雪之丞変化

yukinojo0101.jpg

1963年/大映/市川崑監督
出演/長谷川一夫、山本富士子、若尾文子、市川雷蔵、勝新太郎、船越英二、市川中車、中村鴈治郎、林成年ほか
物語。雪太郎(長谷川一夫)はもと長崎の大店の息子だったが、抜け荷の濡れ衣を着せられ両親を処刑された。雪太郎は剣術を学ぶ傍ら上方歌舞伎の花形女形中村雪之丞となって江戸に上り、仇の元長崎奉行土部三斎(中村鴈治郎)と広海屋(柳永二郎)、川口屋(伊達三郎)に復讐する…

長谷川一夫の映画出演300本記念として製作されたオールスター物ですが、本当は「引退勧告」作品だったのではないかと思います。
もともと「雪之丞変化」は遡ること28年前に、当時27歳の長谷川先生が初演した当たり役でした。しかし天下の二枚目も年をとります。演技力はさておき、皮膚が弛み腹の出た55歳の長谷川先生が今更演じるのはどう考えてもミスキャスト。しかも他社では1954年東映(東千代介主演)、57年新東宝(美空ひばり主演)、59年再び東映(大川橋蔵主演)と、当代の人気スターによって再三映画化されていた素材です。従って大映が手がけるなら本来は人気実力ナンバーワンの市川雷蔵主演で勝負したかったところでしょうが、長谷川先生がいるのに、差し置いて他の俳優で作るわけにもいきません。そろそろ長谷川先生にも退いてもらわないと困る…が、製作サイドのホンネではなかったかと思われます。
その気持ちは内容にも暗に、と言うか露骨に表れていて、劇中に義賊の昼太郎(市川雷蔵)と言う、この映画オリジナルのキャラクターを登場させています。昼太郎は盗賊として実力十分なのに、先輩の義賊・闇太郎(長谷川二役)があまりにも大物で有名であるため不遇と悲哀を囲っているという役どころで、これはどう見ても現実の雷蔵さんと長谷川先生の関係を揶揄しているとしか思えません。しかもラストでは、闇太郎と女賊のお初(山本富士子)が足を洗うと聞いて昼太郎が「これでいよいよオレの時代だ」とにんまりする、と言う痛烈なオチまで用意されています。
このあてこすりが効いたのが、目論み通り(?)長谷川先生はまもなく映画界を引退しました。ただ皮肉なのは、更に山本富士子さんまで例の5社協定事件で退社しこれが最後の大映作品になってしまい、後の大映没落の萌芽が始まったことです。
今から見ればそういう因縁も感じられる作品ですが、映画自体は元の素材の面白さに市川監督のスタイリッシュでテンポの良い演出がマッチして見事な出来栄え。舞台を意識したような平面的な構図と、アップでは長谷川先生の眼だけ浮き上がらせたりするカットの組み合わせがやたら多いのは、老いた長谷川先生の肉体を隠すための苦肉の演出だったのかもしれませんが、それはそれとしてこのお話しの持つ様式的な妖しい美の世界を完成させるのに役だっています。ただ今ひとつ納得行かなかったのは、雪之丞に恋焦がれる若尾文子のお嬢様役。若い娘が中年にメロメロになる心情もさることながら、そもそも若尾ちゃんの持ち味って、そんなストレートに純情可憐な柄じゃないような気がしたので、何となく違和感がありました。
スポンサーサイト

にほんブログ村

にほんブログ村

関連タグ: 市川雷蔵 長谷川一夫 市川崑 大映

大阪物語

1957年/大映/吉村公三郎監督
出演/市川雷蔵、香川京子、中村鴈治郎、浪花千栄子、三益愛子、勝新太郎、林成年、小野道子、中村玉緒ほか
物語。元禄時代。年貢を払えず妻子を連れて夜逃げした東近江の水呑百姓・仁兵衛(中村鴈治郎)は、大阪の船着き場で落ちた米を拾い続けるうちにいつしか両替商として店を構えるようになる。店の主になった仁兵衛のドケチには拍車がかかり、女房(浪花千栄子)が病気になっても薬も買わない。息子(林成年)はそんな仁兵衛に反発して女遊びを覚え、やがて家を飛び出し、娘(香川京子)も仁兵衛のドケチ仲間お徳(三益愛子)のドラ息子(勝新太郎)と意に染まぬ結婚をさせられそうになり番頭(市川雷蔵)と駆け落ち。ついに仁兵衛は…。

