが無理だと推理したり、現場近くに公衆電話がなかったことから犯行声明の矛盾を実地に証明したり、いちいち納得できる説明があります。
例によってネチネチと犯人をしつこく質問攻めにするだけではなく、その妻や愛人にまで外堀から攻勢をかけて行ってイライラさせるプロセスも巧みです。これが一種の心理的トラップになっているので、最後はコロンボがあえて罠をかけるまでもなく、墓穴を掘って自滅してしまうのです。

吹き替えを演じた中谷一郎は、何となくヘイワードに顔も似ています。風車の弥七役であまりにも有名な俳優さんですが、もともとは悪役やクセのある役も得意としていただけに、野心的な政治家の特徴を上手く表現していました。


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刑事コロンボ 魔術師の幻想

1976年/米ユニヴァーサル/1977年12月31日NHK放送
物語。人気マジシャンのサンティーニ(ジャック・キャシディ/声・田口計)は、かつてナチス親衛隊員だった過去をネタにクラブオーナーのジェロームに強請られていたことから殺害する。コロンボ(ピーター・フォーク/声・小池朝雄)はサンティーニを犯人と睨むが、犯行のあった時刻には水中マジックの最中だったというな完璧アリバイがあった……シリーズ36作目。

これも好きだったエピソード。
無線を使ったヘッドアクトでアリバイを偽装すると言うメインのトリックはつまらないですが物語全体の雰囲気がいいです。それも一重にシリーズ常連の犯人役ジャック・キャシディの魅力の賜物。
本職のマジシャンなのではないか?と思わせるような、妖しい華のある独特の雰囲気。舞台上でも見事な手さばきを披露してくれます。クールで高慢で人を見下している嫌な奴と言うキャラクターは以前に犯人役を演じた時とも共通していますが、コロンボの挑戦が罠だと知りながらマジシャンのプライドからあえて受けてしまうあたりには美学が感じられてカッコイイ。
それに対抗してコロンボも彼流のマジック(?)を見せてくれます。例によってストーリーを全然忘れていたのだが、コロンボがさっとポケットから書類を出す終盤のシーンだけは覚えていたぐらい印象的でした。
邦題の付け方も上手くて、魔術師の幻想=サンティーニの完全犯罪を意味するかのように見えて、実は完全犯罪と思い込んでいたサンティーニの考え自体が幻想だった、という切り返しになっています。
難を言えば、サンティーニの娘なんかが出てくる割には殆ど物語に絡むことがなくてあたらキャラクターが無駄になっているところか。
ちなみにこのエピソードの劇伴には、あの"コロンボのテーマ"の作曲者であるヘンリー・マンシーニの手がけた映画「シャレード」のテーマも使われていて、ムードを盛り上げています。


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刑事コロンボ 溶ける糸

1973年/米ユニヴァーサル/1974年6月8日NHK総合放送
物語。外科医のメイフィールド(レナード・ニモイ/声・天田俊明)は新薬開発の名声を独り占めするため、共同研究者のハイデマン博士を殺害しようとする。だが看護婦のシャロンがメイフィールドに不審を抱いたため麻薬中毒者の犯行にみせかけて殺害。更に、元麻薬患者のハリーにその罪を着せるために麻薬を打って転落死に至らしめる。メイフィールドを犯人と睨んだコロンボ(ピーター・フォーク/声・小池朝雄)は、ハイデマンの心臓手術にある特殊な糸が使われていたことを知り…シリーズ14作目。

これも小説版を持っていたエピソード。
純粋に推理ドラマとしての面白さだけで言えば、シリーズで上位に属する出来ではないかと思う。
犯人が第一の殺人を隠蔽するために第二の殺人に手を染め…と言うパターンは一般の推理物でもこのシリーズでもよくあるが、このエピソードでは、第一の殺人が未完成で被害者がまだピンピンしているのに第二第三の殺人を余儀なくされ、しかも肝心の第一の殺人は未遂に終わる、と言う非常に皮肉な結果となっている。
本命の殺人計画自体は、成功していれば完全犯罪だったかもしれないのだが、予定外に行った第二第三の殺人に穴が多すぎたためにコロンボに疑われ破滅してしまうのである。
ある意味ではかなりマヌケな話だが、どんな状況に追い込まれても落ち着きを失わず次々手を打って来る犯人の冷酷非情さが際立っている。
この話が凝っているのは、その「異常なまでの落ち着き」が最後に命取りになってしまうことだ。終盤は犯人とコロンボの激しい駆け引き、接戦が続き、首の皮一枚で犯人の逃げ切り勝ち…と見せて土壇場でコロンボ大逆転。最後まで緊張が途切れない。
ただ残念なのはタイトル(邦題)が中身を台無しにしていること。物語上で視聴者に隠されているハイデマンの殺害方法が、最初からあからさまにわかってしまうようなタイトルでは興味が半減。このシリーズは邦題の付け方が上手なのに、この話に限ってどうしたことだろうか。
犯人役レナード・ニモイの声を当てている天田俊明は「七人の刑事」のレギュラー刑事役などで二枚目系の俳優さんだったと思うが、知的で落ち着いた声色が冷徹な医学者の役柄に合っていた。


