君は海を見たか

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倉本聰原作・脚本のテレビドラマを天知茂主演で映画化した作品(1971年・大映・井上芳夫監督)

物語。真っ黒に塗り潰された絵。
学校で「海の絵を描け」と言われて11歳の正一が描いた絵である。ずっと以前、一度だけ父親に見せてもらったことのある真っ暗な海の底を描いたのだ。
正一の父・増子一郎(天知茂)は海中公園建設の設計技師。仕事一筋の猛烈サラリーマンである増子は妻亡き後、息子を妹(正一にとっては叔母)の弓子(寺田路恵)に任せっきりで、普段ろくずっぽ話をしたこともない。
ある日、体の異状を訴えた正一を弓子が病院へ連れて行くと大学病院に回され、更に精密検査の結果即座に入院させられる。その間も土佐の建設現場へ行き放しだった増子が漸く帰京し、忙しい中渋々と言った感じで病院に行くと、主治医(内藤武敏)から「ウィルムス性腫瘍が進行しており長くてあと三ヶ月の命」と宣告される。
愕然とする増子。「何故もっと早く気がつかなかったんだ」とつぶやく。すると弓子が「正一は二ヶ月前にも兄さんに言っていたそうよ」と言う。例によって仕事にかまけて、聞き流していたのだ。
残された時間を息子と過ごすため会社に休職願いを出した増子は担任の先生(中山仁)を訪ね、父親として何をしてやったらいいのだろうかと尋ねる。先生は正一が描いた黒い海の絵の話をし、「普通の父親と子供のように、海を青いと感じさせてやることが重要ではないのか」と言う…。

20年ぐらい前にテレビで見た作品をビデオで再見。大映時代の天知茂が末期に出演した唯一の(大映での)主演作ですが、あろうことかサラリーマン役、それも不治の病に冒された子供の父親という役。究極のミスマッチが強烈です。
「あの」天知茂が息子相手に「パパは…」と語りかけたり、会社で工事の遅れをせっつかれて「文句は天気に言ってくださいよ」と愚痴ったり、作業服姿でラーメンをすすったり、宴会で手を叩いて一緒に歌ったりする場面はある意味でシュール。ここまで「普通の人」を演じるのは珍しいという気がします。
かと思いきや、息子の余命を告知された時などはまるで「江戸川乱歩の美女シリーズ」のDVDカバー写真さながらの凄まじい形相を浮かべたりもします。どうしても天知茂=ニヒルと言う固定観念が邪魔しがちですが、家庭を顧みなかった仕事人間が急にぎこちなく父親らしいことをし始める姿には普段およそ家庭的なイメージのない天知先生だけに却って説得力があります。また一方では、息子が死んだ後で、結局自分の自己満足で良い父親を演じていたに過ぎなかったのではないか…と独りくどくど悩むあたりに、本来の持ち味である孤高のヒロイズムも生かされています。
主治医役の内藤武敏は誠実さに適度の素っ気なさを交えたいかにも医学者らしいと言った雰囲気のはまり役で、物語にリアリティを与えています。また学閥を楯に診療を冷たく拒む嫌味な教授役で中村伸郎が出てきたときは、思わずここは浪速大学(by白い巨塔)かと思ってしまいました。
演出も淡々としていていいのですが、ただ肝心な場面で奇を衒ったりするのがちょっと目障り。劇的な場面はむしろ普通に撮った方が(天知先生のキャラがくどいだけに)良かったと思うのですが。
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