井原西鶴から題材を採り、溝口健二監督が次回作として企画していた作品を、溝口の急逝で吉村公三郎監督が引き継いで映画化。なお、クレジット上のトップは雷蔵さんになっていますが、実際の主役は鴈治郎さんの仁兵衛です。とにかくそのドケチ振りが凄まじい。
苦労を掛けた女房が病気になっても、どうせ助からないなら医者を儲けさせるだけだからと言ってろくに薬も飲まさないし、その女房が死んで通夜に集まって来た人にも、勝手に来ただけだとお茶しかだしません。いくら金儲けといっても最低限度の浮世の義理や仲間付き合いもあろうに、これで商人としてやっていけるのかと思うほどです。傑作なのは、その仁兵衛に負けず劣らずドケチな女商人お徳とのやりとりで、がめつい同士が娘の婚礼の結納金と持参金をめぐって互いに値切り合う様子には爆笑。そんな仁兵衛に愛想を尽かした子供たちが家を飛び出して行ってしまい、ショックで倒れた仁兵衛がさすが少しは改心する…と思いきや、全然そんなことはなくて、最後は蔵の中で千両箱を抱きかかえ発狂してEND。ここまで徹底すると痛快だし、守銭奴としておのれをまっとうした仁兵衛の生涯は、これはこれである意味ハッピーエンドなのでしょう。
父親のドケチ振りに心を痛めている優しい娘役の香川京子さんはいつ見ても可愛らしい。雷蔵さんは香川京子さんと恋仲になる番頭役ですが、脇役なのであまり雷蔵さんらしさは出ていません。
女商人お徳のドラ息子役が、ブレイクする前の勝新。後の豪快な勝新からは考えられない軽薄さで味をだしています。その勝新が林成年さん扮する仁兵衛の息子に女遊びを教えるのですがその時相方になる遊女役は、勝新の後の妻である中村玉緒さん。更に、勝新が入れ込んでいて駆け落ちする遊女役は小野道子さん、つまり林成年の実の妹です。現実の人間関係を考えると何だかややこしいです。ちなみに配役表を見ると丁稚役で子供時代の清水紘治さんが出演していたようなんですが、どれだかわからなかったです。

にほんブログ村

にほんブログ村

関連タグ: 勝新太郎 市川雷蔵 大映

刑事コロンボ 自縛の紐

1974年/米ユニヴァーサル/1975年12月27日NHK放送
物語。スポーツクラブ社長のマイロ(ロバート・コンラッド/声・日下武史)は横領をフライチャンズ店オーナーのスタッフォード(フィリップ・ブランズ/声・雨森雅司)に暴かれそうになり、トレーニング中の事故に見せかけて殺害。コロンボ(ピーター・フォーク/声・小池朝雄)はマイロの仕業と睨むが、犯行があったと思われる時刻の前後、マイロのところへスタッフォードから電話があったという…シリーズ26作目。

「健全な精神は健全な肉体に宿る」と言う言葉がありますが、その逆を行ったのが今回の犯人で、自らも肉体美を誇るスポーツクラブの社長。コロンボが犯人のトレーニングに付き合わされてフラフラになるなど、最初はコミカルな描写もありますが、大部分は対決ムード一色で、珍しくコロンボが怒りを露わにするシーンもあります。
電話録音をアリバイ工作に使う犯人のトリックは、今となってはかなり古臭いものです。しかし、被害者がトレーニングの前に中華料理を食べていたこと、じゅうたんのコーヒーのシミ、トレーニング場の靴痕、マイロの手のやけど、マイロ宅の電話のランプの故障、などなど、いくつもの細かい手がかりからコロンボがじわじわと犯人を包囲して行き、最後は犯人が自分のアリバイを印象付けるために行ったことが決め手となって逆に墓穴を掘ってしまう、と言う構成が非常に緻密であるため、物語自体はちっとも古臭くなっていません。
難を言えば結末におけるコロンボの説明があまりにも長いこと。探偵役が延々と謎解きをやって視聴者がじれったくなると言うのはミステリドラマの最も悪い部分です。ここはやはりストンと落ちるように簡潔な描写でなければ、余韻が台無しでしょう。
マイロ役のロバート・コンラッドは劇中で53歳ということになっているので、それにしては若い…と思ったら、それもそのはずで、実年齢は39歳だったそうです。
声の日下武史さんは劇団四季創設メンバーの1人。映画やドラマでは、特徴のある顔立ちのせいか癖のある役を演じることが多いですね。ちなみにルースを吹き替えている藤野節子さん、同じくジェシカの三田和代さんも劇団四季のメンバー。今回はパッケージ出演だったのでしょうか。
最後にタイトルについて。このシリーズの日本語版タイトル(邦題)のつけ方が上手いことはたびたび触れていますが、今回はやや微妙なところです。「自縛の紐」はあまりにも結末の核心そのものズバリ言い表し過ぎていて出来が悪いと思える一方で、犯人が自分のアリバイを完璧にしようと思って行ったことが、却って自らを縛ってしまった、と言う意味では非常に含蓄のあるタイトルとも言えます。まあいずれにしろ良いタイトルと悪いタイトルは紙一重と言うところでしょうか。