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刑事コロンボの吹き替え

「刑事コロンボ」の吹き替え俳優さんたちの名前をざーっと眺めていて、あることに気が付いた。
もともとこのシリーズは、普段殆ど吹き替えをやらない一般俳優が数多く起用されていることで知られているが、更によく見ると、コロンボ役・小池朝雄に縁の深い人が目立つ。
小池朝雄の芸歴を簡単に振り返ってみると、
1950年「文学座」付属演劇研究所に入所。
1963年「文学座」を脱退し福田恒存、芥川比呂志らの結成した「劇団雲」に参加。
1975年「雲」が福田派(劇団昴)と芥川派(演劇集団円)とに分裂すると、「劇団昴」に参加。
…となるのだが、小池の所属した「文学座」「劇団雲」「昴」で、言わば同じ釜の飯を食った仲間が多いのだ。
まず、文学座で一緒だったのが川辺久造(「パイルD-3の壁」のマーカム)、北村和夫(「権力の墓穴」の次長)。
文学座-劇団雲と行動をともにしたのが、西沢利明(「歌声の消えた海」のタイジンガーなど)、岸田今日子(「ロンドンの傘」のリリアン)、高橋昌也(同じくニック)、文野朋子(「二つの顔」のペック夫人)、加藤和夫(「黄金のバックル」のエドワード)、橋爪功(「第三の終章」のエディ)、稲垣昭三(「ルーサン警部の犯罪」のシド)。
文学座-NTLを経て雲に合流した南美江(「死者のメッセージ」のアビゲイル)。
他にも、劇団雲-昴の田島令子(「美食の報酬」のイヴ)もいるし、あと確信がないが小沢紗季子(「もう一つの鍵」のベス)も文学座~劇団昴じゃなかったかしら。
「雲」や「昴」の関係者は当時小池と同じ劇団ということで(セットで?)キャスティングされたのかもしれないが、「文学座」で袂を分かった北村、川辺とはどうだったんだろう。文学座の女帝杉村春子は「劇団雲」に参加したメンバーを終生許さなかったと言われるが、座員がテレビで共演するのはOKだったのかな。


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刑事コロンボ ロンドンの傘

1972年制作/米・ユニヴァーサル作品/1974年4月20日NHK総合放送
物語。イギリス・ロンドン。売れない俳優夫婦のニック(リチャード・ベースハート/声・高橋昌也)とリリアン(オナー・ブラックマン/声・岸田今日子)は、大劇場主のサー・ロジャーをリリアンの色香でたぶらかして金を引き出し、「マクベス」の主役にのし上がるが、 2人の企みを知ったロジャーがスポンサーを降りると言い出したため、もみ合っているうちに殺害してしまう。研修のためアメリカから来ていたコロンボ(ピーター・フォーク/声・小池朝雄)はロンドン警視庁のダーク部長のお供でロジャー邸を訪れ事件に出くわすが…シリーズ13作目。

これも好きなエピソードだったので小説版を持っていた。
初の外国ロケで、コロンボはロンドン警視庁に研修のため渡英しているという珍しい設定。
従ってお客さん、部外者の立場なのでいつものようにゴリ押しで接近していくことはできないから犯人との絡みは少ないし、また最後に仕掛けるトリックも強引過ぎて、推理物としてはあまり感心できない出来である。
それでもこの話は面白い。
初めてのロンドンですっかりおのぼりさん状態のコロンボがバチバチとやたら写真を撮りたがったり、そういうアメリカの田舎者刑事を軽蔑していた謹厳なダーク部長が、最後は一目置いて友情らしきものが芽生えているラストも微笑ましい。
ロンドン=雨と言うイメージを織り込んだ設定も洒落ている。
登場人物にも味わいがあって、サー・ロジャーの執事は、いかにも上品な英国人らしい外見でありながら表情の端に皮肉な笑みを浮かべ、やがてだんだん本性を表していく。この俳優はどこかで見たことがあると思ったら、「マイ・フェア・レディ」のピカリング大佐だった人だ。
犯人は俳優夫婦と言うことで、その吹き替えにも実力派俳優を当てている。
岸田今日子はともかく、高橋昌也の吹き替えと言うのは珍しいのでは?
ちなみにこの2人と小池朝雄は、文学座→劇団雲と行動を共にした「同志」。そう思って見るせいか、吹き替えの息もぴったりだ。


