刑事コロンボ 仮面の男

1975年/米ユニヴァーサル/1977年9月24日NHK放送
物語。経営コンサルタントのブレナー(パトリック・マクグーハン/声・佐野浅夫)の正体はCIAのエージェント。二重スパイを働いた過去を元同僚のヘンダーソン(レスリー・ニールセン/声・家弓家正)に握られていたブレナーは、ものとりの犯行に見せかけ殺害する。コロンボ(ピーター・フォーク/声・小池朝雄)はブレナーの犯行と睨むが、捜査にCIAの圧力がかかる…シリーズ34作目

これを子供の頃最初に見たときはかなりハラハラドキドキしました。何せ相手はCIA、下手するとコロンボは消されちゃうのではないかと…。そんなわけないんですけどね。
でも今改めて見ると、むしろギャグドラマに思えてしまう部分も多いです。
まず冒頭、遊園地で目立ちすぎる犯人。射的で100発100中の腕前を見せたり、異様にドでかいパンダの人形を持ち歩いたり…これ意図的に第三者に印象を残そうとしてるのかと思ったら、全然そうじゃないんですね。スパイのくせに、しかもこれから同伴者を殺そうとしていると言うのに不用心もいいところです。
中盤、コロンボに圧力をかけるため現れるCIA及びその部長は「いかにも視聴者がドラマや映画でイメージする諜報員」そのまんま。更にブレナーによるスタインメッツの変装に至っては、噴飯物です。あまりにもCIAが戯画化され過ぎていることに違和感が拭えません。
尤も、後で気が付きましたけど、これらの典型的なスパイドラマじみた演出は、わざとやってるんですね。
と言うのは、犯人役のマクグーハンって、もともとテレビドラマの諜報員役で人気を博したことで有名な人だったそうです。つまりこの話は、最初から「コロンボ対諜報員」と言う、マクグーハンのイメージを当て込んで作られていたわけです。日本で言えば「古畑任三郎」に石坂浩二=金田一耕助が、犯人役で出演したのと似たようなもんなんでしょう。その辺の事情を知らない日本の視聴者には、誇張された諜報員の描き方が奇異に映るのも無理はないわけです。
ただ長年かかってCIAでさえわからなかったブレナーの正体をコロンボがわずか数日で見抜いてしまったのは、やりすぎでしょう。 CIAがバカなのかコロンボが神なのか、と言うことになりますから。
最後にアリバイ崩しの決め手となったのは、録音テープに「入るはずのないものが含まれていた」と言うもので、「アリバイのダイヤル」と似たパターン。ただ、それまでコロンボがアリバイ崩しに奔走していた形跡はなく、最後になって取ってつけたように持ち出されるだけなので、あまり出来のいい結末とは言えません。
ちなみに決め手となった「中国のオリンピックボイコット」って、なんのことだろうと思ったら、この当時中国は台湾問題に抗議して、実際にオリンピックをボイコットしていたそうです。

しかし、そんなことよりこのエピソードの中で最大に悩ましい「謎」は、ラストでのコロンボとブレナーの会話です。

コロンボ 「面白い話があるんです」
ブレナー 「ほう?」
コロンボ 「ある日、ポーカーとマージャンが賭をした」
ブレナー 「で、どうなった?」
コロンボ 「はじめはポーカーが優勢、ところが後半…」
ブレナー 「逆転」
コロンボ 「その通り」

これのどこが「面白い話」なのかわからないし、物語の締め台詞として何を意味しているんだかも、さっぱりわかりません。
「コロンボ」のファンサイトさんhttp://www.clapstick.com/columbo/faq/presc2.html#8によれば、この部分をオリジナル英語版ではこう言っているようです。

Columbo "Would you like to hear something funny?"
Brenner "I'd love to."
Columbo "Today, Chinese...they changed their minds."
Brenner "Did they, again?"
Columbo "They're back in the games..."
Brenner "in the games....Mah-Jong."
Columbo "Mah-jong."

