影の車

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松本清張の連作小説『影の車』より短編「潜在光景」の映画化(1970年・松竹・野村芳太郎監督)。

物語。旅行案内所に勤める浜島(加藤剛)は或る日、帰りのバスの中で偶然幼馴染の泰子(岩下志麻)と再会する。結婚して10年になる妻(小川真由美)との間には会話もなく、団地と職場を往復するだけの平凡で味気ない毎日を送っていた浜島と、4年前夫に先立たれ保険外交員をしながら六歳の息子・健一と暮らす泰子。2人は何度か会ううちに惹かれ合い、結ばれる。
以来妻の目を盗んで泰子の家を訪れる浜島。だが健一が一向に懐こうとしないのが気になる。そればかりか自分への敵意、やがて殺意すら感じるようになる。浜島には幼い日の、忘れることのできない記憶があったのだ…

どこにでもいるごく普通の人間がふとしたきっかけから破滅に追い込まれて行くという清張お得意パターンの短編を、橋本忍脚本・野村芳太郎監督ら清張作品の映画化では定評のあるスタッフが手がけた心理サスペンスの佳作。
この映画はとてもエロいです。
昼間はキリッと髪を束ね背筋をピンと伸ばしてセールスに歩き、家に帰れば子供に優しい清楚な母親。それが夜になると、ガラス戸を1枚隔てて子供が寝ている隣の部屋で息を殺すようにして愛人に抱かれる…というシチュエーションがすごく淫靡な雰囲気。ラブシーンが多い割りにヌードなどはちっとも見えないにもかかわらず、大人のお色気むんむん漂わせた岩下志麻(当時29歳)の、執拗にアップされるエクスタシーの表情だけで十分お腹いっぱいという感じです^^;また、不倫関係に陥る過程も丁寧に描かれていて、例えば最初の訪問時にはなかった灰皿が何度目かの時は用意されていたりするなど、2人の間の距離がだんだん縮まっていく様子がさりげなく自然に描写されています。
そして母親と愛人との関係を、無表情に見つめている子供が実にコワイ。
素で馬鹿なんだか利口なんだかよくわからないぼんやりした顔つきのこのガキ自体も不気味なのですが、ここに加藤剛自身の子供時代の記憶がオーバーラップしていき、かつてやはり自分の母親と伯父が愛人関係にあって、その伯父を憎悪していたことが劇中で予め明かされているので、妄想のリアリティを増幅しています(この母親と伯父を演じる岩崎加根子と滝田裕介が地味なフツーのオバサン、オジサン然としてるところが却って生々しくて、またいやらしい感じ)。芥川也寸志の甘く、そして不安を誘うような音楽も効果的です。私も男ですが「男の子にとっての母親」は「女の子にとっての父親」ともまた違っていて、この逆のパターンで話はたぶん成立しないのでしょうね。
加藤剛は当時ちょうど「大岡越前」を始めた頃だと思うのですが、生真面目で誠実そうなキャラは同じであるにもかかわらずお奉行様とは全く相反する人物を演じ分けています。世間話好きな主婦・野村昭子や刑事・芦田伸介なんかはあまりに典型的な配役なのでちょっと笑ってしまいますが。
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