不毛地帯

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戦争に負けても誇りは失わなかった男が戦後ビジネスの世界で見たのは荒涼たる風景だった(1976年・芸苑社)

物語。11年間のシベリア抑留から帰国した元大本営参謀の壱岐正(仲代達矢)は近畿商事に入社。当時近畿商事は次期戦闘機選定を巡って東京商事と熾烈な競争下にあったが、戦争が心の傷になっている壱岐は当初、軍関係の仕事を避けている。しかし国防が政治家の利権絡みで決められてしまうことを憂える戦友の川又空将補(丹波哲郎)の勧告もありやがて商戦に参画。ライバル東京商事の鮫島(田宮二郎)を相手に、政界を巻き込んだ激しい売り込み工作を繰り広げて行く。最終的に商戦には勝った壱岐だが、その代償に失ったものは・・・

「華麗なる一族」(1974)「金環蝕」(1975)と続いてきた山本薩夫監督の政財界物の第3作です(原作は全部山崎豊子・・・?いや「金環蝕」だけ石川達三)。ただしエンターテイメントとしての醍醐味は作を追うごとに低下しシリアス度が上昇。
群像劇として展開された前2作に比べ本作は専ら壱岐1人が主役。特に前半は、軍関係の仕事を拒んでいた壱岐が何故戦闘機売り込みの商戦に携わるようになったのかという経緯を、途中シベリア時代の回想シーンなども織り交ぜつつ長々描いているのでちょっと退屈。仲代独特の陰々滅々たるマイナスパワーが炸裂します。
漸く面白くなってくるのは商戦が本格化する後半からですが、それでも陰気なトーンは相変わらずでなかなか話に乗っていけません。極めつけは、最後に商戦の犠牲となった川又が自殺か事故かわからない轢死を遂げ人間の原型をとどめないほどバラバラの肉片で発見されるという生々しくもやりきれない結末。これが現実と言ってしまえばそれまでですが、娯楽映画としてはどうしたものか。前2作ではさほどでなかったヤマサツの左翼プロパガンダもかなり露骨になっています。

近畿商事社長役の山形勲は、「巨悪」と言ったら真っ先にこの人が浮かぶ重厚な風格のある役者さん。敵役・防衛庁の貝塚官房長役の小沢栄太郎は嫌になるぐらい憎々しく、小沢の狸芝居が大好きな私でもこの映画に限っては投げ飛ばしてやりたい気分になります。
ちなみに貝塚のモデルとされる海原治は80年代始め「竹村健一の世相講談」ゲストで何度か見かけたことがあるので、へぇあの人が・・・と感慨深いです。モデルとなっている実在の政治家では
久松経企庁長官(大滝秀治)・・・迫水久常(元書記官長、池田内閣経企庁長官)
山城防衛庁長官(内田朝雄)・・・赤城宗徳(岸内閣防衛庁長官)
三島幹事長(杉田俊也)・・・川島正次郎(岸内閣幹事長)
原田空幕長(加藤嘉)・・・源田実(自衛隊空幕長、のち参院議員)
などは容易に推定できます。他にも、岸信介もどきの出っ歯の総理大臣はギャグに近いし、神田隆と久米明は「金環蝕」に引き続きそれぞれ佐藤栄作と池田勇人のそっくりさんで出演。
またヤマサツの社会派オールスター映画では脇役チョイ役にまで無駄に?有名俳優が出演しますが、この映画でも仲谷昇、山口崇、北大路欣也、山本圭、中谷一郎、石浜朗などが顔見せ。
一方、豪華男優陣に対して女優陣は八千草薫(壱岐の妻)、秋吉久美子(壱岐の娘)、そして藤村志保(川又の妻)の三人だけ。
ちなみに藤村志保さんにとっては大映倒産後初めての、6年ぶりの映画出演だったわけですが、出番は最後の最後にちょっとあるだけ、それも泣き役に過ぎないのでさしたる見所はありません。
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