小説版(二見書房サラ・ブックス)によれば、次のような内容になります。

コロンボ 「ブレナーさん、笑い話があるんですよ」
 コロンボはブレナーの背中に話しかけた。
ブレナー 「ほう?ぜひ聞きたいね」
コロンボ 「きょう、中国人が気を変えたそうで、ゲームに参加するそうです。」
ブレナー 「ゲームに?マージャンのだろ?」
コロンボ 「わかっちゃいましたか」

と言うわけで、吹き替え版とは似ても似つきません。つまり吹き替えの台詞は、オリジナルを全く無視した「創作」だったわけです。
ただ、オリジナルの方を見ても、相変わらず何を言いたいんだかよくわからないし、「どこが笑い話なんだ?」と言う謎も解けません。

思うに、この会話の意味を理解する上での大きな間違いは、別にこれは「笑い話=ジョーク」でない、と言うことです。
まず、funnyには「奇妙な、変な、不思議な」のような意味もありますので、ここは「笑い話」と言うより「妙な話」ぐらいのニュアンスでしょう。また、コロンボがここで「ゲーム」と言っているのは、前後関係からして「オリンピックの試合」であることも明らかです。従ってコロンボが言っているのは「不思議なことに、オリンピック不参加を表明していた中国人の気が変わって、やっぱり参加すると言い出したそうですよ」ということです。
では、中国のオリンピック参加問題にかこつけて、コロンボはいったい何を言わんとしてるのか?
ここで忘れてはいけないのは、この話を向けている相手がブレナーだと言うことです。つまり中国を出汁に使って、コロンボは暗にブレナーの「何か」をほのめかしているです。となればそれは、物語全体のテーマからして、ブレナーの正体が「二重スパイ」だった、と言うこと以外に考えられません。
要するにコロンボは、オリンピックに参加すると言ったりしないと言ったり、その時々で態度を変える中国にかこつけて、状況に応じて敵についたり味方についたり、立場を使い分ける二重スパイのブレナーのことを揶揄しているわけです。
それに対してブレナーの方でも、コロンボの言葉に自分への毒が含まれているのを見抜いた上で、「ん?マージャンの話かね?」とすっとぼけて、話をはぐらかして受け流している…
と言うのが、この会話の「意味」でしょう。そう考えるのが最も辻褄の合う解釈だと思います。。
最後に残るもうひとつの「謎」は、それならそうでオリジナル版そのままに訳せばいいものを、何故日本語版では「ポーカーとマージャンがどうのこうの」と、わけのわからない訳を「創作」をしたのか、と言うことです。
これは完全な推測になりますが、「中国への政治的配慮」からではないでしょうか。
と言うのも、NHKでこのエピソ-ドが初めて放送された1977年当時は、翌年締結される日中平和条約をめぐって、外交交渉がデリケートな状況を迎えていた頃なんですね。しかも日中条約は2年前にも1度、交渉が決裂していたのです。なので、いくらテレビドラマの中とは言え「態度を変える中国」を当てこするような台詞を流すのは好ましくない…という、いかにもNHKらしい「配慮」だったのではないか、と推測するわけです。
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刑事コロンボ 殺人処方箋

1968年/米ユニヴァーサル/1972年12月31日NHK総合テレビ放送(日本テレビ版は1988年1月8日)
物語。精神科医のフレミング(ジーン・バリー/声・若山弦蔵)は年上の妻キャロル(ニナ・フォック/声・谷育子)を強盗の仕業に見せかけて殺害。愛人の女優ジョーン(キャスリン・ジャスティス/声・高島雅羅)を妻に変装させてアリバイを作る。ロス警察のコロンボ(ピーター・フォーク/声・小池朝雄)が捜査に現れるが、フレミングのアリバイは完璧で何一つボロを出さない…シリーズ1作目。

ピーター・フォーク氏のご逝去にお悔やみを申し上げます。
寂しいですが、「コロンボ」は永遠に残るし、私も見続けるつもりです。
なのでお別れは言いません。素敵な作品を遺してくれたことに感謝します。

