本陣殺人事件

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横溝正史原作ミステリーの佳作(1975年・たかばやしよういちプロ+映像京都+ATG・高林陽一監督)

物語。4月も末と言うのに季節外れの雪の降った日、岡山の旧本陣家の当主・一柳賢蔵(田村高廣)と克子(水原ゆう紀)の婚礼が行われる。その夜、琴の音と女の叫び声が聞こえ、新郎新婦が血まみれの死体となって発見される。現場は完全な密室であり、凶器の日本刀は庭に刺さっていた。磯川警部(東野孝彦、後の東野英心)は婚礼の前日、一柳家を尋ねて来た三本指の男(常田富士男)に疑いをかける。一方、克子の叔父の銀造(加賀邦男)は探偵の金田一耕助(中尾彬)に捜査を依頼する…

1970年代の横溝正史ブームの先陣を切って、角川の「犬神家の一族」より1年前に公開された作品。
貧乏所帯のATG映画と言うことで、時代を現代に置き換え、金田一も70年代風にジーンズ姿。出演者もビッグネームは田村高廣ぐらいなので、市川崑=石坂浩二コンビの絢爛豪華な金田一シリーズを見慣れた目からするとかなり地味で違和感もあります。
しかし作品の出来は上々。個人的には横溝映画化作品のトップに推したいぐらいです。
ストーリー自体は原作に極めて忠実。本作の場合、他の横溝作品にありがちな複雑な人間関係はないし、事件も冒頭にひとつだけ。物語の大半は犯人とトリックの解明に費やされます。特に映画では推理の部分を思い切り捨象して、「旧家の血の悲劇」を浮き彫りにしています。
異常なまでに潔癖性でプライドの高い賢蔵、その兄に激しい劣等感を抱く弟の三郎(新田章)、そして末の妹で少し知恵的遅れの少女・鈴子(高沢順子)。
中でも、純粋無垢な鈴子が愛猫と兄夫婦の死を通してやがて訪れ来る自分の運命を予感するプロセスが、淡々と描かれている点が秀逸。琴の音色、鈴の音、水車の回る音がBGMとして効果的に使われ、大映京都の残党である映像京都の西岡善信(美術)、森田富士郎(カメラ)らのスタッフ、そしてメジャーデビュー以前の大林宣彦が担当したと言う音楽も非常に叙情的で、日本的無常美の世界を詩情豊かに表現しています。
ストーリー構成に凝り過ぎていて、ややとっつきにくい面はありますが、元々ATGは商業主義と一線を画した芸術映画を志向していたのですからそれはやむを得ないところでしょう。
金田一を演じた中尾彬については当時、横溝先生が「爽やかな感じのする人」と評していたのを読んだ記憶がありますが、確かに後年のアブラギッシュなエロ親父からは想像できないほど若くて細くて、クールな探偵を好演しています(ちなみに角川文庫の旧版『金田一耕助の冒険』表紙絵の金田一は、明らかに中尾彬をモデルにして描かれていました)。
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