破戒

島崎藤村原作の映画化(1962年・大映・市川崑監督)。

物語。明治30年代の信州・飯山。
部落出身の素性を隠して小学校の教師をしている瀬川丑松(市川雷蔵)はそのため父の死に目にも会えず、暗く孤独に陥って行く。
丑松が部落民ではないかという噂が流れ始めた或る日、かねてより心の師と仰いでいた部落解放運動家の猪子(三國連太郎)が訪ねて来るが、出自がばれることを怖れた丑松は「あなたを知らない」と言ってしまう。落胆して帰る猪子の姿に丑松はやりきれない思いを募らせる。
翌日、猪子が暴漢に襲われ殺されてしまう。自分が猪子を死に追いやってしまったと責める丑松は生徒たちの前で部落民であることを告白し、嘘をついていたことを土下座して詫びる。
やがて猪子の遺志を継ぐ決意をした丑松は、遺骨を抱いて帰る猪子の妻(岸田今日子)とともに上京すべく、同僚の土屋(長門裕之)や丑松を慕うお志保(藤村志保)、そして生徒たちに見送られて飯山を去って行く。

藤村志保さんのデビュー作として知られる作品。厳密に言えばそれ以前にも本名で数本のチョイ役出演歴があるので、芸名・藤村志保としての公式デビュー作ということになります。

120分の物語のうち90分は出自に悩む丑松の姿がただひたすら延々描かれているので、観ているこっちまで息が詰まるような重苦しさ。
しかし最後の30分でカミングアウトしてからは周囲の人々の励ましで立ち直り、前途に一縷の光明を見出して行くところで終わっています。
部落問題の実情やそこに置かれている丑松の厳しい現実からすると甘い結末に疑問は残りますが、少なくとも見ている方としてはほっとさせられる終わり方ではあります。

生まれながらに宿命を背負った人物を演ずるときの雷蔵さんの演技の素晴らしさは今更言うまでもありませんが、個人的に改めて感じ入ったのは、猪子を演じた三國連太郎の上手さ、大きさ。
確か三國自身が被差別部落の家系に繋がっていることをカミングアウトしていると記憶します。しかしそういう背景を措いても、自らは部落解放運動家として世の矢面に立ちながら酸いも甘いも噛み分けてひとの心の弱さも理解している度量の広い人物を、見事に演じ切ってこの映画に深みを与えていると思います。

藤村志保さんは丑松が下宿する蓮華寺の養女・お志保。
今更言うまでもなくこの役名と原作者の名前から芸名が付いたわけですが、飲んだくれの実父(船越英二)の後妻に嫌われて養女に出たものの、好色な住職(中村鴈治郎)の毒牙にかかっちゃったんだか、かかりそうになっちゃったんだかして、いつも暗い顔をして悲しみに耐えているという役柄。その一方で、部落解放に関する猪子の著作も読んでいるし、丑松の出自を知っても全く動じることない、知的で芯の強い女性として描かれています。現在に至る志保さんの基本キャラクターはこのデビュー作で確立されています。
出演者は他に住職の奥様が杉村春子、丑松の父が浜村純、叔父が加藤嘉、小学校の校長が宮口精二など。
大映の裏の顔(?)しゃくれ顎の伊達三郎が部落民、きつね目の木村元(当時は玄)も丑松の同僚教員の1人で出演しています。

ちなみに、音楽の一部がどうも「八つ墓村」に似てる…と思ったら案の定同じ芥川也寸志でした。まぁ確かにどっちも因習に縛られた田舎の話ですけど^^;
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