と言うわけで気を取り直して、いつものようにエピソードのレビューを。
記念すべき「刑事コロンボ」の誕生作です。
日本では最初、1972年8月に当時NHKが持っていた実験放送UHFで放送された後、NHK総合テレビで放送されたのは同年12月31日。つまり大晦日の午後と言う、妙な時間帯に単発で放送されたそうです。なので、たぶん見た人はあんまりいなかったんでしょう。「コロンボ」がレギュラー放送されるようになって以降も1度しか再放送されなかったので、ファンにとっては幻の作品になっていたようです。
私も長いことタイトルしか知らなかった記憶があるので、日テレに放送が移ってから見たのかもしれません。単発ドラマとして作られただけあって、やはりシリーズ化されてからの「コロンボ」とは、かなりの点で雰囲気が違います。
物語は常に犯人サイドから描かれ、コロンボが登場するのは犯人と接触する時のみ。普段のコロンボが何を考え、何をしようとしているのかは、犯人のみならずテレビを見ている視聴者にも一切わかりません。従って、いつもふいを突いて現れる「得体の知れない刑事」と言う印象が強いので、見ている方としては自ずと犯人側に感情移入させられて行きます。
コロンボの風采は、髪の毛は少し短くすっきりしていて、トレードマークのレインコートもまだそれほどよれよれになっていません。結構目つきも鋭いし、押しも強い。後年の、すっとぼけたユーモアに包み込みながら巧みな話術でじわじわと相手を引き込んでいく熟練された手法よりは、むしろずけずけと懐に飛び込んでいく攻撃的な手法が目立ち、いかにも辣腕刑事と言う感じが滲み出ています。
しかし犯人もなかなか手強くて、難攻不落。業を煮やしたコロンボは、共犯の愛人にターゲットを切り替えて執拗につきまといます。この時のコロンボは、「女性には(たとえ犯人でも)優しい」と言う後年のイメージとは違って、相当に辛辣です。
ちなみに、現存する吹き替えはNHK版ではなく、日本テレビに放送権が移った時に再収録されたもの。おそらく最初の吹き替えでは、コロンボ=小池さんの口調はこれ以上に厳しいものだったんだろうと思うのですが(対するフレミングが隠密同心・井坂十蔵!の嵯川哲朗さんだったことからしても、尚更)、残念ながら確認するすべがありません。
最後は、コロンボが驚くべき逆トリックを仕掛けて共犯者を落とすことでアリバイを崩すのですが…この逆トリックはちょっと奇想天外と言うか、後年に比べると強引でまだ洗練されていません。いくらリッチなアメリカとは言え、売れない大部屋女優ふぜいがプール付きの家に住んでいると言う設定自体が不自然なので、いかにも”トリックのためのにトリック”という感じがします。しかし犯人とコロンボの対決、息詰まる心理戦の緊迫感は素晴らしいし、やはり傑作のひとつでしょう。
物語の始まりからコロンボ登場まで30分近くかかるし、エンディングでアップになるのもコロンボではなく、フレミングの方。こんな点にもまだ犯人主役のドラマだったことが表れています。

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御用金

1969年/フジテレビ・東京映画製作/東宝配給/五社英雄監督
出演/仲代達矢、中村錦之助、丹波哲郎、浅丘ルリ子、司葉子、夏八木勲、樋浦勉、西村晃、田中邦衛ほか
物語。天保2年、越前国鯖井藩の漁村から漁民全員が「神隠し」に遭い姿を消す。とは表向きで、実は、家老六郷帯刀(丹波哲郎)が藩の財政の立て直しのために幕府の御用船を襲って御用金を横領し、真相を知る漁民を虐殺して「神隠し」に見せかけたのだった。帯刀の妹婿の脇坂孫兵衛(仲代達矢)は、「神隠し」を阻止できなかったことを愧じ、妻(司葉子)と藩を捨てて出奔する。 3年後、江戸で浪人をしていた孫兵衛は、帯刀の側近・高力九内(夏八木勲)の放った刺客(西村晃)に襲われる。孫兵衛は帯刀が再び「神隠し」を行おうとしているのを知り、鯖井に向かう…

