黒蜥蜴

江戸川乱歩の原作小説を三島由紀夫が劇化した作品の映画化(1962年・大映・井上梅次監督)

物語。怪盗・黒蜥蜴(京マチ子)から宝石商の岩瀬(三島雅夫)に、一人娘の早苗(叶順子)を誘拐するという脅迫状が届く。護衛のため雇われたのは、自称日本一の名探偵・明智小五郎(大木実)。女賊対名探偵の、虚虚実実の対決が始まる…!

脚本・新藤兼人、音楽・黛敏郎、そして主演はグランプリ女優・京マチ子という超豪華な顔ぶれで製作されたミュージカル仕立ての不思議な作品。
何しろ乱歩のオリジナルではなくて三島の戯曲が事実上の原作なのです。三島独特の修辞に満ちた長台詞が飛び交う人工的世界を、舞台ならともかく映画で表現するのは非常に不自然。ならば、と言うわけなのか、ミュージカルの要素を導入して(ミュージカルそのものではなない)軽演劇風に仕上げられています。その結果、物語の不自然さは救われたものの、作品の意図がどこにあるのかよくわからないものになってしまいました。
まずタイトルバックからいきなり、三島由紀夫作詞による「黒蜥蜴の歌」に乗せて鞭をふるいながら編みタイツ姿で踊る京マチ子が登場します。更に、早苗の誘拐に失敗して警官隊に追い詰められた京マチ子は紳士に変装してくるくる踊りながら逃げて行く。京マチ子はOSK出身だから踊りは堂に入ったものなのですが、この唐突感には唖然。しかし、更に次々と奇抜な演出が繰り出されます。
場面変わって岩瀬邸。「♪用心棒ったら食いしん棒~」と言う、緊張感のない歌と踊りに興ずるのは丸井太郎(「図々しい奴」)、北城寿太郎(「大怪獣ガメラ」の自衛隊司令官)、藤山浩二(「ガメラ対バルゴン」の極悪人・小野寺)、そしてヒゲの阿部脩(プロレスラー)などなどおよそミュージカルに似つかわしくない面々。女中に化けた黒蜥蜴の手下の女は「黄色い獅子、朝のたてがみと夜の尻尾」とか何とか三島特有の唯美的レトリック丸出しの台詞で暗号電話。そして早苗誘拐に成功した手下たちはご褒美に黒蜥蜴から「爬虫類の位」とやらを頂戴し、大喜びでまた踊り出す。それを横目に見ていた川口浩は「ボクはいつになったら爬虫類になれるのですか?」と恨めしそう。
極めつけは、明智小五郎が自分を鼓舞する台詞「しっかりしろ、日本一!」。って、どこの世界に自分に日本一って呼びかける奴がいるんじゃいっ。うーむ、当時まだ乱歩先生はご存命だったと思いますが、これをどうご覧になったのかしら。三島雅夫のおやじの、一人だけテンション高いバカ笑いもやたら印象的。
明智役は何故大映専属の俳優がやらなかったのか不思議ですが、考えてみれば確かに船越英二、菅原謙次、根上淳じゃイメージ違うし、天知茂はまだ新東宝か。それにしても無骨でイモっぽい大木実にはインテリジェンスや色気が感じられず、とうてい黒蜥蜴が惚れそうに思えないのですが。
ちなみに、監督の井上梅次は後にテレビの「江戸川乱歩の美女シリーズ」でもメイン監督。「黒蜥蜴」も「悪魔のような美女」(黒蜥蜴は小川真由美、明智小五郎はもち天知茂)のタイトルでドラマ化されているので、比較して見るのも面白いかも。
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