にほんブログ村

にほんブログ村

関連タグ:

怪獣総進撃

kaijusosingekiop.jpg
1968年/東宝/本多猪四郎監督
出演/久保明、小林夕岐子、愛京子、佐原健二、土屋嘉男、田崎潤、伊藤久哉、黒部進、田島義文、アンドリュー・ヒューズほか
物語。20世紀末、怪獣たちは小笠原の怪獣ランドに集められ平和に暮らしていた。だが地球を侵略するキラアク星人に奪われ、コントロールされた怪獣たちは世界各都市を襲う…

これは子供の頃映画館で見ました。でもオリジナルではなく、「東宝チャンピオンまつり」で上映されたリバイバル版のほう。タイトルも「ゴジラ電撃大作戦」と言うわけのわからないものに変わっていました。ちなみに併映は「怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス」と「パンダコパンダ」。「♪パンダ パパンダ コパンダ~」と言う歌を覚えてるな~。
内容は、"銀ラメのテルテル坊主"キラアク星人に操られた怪獣たちが世界各都市を破壊しますが、なんとか人間の手に奪還。怪獣たちはキラアクの手下怪獣キングギドラとのバトルに勝ちキラアクの侵略を阻みます。と、明らかに「怪獣大戦争」の二番煎じで、怪獣の数が増えただけ。久々に大規模な都市破壊シーンが描かれ特撮は結構気合入っていますが、その反面人間ドラマ部分は薄いです。人間側のメカとしてはムーライトSY3号というスペースシャトルみたいなロケットが登場します。月と地球を何回も行ったり来たり、馬車馬のように酷使されるSY3号と久保明さんのモーレツ・サラリーマン振りだけはやたら印象に残ります。
登場怪獣はゴジラ、ミニラ、ラドン、モスラ、アンギラス、バラン、バラゴン、マンダ、クモンガ、ゴロザウルス、そしてキングギドラ。富士をバックにこれだけの怪獣が集まった様は壮観です。もっともバランとバラゴンは名前だけだし、ミニラとクモンガもほとんどいるだけで役立たず。ギドラとの戦いでは一見弱そうなゴロザウルスが意外に健闘しています。意外といえば、この戦いでギドラが死んでしまったのにはびっくり。最後はいつもほうほうの体で逃げ帰るイメージだったので、まさかここで一度死んでいるとは思いませんでした。
畏怖の対象だった怪獣たちが人間に捕らわれ管理される存在に成り下がってしまったのはちょっと情けないですが、これも時の流れで仕方の無いところか。ただ「インファント島の守り神」だったはずのモスラまで一緒にいるのは納得いきません。インファント島の島民たちはどうしちゃったんでしょうか。
kaijusosingeki01.jpg
kaijusosingeki02.jpg
kaijusosingeki03.jpg

にほんブログ村

にほんブログ村

関連タグ: ゴジラ 東宝

刑事コロンボ 構想の死角

1971年制作/米・ユニヴァーサル/1973年8月25日NHK放送
物語。ケン・フランクリン(ジャック・キャシディ/声・田口計)とジム・フェリス(マーティン・ミルナー/声・堀勝之祐)はベストセラー推理作家コンビ。だがフェリスがシリアス物に転向してコンビを解消したいと言い出したため、フランクリンはフェリスを殺害。コロンボ(ピーター・フォーク/声・小池朝雄)はフランクリンの犯行と睨むが、犯行時刻にはサンディエゴの別荘にいたアリバイがあった…シリーズ3作目。