フジテレビが初めて製作した劇場用映画。4大スターが共演する「待ち伏せ」(1970年)と時々混同するのですが(錦之助とルリ子が被ってるし)、御用金を強奪しようとするのが「待ち伏せ」で、逆にこちらは御用金略奪を阻止しようとするお話しです。ちなみにここで言う御用金とは、佐渡金山で採れる金の延べ棒のこと。財政の逼迫した鯖井藩が再び「神隠し」、つまり御用金を奪った上で領民を口封じに皆殺ししようとしているのを知った孫兵衛が鯖井に戻り、家老六郷帯刀一派と対決すると言うのがあらましです。
仲代達矢と丹波哲郎の対決と言うと、武士道の矛盾を描いた「切腹」(1962年)を思い出します。尤もあの時の家老役は三國連太郎でしたけど、今回も家老の丹波リンは必ずしも悪役ではありません。藩の窮地を家老として救うため、「大の虫を生かすためには小の虫を殺さねばならない時もある」と言う理屈で領民を犠牲にしようとします。勿論この理屈自体は身勝手なものでしかありませんけども、ただそういう鯖井藩自体も、実は「大の虫」である幕府の前では所詮「小の虫」に過ぎません。従って藩へ忠義を尽くそうとする家老の丹波リンも、それに抵抗しようとしている仲代も、封建体制の歯車のひとつとなっているに過ぎないのではないかと言う諦念が物語の根底に流れています。言い換えると、スカッとした娯楽映画ではありません。尤もそれは仲代さんが主演の時点で明白ですけど。
仲代さんは同じ五社英雄監督の映画「人斬り」では、大義のためには手段を選ばない怜悧で非情な革命家・武知半平太を演じていました。今回は一見それと真逆の役のようですが中身は全く同じなんですね。仲代さんの持っている俳優としての資質、陰のパワーがそうさせたのでしょう。仲代さんほどスケールの大きな「暗さ」を体現した俳優はいない、と言う意味では稀有の存在ですが、ただスター映画が盛んな時代に仲代さんがピンで主演する映画が当たるかと言えば心もとない。そこで正真正銘の大スター、中村錦之助が助演しています。
錦之助は、金目当てに江戸から仲代さんの後を付けて来た浪人、実は幕府の隠密で、彼もまた封建体制の歯車である自分を最後は捨てて、仲代さんを助ける役回りです。ただこの役には最初、三船敏郎がキャスティングされていたそうです。しかし普段は紳士なのに飲むと酒癖が悪くなると言う三船さんがロケ先の宿屋で仲代さんと大喧嘩して途中降板。責任を感じた仲代さんが錦之助に代役を依頼したというもの。従って本来は三船さんをイメージして作られていた浪人役ですから、何かヘンなんですよね。錦之助の持っている明るさ、いい意味での軽さが、全体のトーンが重苦しいこの映画の中では浮きまくっていますし、本人も役作りには苦労したのではないかと思われます。
ルリ子の役は、「神隠し」にあった村の唯一の生き残りで、最初は純情無垢な10代の娘、後にあばずれの女賭博師となって現れるのですが、その演じわけが実に巧みです。失礼ながらこんなに上手な女優さんだったことを今更ながら再認識しました。夏八木勲さんは当時30ぐらいですが既に風格は十分、ただ顔の輪郭が後年よりややふっくらしている感じ。西村晃さんが居合い斬りの達人の役というのは珍しいです(尤も仲代さんにすぐ斬られちゃうのですが)。

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戦国自衛隊

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1979年/角川春樹事務所製作/東宝配給/斉藤光正監督
出演/千葉真一、夏八木勲、渡瀬恒彦、江藤潤、倉石功、竜雷太、かまやつひろし、にしきのあきら、速水亮ほか
物語。伊庭三尉(千葉真一)率いる陸上自衛隊の小隊が演習中に突如戦国時代にタイムスリップ。そこで伊庭は後の上杉謙信である長尾景虎(夏木勲、現・夏八木勲)と出会い、意気投合。「ともに天下を取ろう」と言う景虎に呼応し、川中島で武田信玄(田中浩)と戦う…

出版と映画を連動した大掛かりなメディア戦略(所謂角川商法)で旋風を起こし、沈滞していた当時の日本映画を活気付けたのが角川映画でした。ただ作品の出来は玉石混合で、この時代のノリとか当時の角川映画の勢いとかを理解しないと、何が面白いんだかよくわからないというものもあります。本作なども今見るとちょっと微妙なところ。
「もしも近代兵器を装備した自衛隊が戦国時代にタイムスリップしたら…」と言う、SFとしても時代劇としても刺激的な素材を扱いながら、話はタイムスリップした地点からなかなか進展しません。前半は戦国青春群像劇が延々続きます。
駆け落ちの予定だった恋人・岡田奈々との待ち合わせ場所に行こうとするスターにしきのと連れの鈴木ヒロミツ、村の未亡人とその子供たちと親しくなるムッシュかまやつ、唐突に村娘・小野みゆきと恋に落ちる中康治、そして本能を剥き出しに略奪・強姦に走る渡瀬恒彦と角野卓造(若い!)たち、などなど。戦国時代に放り込まれた汗臭い若者たちの姿を描きたいのだったら別に自衛隊である必要はなく、大学のラグビー部でも町の愚連隊でも何でもよかったのではないかと言う感じです。再三挿入されるスロー・バラード調の劇中音楽も違和感ありありなんですけど、こういうのが、まあ、当時の角川テイストだったわけで、しょうがないですね。
後半、漸く歴史を変えるべく決起した伊庭率いる自衛隊と、信玄率いる武田軍団との対決が始まり、ここからのアクションには迫力があります。ただ、いくら自衛隊と言っても小隊規模の武器弾薬を持っているに過ぎないし、人数もわずか11人。対する武田は何万と言う軍勢だし、信玄は戦国の歴戦の雄です。なので、もし本物の自衛隊だったら、少しはそれなりの策を立ててから合戦に臨むでしょうが、この映画では闇雲に銃を乱射し突っ込んでいくだけ。その結果、自衛隊は雲霞の如く押し寄せてくる軍勢と、信玄の巧妙な戦略に引っかかってしまい、ジープ、トラック、ヘリを失い、隊員たちも次々討たれてしまいます。
ところが1人、兵器が尽きて劣勢になったところから逆に何故か千葉ちゃん演じる伊庭だけは水を得た魚のように生き生きし始め、槍を振るい、弓を取り、刀を抜き、馬を駆って武田の忍び部隊を蹴散らし、敵の本陣に突入。信玄の首を討ち取ることに成功します。つまり勝ったのは自衛隊じゃなくて、超人的な身体能力を備えた伊庭個人なんですね^^;
ちなみに信玄役には当初、三船敏郎がオファーされたと記憶していますが断られ、代役を演じたのは同じ三船プロの田中浩。あの「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」のナレーションで有名な、丸大ハムのCMでお父さん役だった人です。
ボロボロになり身ひとつで京の荒れ寺までたどりついた、生き残った自衛隊員たち。原作(半村良)は昔読んだきりなので細かくは忘れましたが、ラストで伊庭が細川藤孝に討たれ、図らずも自らが織田信長の役割を演じていて歴史を修正するはめになってしまった、と言う皮肉な結末を迎えていたはずです。しかし映画にはそういう説明が一切ないため、単に邪魔者として始末されてしまうだけのように見えます。映画のキャッチコピーも「歴史は俺たちに何をさせようとしているのか!」だったのに、劇中でその答えがよくわからず終い。SF時代劇に底の浅い青春ドラマの要素を入れ込んだ結果、テーマがどこにあるのか生煮えになってしまった感が強いです。
肉体派の暑苦しいクマ髭コンビ、千葉真一と夏八木勲の発する野生のオーラはすごいです。特に自らアクション監督も務めた千葉真一は八面六臂の活躍で、やはりこれは千葉ちゃんのための映画だった、という気がします。
渡瀬恒彦はかつてクーデターを計画して失敗したことがあるという、まるで「皇帝のいない八月」を思わせるアウトローな自衛官役。江藤潤は純朴で垢抜けない、この頃の青春映画には欠かせなかったキャラクター。
前年デビューしたばかりの薬師丸ひろ子が、武田の少年武者役(台詞無し)でワンシーンのみ出演していますが、そのいでたちはまるで桃太郎。そー言えば、この時だったか後だったか、角川文庫のCMに、まさに桃太郎役で出演していたのを思い出します。
他にも岸田森や小池朝雄、成田三樹夫、仲谷昇、鈴木瑞穂らがほんのワンシーンのみの出演なのは今からすると実に豪華で贅沢な使い方にも思えてしまいますが、考えて見れみれば数多くの作品に出演していた彼らであれば、この程度の映画に出ていても当時としてはごく当たり前のことだったわけです。
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無宿(やどなし)

1974年/勝プロ製作/東宝配給/斎藤耕一監督
出演/勝新太郎、高倉健、梶芽衣子、藤間紫、安藤昇、中谷一郎、山城新伍、大滝秀治、今井健二ほか
物語。昭和初期。刑務所で知り合った錠吉(高倉健)と駒玄(勝新太郎)は出所後、女郎屋で再会。女郎のサキエ(梶芽衣子)の足抜けを手伝う。日露戦争で沈没したバルチック艦隊から財宝を引き上げようとしている駒玄は、錠吉が元潜水夫だったと知り仲間に誘うが、断られる。錠吉は殺された兄貴分の仇、仙蔵(安藤昇)を追っていたのだ。やがて仙蔵を刺し、更に黒幕の親分(大滝秀治)も殺した錠吉は、駒玄とサキエに合流。宝探しをしながら三人の奇妙な共同生活の日々が始まるが…

勝新太郎と高倉健の唯一の共演作。
勝プロは「座頭市と用心棒」で三船敏郎を用心棒キャラで出演させましたが、今回の健さんもストイックな着流しの渡世人と言う、東映時代そのままのイメージで登場しています。だったら勝新も、八尾の朝吉でよかったような気もしますが、ここでは、沈没船からお宝を引き上げて一攫千金を夢見る男。更に2人が助けた娼婦の梶芽衣子さんも加わり、男2人と女1人によるひと夏の夢追いロマンが描かれる…はずなのですが、そこにいたるまでの話が結構長い。健さんが兄貴分の仇を狙っているエピソードが挟まっているので、すぐには宝探しが始まりません。
三船さんの時もそうでしたが、勝新はゲストスターの健さんに見せ場を作ろうと気を使ったのでしょう。ただその結果、中盤まで話は散漫になりがち。漸く健さんも合流するのは、最後の30分余りになってからです。
日本とは思えないような、かと言って外国と言うわけでもない、不思議な透明感と美しさを持った白浜と海は、どこの場所と言うわけでなく、おそらく演出とカメラワークの賜物なのでしょう。そこで3人は砂場に立てた掘っ立て小屋で寝食をともにし、昼は沖へ船を出して宝探しに明け暮れ、暇な時は入り江で波と戯れ、そして夢を語り合う、サキエいわく「ずっとこんな日が続けばいい」と言う楽しい日々を送ります。しかし終幕は突然訪れます。
ちなみにメインプロットはフランス映画の「冒険者たち」を下敷きにしているそうなんですが、幸か不幸か「冒険者たち」は昔見たはずなのにすっかり忘れていたので、ちょっと呆気にとられるこの結末は読めませんでした。
話がバラバラなので作品の出来は必ずしもいいと言えませんが、寡黙な健さんと騒がしい勝新、その回りをちょこちょこ付いてくる梶さんのトライアングルがいいので、個人的には俳優さんを見ているだけで楽しめました。
梶芽衣子さんの役は、いつも「海が見えるところに行きたい」とつぶやいている、ちょっと頭の弱い娘。と言うのはたいていの女優さんが綺麗で魅力的に見えるキャラクターですが、実際この映画の梶さんは目ッ茶かわいい。天真爛漫な笑顔の中に時おりふっとみせる、不安げではかない表情やしぐさが何ともいえません。「女囚さそり」や「修羅雪姫」より、こういう役をもっと演じて欲しかった気がします。

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ザ・ガードマン 第67話「高倉キャップを消せ!」

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1966年7月15日放送/大映テレビ室・TBS製作/TBS放送

物語。難波興業の警備を依頼された高倉キャップ(宇津井健)は社長の難波(戸浦六宏)が昔やくざだった前歴に躊躇するが、既に足を洗ったという言葉を信じて警備を引き受ける。ある日、難波興業のビルの前をうろつくサングラス姿の怪しい男…ムショ帰りのジョー(天知茂)が現れる。自動車事故で死んだ弟の死因に疑問を抱いたたジョーは、弟がバーテンをしていた難波のキャバレーにドラマーとして潜入。やがて弟の友人と称する男、実は花井組のチンピラから、難波の麻薬密売の事実を知った弟が口封じに消されたと吹き込まれる。本当は麻薬密売をやっているのは専務の渡辺(高英男)であり、弟を殺したのも渡辺と結託した花井(幸田宗丸)の仕業だったが、そうとは知らぬジョーは難波を仇と信じ込む。
ジョーは難波を狙うが高倉に阻止され、激高したジョーは高倉も消すと宣言。しかし黒幕が渡辺である証拠を掴んだ高倉の言により、漸く真相を知る。渡辺に誘い出されたジョーは拳銃で狙われまくるが、駆けつけた高倉たちに救われる。なおも弟の仇はオレがやるといきり立つジョーだったが高倉を一発殴って気がすんだのか(その後投げ飛ばされ返されたが)高倉と握手して友情を結ぶ。

天知先生ゲストの2回目。またも復讐に燃える役ですが、今回はかなり単細胞なキャラクター。
まんまと騙され、顔はコワイが珍しくいい人っぽい戸浦六宏さんを濡れ衣で殺そうとするので、天知先生のためと言うより戸浦さんのためにどうか失敗してくれと思いながら見ていると、宇津井さんのキャップに赤子の手を捻るがごとく取り押さえられ一安心。しかも怒りに震える天知先生を尻目に「可愛いところがある」と宇津井さんは余裕綽々。最後も唐突に「オレはオマエが好きだ。友達になろう!」と握手を求めてくる宇津井さんの爽やかペースに圧されっぱなしです。一本調子な直情キャラという点では宇津井さんの方が上ですから、得意のニヒルで対抗できなかった時点で分が悪かったですね。尤も、ドラマーになり切って三白眼で虚空を睨みながら一心不乱にドラムを叩くシーンなど、節節ではしっかり自己主張もしていた天知先生でした。
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ザ・ガードマン 第51話「男の争い」

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1966年3月35日放送/大映テレビ室・TBS製作/TBS放送

物語。新築のビル内で立て続けに金庫破りが起こり、ビルの社長大沢(小林重四郎)の依頼で東京パトロールが警備を開始。だがその初日の夜、またしても金庫が破られる。外部から侵入された形跡がないことから、高倉キャップ(宇津井健)は内部の犯行ではないかと睨み、ビルに入っている会社を調べる。その過程で、東日商事社長の立花(天知茂)が大沢の娘・佐枝子(北林早苗)と恋人関係にあることがわかる。更に榊隊員(神山繁)の調査で、13年前に立花の母親の会社が大沢に乗っ取られたことが判明する。立花は母親の会社を乗っ取られただけでなく妹を大沢に陵辱され自殺に追い込まれた復讐を遂げようとしていたのだ。
大沢の経理課長(増田順司)を脅迫・買収して隠し金庫の在り処を聞き出した立花は、裏帳簿を盗み出す。寸でのところで持ち出しは高倉に阻まれるが、立花の目的は二重帳簿の存在を明るみに出し、大沢の不正を暴いたことで果たされていた。急を聞いて駆けつけた佐枝子に「利用したんだ」と言い残して車に乗り込む立花。車中で高倉に「彼女を愛してたんだな」と言われた立花の口元にニヒルな笑みが浮ぶ。

48話からタイトルの「東京警備指令」が取れてただの「ザ・ガードマン」になり、元警部の榊が加入してガードマン7人体制が始まっています。第51話ゲストは、主演の宇津井健さんと新東宝時代の仲間だった天知茂先生。新東宝崩壊後はともに大映に移籍した2人ですが、映画では共演シーンがなかったような?(「陽気な殿様」で同じフレームに映ってますが、その時の天知先生は死体役だったし^^;)。
例によって眉間に皺を寄せながら煙草を燻らせ、背後に宮口二郎さん(ゾル大佐)を従えて現れる天知先生は、初登場シーンから妖しいオーラが立ちまくりです。かと思えば、ボーリングに興じるシーン、更衣室で上半身裸のシーンもあります。後年「美女シリーズ」の時代は少しぼてっとした体型になっていたイメージがありますが、この頃はまだ締まった体をしています。役柄は暗い過去を背負い、復讐のために全てを注ぐ男。しかし利用するために近づいたはずの仇の娘を真実愛してしまい、非情の世界に生きながらもワルにはなれないと言う天知先生ならではの持ち味を発揮しています。
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東京警備指令 ザ・ガードマン 第16話「ガードマンを罠にかけろ」

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1965年7月23日放送/大映テレビ室・TBS製作/TBS放送

物語。見知らぬ女(藤村志保)に誘われるままデートした清水隊員(藤巻潤)。女の車で当夜の警備地の化学工場まで送られるが、そこで守衛が死んでいるのを発見する。更にその時、突如工場が大爆発を起こし清水は気絶。警察に発見され殺人と工場爆破の容疑者で逮捕される。
清水の潔白を信じる高倉キャップ(宇津井健)たちは、アリバイを証明する女の行方を捜すが、当夜立ち寄った宝石店主(江幡高志)、レストランの支配人(藤村有弘)、お座敷バーの女将(浜世津子)は、清水もそんな女も来なかったと言う。だが3人が同じゴルフ倶楽部の会員であることに引っかかりを感じた高倉は、清水の証言で作成した女のモンタージュ写真を手にゴルフ倶楽部を張り込み、そっくりの女・土屋佳久子(ツチヤカクコ、当て字です)を見つけ出す。しかし佳久子は清水と会ったことを否定する。
佳久子を尾行した高倉たちは、爆破された化学工場とは商売敵の会社社長・森川(園井啓介)と密会しているのを掴む。全ては顧客を奪い返すために仕組んだ2人の共謀だった。だが証拠を掴めないまま清水の起訴期限が間近に迫る。高倉は芝居を打ち、コックに化けた小森隊員(中条静夫)が、事件当夜レストランで佳久子を見たと嘘の脅迫する。真に受けた佳久子は小森を殺害しようとするが失敗。おまけに森川と佳久子の会話は全て盗聴テープに録音されてしまう。なおも悪あがきする佳久子だったが、榊警部(神山繁)に取りすくめられ手錠をかけられる。

