日本沈没

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大作映画は丹波とともに(1973年・東宝・森谷司郎監督)

物語。 日本海溝の調査をしていた地球物理学者の田所博士(小林桂樹)、深海艇の操舵士・小野寺(藤岡弘)らは地殻変動で日本が沈没してしまう事態を予見。その直後、東京に大地震が起こり360万人の死者・行方不明者が出る。山本首相(丹波哲郎)は1億1千万日本人を脱出させるため外交交渉を開始するが、その間にも沈没の時期は加速して…。

70年代のパニック物、というより大作映画の原点となった作品。当時この映画の大ヒットで史上空前の配給収入を上げた東宝は、これも創業以来初めての臨時ボーナスを全社員に支給した、という逸話があります。

映画は冒頭、何億年も前から大陸が移動して、現在の日本列島が形作られるまでが示され、それに続き公開当時の日本の姿が映し出されます。富士山、新幹線、ねぶた祭り、新車のモデルショー、行楽地、ラッシュアワー…現役時代の長嶋茂雄も見られます。この日本が…野や山が、街が、人々が…この全てが沈んでしまうのか…と、これから起こることを観る者を最初から暗示させ引き込んで行く、手堅くも効果的な手法です。

「日本が沈没する」という荒唐無稽な課題を正面から受け止め、東大の竹内均教授(本物)まで引っ張り出して、できるだけ観客が納得するよう科学的根拠を裏づけています。こういう生真面目な演出は良くも悪くも東宝らしいのですが、説明的なシーンが多いのでいささか退屈です。また、藤岡、丹波、小林らのそれぞれに話が分散して中心がぼやけてしまうので展開が平板になりがちです。藤岡といしだあゆみのシュールな?男女関係なんかは、後の大作物だったらここぞとばかりにくどくど、だらだら描くウザったらしい箇所。それを非常にあっさり扱っているところは良いのですが。

最大の見せ場は、渡老人(島田正吾)が山本首相(丹波哲郎)に「日本民族の採るべき進路」の第四のオプションとして「何もせんほうがいい」、つまり日本列島とともにそこに住む日本人も一緒に沈んでしまうのが一番いいのではないか、を提示する場面でしょう。演技なのかマジなのか、珍しく丹波が目を潤ませるウエットな芝居を見せてくれるとともに「『日本人』とは何か?」という根源的な命題を突きつける名場面です。ここで泣けないような奴は日本人じゃない(?)

この頃の丹波はまだ50そこそこ。当時、戦後最年少で政権に上り詰めた「コンピュータ付きブルドーザー」こと田中角栄首相を彷彿させます。もっとも角さんは日本を沈めない代わりに、日本列島改造計画で土地インフレを招き日本経済を沈没させてしまいました。丹波の首相はそのアンチテーゼなのかもしれません。丹波はこれ以降大作映画の「顔」となり、どんなにつまらない内容でも丹波が出ているだけでスケールの大きさを感じさせるという稀有な存在感を発揮。こんな俳優はもう二度と出てこないでしょう。二谷英明、中丸忠雄、滝田裕介の地味なおじさんスリーアミーゴズの好演も光ります。

一方、俳優たちの熱演に対して、特撮パート(中野昭慶)はイマイチ。地震の被害に見舞われる人々などの細かいリアルな描写はいいのですが、「日本沈没」じゃなくて「日本大爆破」なんじゃないかと思うぐらい爆発炎上に終始し、肝心の日本が沈没する場面になると航空写真のような俯瞰図で示されるだけなので、え、もう沈んじゃったの!?という感じ。恐怖感がビジュアル面で伝わって来ません。
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