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刑事コロンボ 美食の報酬

1978年/ユニヴァーサル作品/1978年5月22日NHK放送
物語。料理評論家のポール・ジェラード(ルイ・ジュールダン/声・金内吉男)は評論を盾にレストランを脅して金を取っていたが、イタリアンレストランのオーナーシェフ、ヴィットリオ(マイケル・V・ガッツォ/声・藤岡重慶)がジェラードを告発しようとしたことからワインに毒を入れて殺害。コロンボ(ピーター・フォーク/声・小池朝雄)はジェラードを犯人と睨むが、毒物の混入方法がわからなかった……シリーズ42作目。

シリーズの終わりから4番目の作品。
初期のコロンボシリーズは、巧妙な完全犯罪を目論む犯人をコロンボが最後にあっと言わせるトラップに引っ掛けて落とすのが見せ場の、本格推理ドラマだった。犯人は冷酷非情なエリートばかりで余り同情できるところがなく、対するコロンボも職人的な捜査のプロだが、ネチネチとしつこいばかりで人間的な幅は少なかった。
しかし後半になると、犯罪計画は雑だし、それを暴くコロンボの手口にもさほど冴えがなく、推理ドラマとしての出来はいささか落ちる。その代わり犯人やコロンボの人間性が深く描かれたり、ストーリーに遊びが見られてくる。

このエピソードも犯罪自体は単純で、犯人が毒をどうやって入れたか、と言う謎しかないし、その発覚方法もつまらない。
おまけに、最後に犯人がコロンボを殺そうとすることに意味がない。コロンボが一匹狼の探偵ならともかく、警察機構の一員であるコロンボを消したところで、むしろ疑惑を招くばかりであろう。筋立てはかなりお粗末である。

一方、料理界が舞台ということで、次から次へといろいろな料理が出て来て目を楽しませてくれる。イタリア料理、フランス料理、中国料理…いつもは食いはぐれてひもじい思いをしているコロンボも満腹状態で少し食傷気味。日本料理も出て来て、ここに今回の事件のポイントあるのだが、日本間で犯人のジェラードたちがハッピだか何だかわからない不思議な着物を着ているし、芸者さんまでいる。その様子はかなり珍妙だが、アメリカにおける70年代の日本のイメージなんて、こんなもんだったのだ。
ちなみに日系俳優マコ岩松が演じている日本人役の名前がケンジ・オヅ。小津安二郎と溝口健二のもじりだろうか。

最後にはコロンボが自慢の料理の腕を披露し、料理評論家である犯人から「あなたは料理人になるべきだった」と悔し混じりの賛辞を受ける。本職の捜査だけではなく敵の専門の料理でもギャフンと言わせたコロンボの完全勝利と言えるだろう。

見所と言うか聞き所なのは、吹き替えの声優陣。
スタイリッシュな料理評論家ジェラードの声を軽妙に演じた金内吉男はロック・ハドソンなどの吹き替えで知られ、NHKの実写ドラマでも常連だった名優。更に、被害者ヴィットリオの声は「あしたのジョー」丹下段平の藤岡重慶、ヴィットリオの店のシェフ・アルバートに初代バカボンのパパの雨森雅司、ジェラードの愛人イヴに「ベルばら」のオスカルの田島令子、そしてレストラン・デュヴァルのオーナー、マックスに「西部警察」二代目係長役の高城淳一、とかなり豪華である。
ちなみに、イヴを演じたシーラ・ダニーズはピーター・フォークの二度目の奥さんだそうな。つまり本物の「カミさん」が出ていたのである。


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刑事コロンボ 権力の墓穴

1974年/ユニヴァーサル作品/1974年10月5日NHK放送

物語。警察本部次長のマーク(リチャード・カイリー/声・北村和夫)は友人の妻殺しをもみ消す代わりに、自分の妻殺しを手伝わせる。コロンボ(ピーター・フォーク/声・小池朝雄)は、いくつかの矛盾に気が付くが、上司であるマークに捜査を阻まれる…シリーズ25作目。

コロンボシリーズは昔NHKで放送された時に殆ど見たつもりだが、何分三十年前のことなので記憶が曖昧。これなども見たような見ていないような、あやふやだった。
今回の犯人はなんとコロンボの上司の警察本部次長。
アメリカの警察組織がどうなっているのか知らないが、次長といったら当然エリートなのだろう。
従ってコロンボもペコペコし通しで、いつものようにネチネチ食い下がることもできない。
一方の次長もエリートであるがゆえにコロンボの力量を知らず、甘く見ていたようだ。
本作の興味は、自分の上司をどうやってコロンボは逮捕するのか?と言う一点に絞られるが、最後は例によってあっと言わせるトラップが待っていた。それまで権力を嵩に懸かってコロンボを見下していた上司が、言い逃れのできない状況に追い込まれてグウの音もでない結末が実に痛快だ。
犯人の吹き替えを演じた北村和夫は、コロンボ役の小池朝雄とは文学座の同期生。迫力ある口調が居丈高な役柄にぴったりだった。


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