赤ひげ

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山本周五郎原作の映画化(1965年・黒澤プロ&東宝・黒澤明監督)

物語。三年間の長崎留学から江戸に戻った保本登(加山雄三)は幕府の御番医になるという望みに反して、無理矢理小石川養生所の見習い医にされてしまう。これを留学中に自分を裏切った許婚・ちぐさ(藤山陽子)の父・天野源白(三津田健)の差し金と思い込んだ登は不貞腐れて毎日酒を飲んで過ごす。しかしやがて医長の"赤ひげ"こと新出去定(三船敏郎)の人格に触れ、更に貧しい中でも懸命に生きる人々の姿に接することを通して成長して行く…

「黒澤ヒューマニズムの集大成」と言われる作品。
同時に黒澤映画における「最後の白黒作品」「最後の三船敏郎主演作品」になりました。
ちなみに私が初めてこの映画を見たのは二十歳の頃、夜中のテレビ放送で。最初のうちは「どうせ黒澤のお説教くさい似非ヒューマニズム映画だろう」とたかをくくって寝転がって見ていたものの、だんだんと引き込まれて起き上がり、終いには思わず正座してしまったという思い出があります。黒澤の自信たっぷりで過剰な演出法には反発を感じないではありませんが、その圧倒的な映像表現力には恐れ入るほかありません。

物語は、狂女・おゆみ(香川京子)の話、蒔絵師・六助(藤原釜足)と職人の佐八(山崎努)の死、そして廓に売られた少女・おとよ(二木てるみ)と貧乏長屋の子供・長次(頭師佳孝)の話という人間の生と死にまつわるいくつかのエピソードを通して、医師としても人間的にも未熟だった若者が成長していく過程を描いています。
このうちおゆみのエピソードでは、あの清楚で可憐な香川京子が色情狂の役を演じて額に青筋を立てて鬼気迫る演技をしていますが、いったいどうやって演技をつけたのかと目が点になってしまうような凄まじさ。
また、佐八のエピソードでは、生き別れになっていた女房(桑野みゆき)と再会する場面で風鈴がいっせいに風に吹き鳴れると言う悲しくも美しい描写に、よくもまあこんなワザとらしい演出をできたもんだと内心辟易しつつも、思わず目から汗?が滲みます。
後半のおとよのエピソードを除けばほぼ原作どおりの内容ですが、原作のどこをどう見せれば映画的に絵になるかと、黒澤の演出はいつもながらツボを心得ています。

加山雄三は「椿三十郎」の時にはまだ若大将がそのまま黒澤映画にも出ているという感じでしたが、本作では青二才から徐々に成長を遂げていく姿を好演しています。
三船は一歩引いてその背後で見守る形ですが、この映画を支えているのはやはり三船の存在感。寡黙で厳格な、後年の「男は黙って」式のステレオタイプの芝居が既に始まっている感はありますが、何だかんだ言ってもこれだけ重厚な風貌を演じて見事に様になる俳優は他にいないでしょう。
口は悪いが人の良い養生所の賄い婦たち(野村昭子、七尾伶子、三戸部スエ、辻伊万里)の存在が重くなりがちな物語を救っています。野村昭子はあまり変わりませんね。その賄い婦たちに大根で頭をボコボコ殴られる文学座の大御所・杉村春子は必見。また殆どワンシーンのみで出演している田中絹代や志村喬、笠智衆らも贅沢な使い方です。
美術、照明なども素晴らしく、撮影所における映画作りの頂点を極めた作品のひとつではないかと思います。
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