黒の超特急

田宮二郎主演の「黒」シリーズ第11作目にして最終作(1964年・大映・増村保造監督)

物語。岡山の不動産屋・桔梗敬一(田宮二郎)の許へ東京の中江(加東大介)と言う男が訪れる。中江は、近く自動車工場ができるので、旧家の息子で地元に顔が利く桔梗にその用地買収の仲介をして欲しいと言うのだ。しかし中江の真の狙いは買い叩いた土地を新幹線用地として新幹線公団に高く売りつけることだった。そのため3年前から公団秘書の田丸陽子(藤由紀子)を買収して理事の財津(船越英二)を誘惑させ、第二次新幹線計画の情報を聞き出していたのだ。その事実を知った桔梗は中江を強請るため上京するが…

最終作では原点に戻り第1作と同じ梶山季之原作、増村監督、そして田宮主演の布陣。
この映画は観ているのがちょっと辛かったです。大金を掴んでのし上がろうとあがく主人公がだんだん田宮さん自身に見えてしまったし、しかもその犠牲になる役が実の奥さん、つまり後の田宮夫人である藤由紀子さんなんですから、尚更。現実がオーバーラップしちゃいましたね。。

それはともかくとして、物語は最初に加東大介が持ち込ん来る話が美味過ぎるので、それ自体が詐欺なのでは?と観る者を緊張させますが、何もなく無事取引が終了。…と思わせておいて、実はその裏があったというふうに進みます。
自分が利用されたと知った田宮は、用済みで捨てられた藤を抱き込んで加東を強請りにかかります。ここから田宮・藤コンビと加東・船越一派の騙しあいが始まるのですが、金に執着する度合いはどちらも劣らず悪対悪の戦い。ただ思慮の浅い若僧の田宮に対して加東の側には船越の舅の大物代議士・石黒達也が控えているので巨悪の度合いでは遥かに上手。結局、罠にはまって藤が殺されてしまい、それを知った田宮は「俺は人殺しをしてまで金儲けしようとは思わない」と翻意して、加東を警察に逮捕させてしまうのですが…本来ならここで正義感など出さずに最後まで悪のままで行った方が物語としての首尾一貫性があったかもしれません。ただ主人公が田宮本人に見えてしまった私個人的には、奥さんがひどい目にあったんだから田宮さんが怒るのも当たり前だよなあ、と妙に納得してしまったのでした。

田宮二郎は、犬シリーズや悪名シリーズの軽妙で明るい役の方が個人的には好みですけど、こういう野心に燃えるギラギラした田舎青年の役はやはり田宮の独壇場でしょう。今更ながら気づきましたけど、このモチーフはアラン・ドロン(「太陽がいっぱい」)なんですね。加えてドロンとは違う、日本的な泥臭さもまた魅力のひとつ。
藤由紀子の役は、シリーズ初期なら叶順子がやっていた役でしょう。叶順子がこの時点では既に引退してしまっているため、シリーズ中期以降のヒロインだった藤由紀子を増村監督もそのまま使っているわけですが、感情を押し殺したぶっきら棒な口調や陰々滅々たる雰囲気は叶順子とそっくり同じ演技をつけています。ただ叶順子なら(或いは若尾文子なら)もっとふてぶてしさが前面に出そうなところなのに、藤由紀子の場合は少し線が細いせいか日陰者の女のか弱さ、儚さが見え隠れしてしまっているように思います。しかし加東に絞め殺されるシーンではスカートがまくれて太ももが露わになり、凄まじい絶叫を上げる女優魂を発揮しています。
加東大介は東宝喜劇じゃコミカルな役をやっていましたが、ここでは削いだような鋭い眼を生かして凄みのある悪役を好演。船越英二は、加東の愛人トラップにかかり強請られる気弱なエリートで第1作「黒の試走車」と同じような役柄。相変わらず情けない色男をやらせると光ります(そう言えば和製マルチェロ・マストロヤンニって言われてたんですよね)
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