「コロンボ」は1作目が単発ドラマ、2作目がパイロット版なので、この3作目が正式にシリーズ化されて最初のエピソード。若手時代のスティーブン・スピルバーグが監督したことでも有名で、原作者自身(レビンソン&リンク)を思わせる推理作家コンビが登場します。
フランクリンとフェリスは、表向きは共著ということになっているものの、実態はフェリスが全て執筆しフランクリンは出版社と交渉をしたりインタビューを受けたり宣伝活動をするのが専門。従ってコンビを解消することになると、フランクリンは経済的に打撃になるだけではなく、今まで「名推理作家」として得ていた名誉や体面までも失墜します。なのでフランクリンとしてはむしろ後者の動機の方が大きかったんでしょう。自分で書いたわけじゃないのに、世間に向かってはあたかも書いているように振舞っていると、だんだん本人もその気になってしまうもんなんでしょうか。
フランクリンはアリバイを工作した上で相棒を殺し、犯罪組織の仕業に見せかけるわけですが、このトリックは非常に良く出来ています。しかし、そのトリックがあまりにも素晴らしいがゆえに湧く疑問があります。そもそもミステリーを一行も書いていなかったような男が、どうやって巧妙な殺人計画を考案したのか、と。計画外に犯さざるを得なくなった第二の殺人がちょっとお粗末だっただけに、尚更です。
この疑問こそまさにコロンボが犯人を追い詰める武器になっていました。犯人の動機が「推理作家としてのプライド」であればこそ、その点を刺激されるのが一番堪えるからです。なので最後、フランクリンが自白するのがあまりにもあっけなさ過ぎるようにも見えますが、これは逆なんですね。むしろ彼にとっては、自分のプライドを守るためには自白せざるを得ない、と言う矛盾に陥ってしまっていたわけで、そう仕向けるのが最初からコロンボの目的でした。従って使われているのは高度な心理テクニックなんですが、テレビ的にはちょっと地味な印象の結末でした。そういう点も考慮して、後のシリーズではコロンボの鮮やかな逆トリックで締める手法が定着したのでしょう。
出演者で印象深いのは、シリーズ化後の1作目を飾り後に「コロンボ」を代表する犯人の1人となったジャック・キャシディも勿論いいのですが、ある意味でそれ以上に強烈だったのが、脅迫者となる雑貨屋のおばさんです。あのすごい馬面で迫られて来た日には、夢に見そうです。

にほんブログ村

にほんブログ村

関連タグ:

黒の挑戦者

1964年/大映/村山三男監督
出演/田宮二郎、久保菜穂子、坪内ミキ子、藤原礼子、紺野ユカ、山茶花究、見明凡太郎、島田竜三、伊達三郎ほか
物語。新進気鋭の弁護士南郷次郎(田宮二郎)はある夜、息も絶え絶えの若い女(紺野ユカ)から助けを求める電話を受ける。指定された公衆電話にかけつけると女は既に虫の息で、病院に運ぶが死亡した。女の身辺を探った南郷は、怪しげな秘密パーティーと、その背後に隠された黒い組織の存在を知る…黒シリーズの8作目。

モノクロ映像で産業スパイやら法廷物やらの社会派サスペンスを撮っていた黒シリーズの中で、これは唯一のカラー作品。内容も、田宮さん扮するキザでスタイリッシュな若手弁護士が活躍する推理アクションなので黒シリーズらしくありません。いつもモテモテの南郷にやきもちを焼いている女性助手(坪内ミキ子)や古馴染みのベテラン刑事(山茶花究)なんかがレギュラーっぽく出て来るあたりは、むしろこれを1作目として南郷探偵シリーズを立ち上げても良かったんじゃないかと言う感じです。ちなみに原作は「事件記者」でブームを作った島田一男で、これ以前にも「南郷次郎探偵帳 影なき殺人者」(1961年)として天知茂主演により末期の新東宝で映画化されたことがあるようです。
お話は、女の怪死から端を発して、人身売買と麻薬密売を行っている組織の存在を知った南郷がその陰謀を打ち砕くもので、黒幕の女社長(久保菜穂子)が敵と知りながら南郷を愛してしまう悲恋を織り交ぜています。
秘密パーティーで繰り広げられる、パンツ一丁の男に下着姿の女がまたがっての「人間競馬」だとか、壁から突き出た女の足を見て、気にいった女性を選ぶ乱交パーティーだとかの趣向が何やら江戸川乱歩を連想させます。女性助手が拉致されたり、最期に悪のヒロインが主人公の腕の中で息絶えたりする設定も「美女シリーズ」チック。紺野ユカの裸体シルエット、藤原礼子の水着姿、ヌードダンサーのアップとか、サービスシーン?も多いです。田宮さんにはシリアスなお芝居のイメージがありますが、こういう探偵活劇物の主人公も結構はまっているので、案外明智小五郎役も行けたかもしれません。
山茶花究は東宝の人かと思ってましたが大映も結構多いですね。嫌味なインテリ役のイメージが強いですが、この映画のベテラン刑事とか「兵隊やくざ」での浪曲師役とか、人情味のある職人的な役柄でも味があります。坪内ミキ子は「座頭市」や雷蔵さんの時代劇のヒロインをやっている時は素人っぽくてあんまりしっくり来なかったのですが、この作品は地に近いせいか、なかなか可愛かったです。

にほんブログ村

にほんブログ村

関連タグ: 田宮二郎 大映
カレンダー
03 | 2011/04 | 05
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
管理人のサイト
土曜日の美女たち
管理者用
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR