江戸川乱歩の陰獣

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見所は時代劇の大御所・大友柳太朗先生…?(1977年・松竹・加藤泰監督)

物語。探偵作家の寒川(あおい輝彦)は知り合いになったファンの実業家夫人・小山田静子(香山美子)から意外な相談を受ける。彼女の元の情夫で今はエログロ探偵作家になっている大江春泥から脅迫されているというのだ。春泥からの手紙には他人には知りえないはずの夫婦生活のことまで事細かに書かれていて、そのため静子は神経衰弱になっていた。寒川は編集者の本田(若山富三郎)の手を借り、春泥の行方を捜す。だが春泥は謎の作家で、遥としてその正体は掴めない。やがて春泥から殺人予告状が届き、その予告通り静子の夫の小山田(大友柳太朗)の遺体が発見され…

乱歩の映像化作品にはイマイチ興味が持てません。作り手の過剰な思い込みに付いていけないからです。「美女シリーズ」ような娯楽作品なら安心して観られますけどね。
本作の加藤泰は東映で緋牡丹博徒シリーズなどを撮っていた監督です。あまり詳しく知りませんが、「映像にこだわる職人監督」という感じでしょうか。
公開されたのは、乱歩没後12年目の1977年6月。横溝正史ブームの真っ最中でした。当時、この映画のポスターには「乱歩か、正史か」なんて、明らかに市川崑監督の金田一シリーズを意識した惹句が記されていたように記憶しています。
尤も、映画そのものは観に行かなかったんですけどね。いくらなんでも子供が観に行ける作品じゃないし。数年後、夜中にテレビ放送された時にはじめて見ました。

内容はかなり原作に忠実。大作ではなく小品と言った印象のある映画ですが、昭和初期のレトロな雰囲気は再現されているし、特に浅草界隈の猥雑な感じなどには乱歩らしさが出ていると思います。出演者にも端役で倍賞美津子や加賀まりこ、野際陽子、藤岡琢也、仲谷昇たちが出ていて何気に豪華。
映像面ではアップやローアングル、カメラの前に物を置いて向こう側の人物を撮るショットが多用されているのが特徴的です。この物語は背景にSM趣味があるのですが、大友柳太朗と愛人の田口久美が碁を打っていると、碁石が碁盤を打つ音が途中から鞭を打つ音に変わって、両者の関係を暗示する演出などは、よくぞ考えたものだと思います。

ただ物語的にはやや退屈。この作品の場合、あまり原作らしさを出してしまうと映画としてはさっぱり面白くないんですよね。乱歩の探偵小説は基本的に心理小説なので、動きが少なくて非常にのろのろと話が進行して行きます。小説を読んでいる分にはいいんですけど、映像でそれをやってしまうと非常に間延びした展開になってしまいます。
まあ、前半は映像美で何とか魅せるとしても、最後までそれで押し通してしまったところが致命的です。肝心の謎解きは、赤い部屋の中で何だか情欲に狂っている香山美子の横であおい輝彦の台詞によってなされるのみ。あれじゃ原作を読んでいる人以外には、さっぱりわからないでしょう。犯行の再現映像的な場面を挿れたりするような説明的演出は陳腐で野暮天だと思ったのでしょうが、ミステリー映画だと言うことを忘れて演出家の勝手な趣味に走られても観る者が迷惑するだけです。この辺が、自分の映像美学と両立させながら観客サービスも忘れない市川崑監督との差だと言ったら、酷でしょうか。

ほっぺたの丸い健康的な若僧という感じのあおい輝彦はとても理知的な本格探偵小説家に見えないし、乱歩の妖しい世界にもそぐわない完全なミスキャスト。香山美子と言うと、どうしてもTV版「銭形平次」の恋女房お静さんの清楚なイメージが浮かんでしまうので、この映画でのあられもない痴態はちょっと見てはいけないものを見てしまった気分。
しかし、なんと言っても一番驚くのは大友柳太朗がSM狂の変態おやじで、しかもヅラを被ったパンツ一丁の死体で川の中から吊り上げられる役をやっていることです。まさかと目を疑い、一瞬、よくできた人形か?とも思いましたが、間違いなく本人が演じてます。よくもまあ、大御所の俳優さんがこんな役をやりましたねえ。。。
ちなみに音楽は「美女シリーズ」の鏑木創。劇中劇「パノラマ国殺人事件」のBGMは後に「天国と地獄の美女」に使いまわされています。
(過去記事を全面改稿しました)
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