清水隊員がアパートの自室で仮眠しているところへ突然入ってくる藤村志保さん。「君は誰です?どこから来たんです?」「お星様から…宇宙からよオホホホホ」と抱きつく異様なムード。いくら清水隊員がウブだって、こんなわけのわからん初対面の女といきなりデートするのはかなり不自然なプロットです。
ゲスト2回目の志保さんは今回犯人側の役で、自分の幸せのためなら他人を陥れるのも厭わず、気の弱い愛人の尻を叩いて計画犯罪を実行する、とことん身勝手でしたたかな悪女を演じています。「太閤記」で秀吉の賢妻ねね役を見ていた視聴者は豹変振りに驚いたでしょうが、製作サイドもそれが狙いのキャスティングでしょうか。惚れた男に尽くす役柄は同じともいえますが、方向性が180度逆ですね。
最初に清水を誘惑する時はお馴染み着物姿ですが、次に佳久子として登場したときはヘアバンドにサングラス、ノースリーブのワンピース姿と現代的で都会的な装い。お帽子姿もあります。珍しい悪女役に洋服姿もたくさん見られてファンとしては眼福の一本。
小森隊員役の中条静夫さんはこの頃まだトレードマークの眼鏡をかけていません。後年も作品によっては眼鏡のない時があったので、役作りのアイテムだったのでしょう。
ちなみにチョイ役で出て来る宝石店の客の声に特徴があって、どーも聞き覚えがあると思ったら、「奥様は魔女」のナレーションで有名な声優の中村正さんでした。昔は顔出しの出演もされていたんですね。
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東京警備指令 ザ・ガードマン 第7話「狂った獣」

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1965年5月21日放送/大映テレビ室・TBS製作/TBS放送

物語。ガソリンスタンドを襲った強盗4人組が病院に逃げ込み、警備をしていた荒木隊員(川津祐介)や宿直の女医・瀬川(藤村志保)らが人質になる。そこへ急患の子供を抱えた母親(新村礼子)が駆け込んで来る。子供は腸捻転ですぐに手術が必要な状態。瀬川は強盗たちに邪魔されながら手術を始めるが輸血用の血液が足りない。
強盗たちは仲間が迎えに来ないことから、血液銀行の車を奪って逃走することを企てる。一計を案じた荒木は、血液銀行へかけると装ってガードマン本部に電話をする。荒木の電話に不審を抱いた高倉キャップ(宇津井健)は状況を察知し、榊警部(神山繁)に連絡。吉田隊員(稲葉義男)と清水隊員(藤巻潤)が血液銀行の職員に化けて血液を届け、車の後部シートには高倉と杉井隊員(倉石功)が隠れて病院内に潜入する。強盗たちが仲間割れの気配を見せたすきに1人を取り押さえ、残りの3人も病院を包囲した警官隊が逮捕する。この間にも瀬川は手術を続け、子供は無事助かる。困難な状況の中で仕事をやり遂げた瀬川は荒木と固く握手を交わす。

1965年4月~1971年12月に全350話放送された人気テレビドラマ。当時日本に一つしかなかった警備会社をモデルにガードマンたちの活躍を描いています。尤も私自身は放送を覚えていません。テーマ曲を聞いていた記憶はあるので、子守唄代わりに寝る時間だったのかもしれません。
このドラマのガードマンは警備員と言うより探偵に近くて、事件の捜査全般に携わります。シリーズ途中からは派手なアクションも増えてきたようですが、初期には産業スパイ物なんかもあったりしてサスペンス色が強く、同じ大映の映画「黒シリーズ」に近い雰囲気があります。
第7話ゲストは、当時NHK大河ドラマ「太閤記」で秀吉の妻ねねを演じて人気を博していた藤村志保さん。時代劇女優の志保さんが現代劇のサスペンス物に出演すること自体少ないですが、外科医と言うのも非常に珍しい役柄。白衣姿も当然あります。ただ大部分が手術シーンなので手術マスクをかけてる姿が長くて、あまりお顔が拝見できなかったのはちょっと残念。難しい状況下で執刀をする、本来なら気丈な女医さんのはずなんでしょうけど、地がお淑やかな志保さんだけに何となく頼りない感じがして、思わず"財前を呼んで来い"と言いたくなります。
4人組の強盗の紅一点が、のちにアメリカの文豪ヘンリー・ミラーと結婚・離婚したことでも有名なジャズ歌手のホキ徳田。こういうドラマにも出ていたとはしりませんでした。
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