男はつらいよ 寅次郎頑張れ!

torasan20op.jpg
ご存知、渥美清の寅さんシリーズ第20作目(1977年・松竹・山田洋次監督)

物語。とら屋の二階に下宿するワット君(中村雅俊)は食堂の幸子(大竹しのぶ)に惚れている。寅さん(渥美清)のコーチで何とかデートまでは漕ぎ着けたが告白はできない。漸く思い切って告白するが、タイミング悪く母親の病気の知らせで気が動転していた幸子を怒らせてしまう。これを失恋と勘違いしたワット君はガス自殺未遂を起こしてとら屋の二階を爆破(!)いたたまれなくなって故郷の平戸に逃げ帰る。ワット君を心配して平戸にやって来た寅さんは、そこで姉の藤子(藤村志保)に一目惚れ。彼女の営むみやげ物店を手伝い始めるが…

これ公開当時に映画館で観たはずなんですが、殆ど内容を覚えていませんでした。特に藤村志保さんが出ていたことなどさっぱり…だって、マドンナなのに出番が少ないんですもの。と言うことは、主役の寅さんすら脇に追いやられているということでもあり、事実上中村雅俊と大竹しのぶ、当時人気絶頂だった若い二人の物語となっています。

後年、渥美さんが年を取ってからは、寅さんが若い恋人たちのコーチ役に回るというパターンはしばしばありましたが、この時点でも既にそう言う話があったことに驚き。尤も、今では全部で48作あるのうちの20作目なんてのはまだ序盤のように感じてしまいますが、シリーズ物を20作も続けていたらネタ切れを起こしても不思議はないんですけどね。寅さんを失恋させるパターンも出尽くしただろうし。

それはいいとしても、この作品がひどいのは、若者(ワット君)の身勝手な言動に終始するばかりで、どこにも泣けも笑えもできない点です。

まずワット君が他人様の家で迷惑も顧みずガス自殺未遂を図り、とら屋の二階が爆発するという陰惨な展開には、これホントに寅さんの映画か?と目を疑いました。しかもそれほどの大惨事を起こしておきながらさっさと逃げ出すワット君の無責任振りにはあきれるばかり。でもこれはまだほんの序の口です。

故郷に帰ってぶらぶらしているワット君。そこへわざわざ心配して東京から様子を見に来てくれた寅さん。尤も、寅さんにしてみりゃ旅のついでかもしれませんが、客観的に見たら家を破壊されたその文句を言うどころか心配して平戸くんだりまで来てくれるなんて、何て善意の塊みたいな人なんだろう…となるはず。事実、藤村志保さん扮するワット君の姉は感激しているのですが、ワット君には感謝の念が薄杉。
そればかりか、寅さんが姉に一目惚れしたのをいいことに、家の仕事を寅さんに押し付け自分は相変わらずぶらぶら。更に、東京のさくらさん(倍賞千恵子)からの連絡でワット君の失恋は誤解であった(幸子もワット君を好きだった)とわかるや、アカの他人の寅さんに留守番を押し付けて自分は姉ともども嬉々として上京してしまいます。
と、ここまでの展開だけでも自分のことしか考えていない中村雅俊、いやワット君を殴り倒したい衝動に駆られましたが(怒りの余り役と本人との区別が付かなくなってきた^^;)実はまだこれでも十両か幕内下位程度の話で、結びにはとんでもない一番が控えていました。

とんとん拍子にワット君と幸子の結婚まで話が運び、とら屋でささやかな祝宴が行われる日、その間すっかり忘れられていた寅さんがふらふらになって平戸から戻ってきます。さて祝宴の席上、折り返しまた寅さんが姉とともに平戸に帰り、今後もみやげ物店を手伝うと聞いたワット君は急に何やら不機嫌に。そして姉を二階に呼び出したワット君、何を言い出すかと思いきや、「姉さんは寅さんの気持ちを利用しとる!」と決め付けて姉を非難し始めました。弟の思いもよらぬ言葉に泣き出す姉の藤子。
これには観ていた私の憤怒も頂点に達し、テメーコノヤロー、藤村志保さんを(とまたも役と本人を混同し)いじめやがってーっと、目の前のテーブルひっくり返してテレビぶっ壊してやろうかと思いました。今まで散々寅さんを利用していたのはテメーの方だろーが、と。それを棚に上げて、逆に姉に罪を擦り付けるとは。しかも今まで散々寅さんの世話になった恩を仇で返すかのように、自分の恋さえ成就すれば後は邪魔者とばかりにボロ雑巾のように寅さんのポイ捨てを図るとは。これじゃ寅さんが余りにも可哀想。全く何と狡猾で卑劣な若者でしょうか、中村…じゃなくてワット君という奴は。天地ともに許せません!(ちなみにこの話を陰で聞いていた寅さんが淋しく身を引いたのは、おそらく失恋と言うよりワット君の卑しい心に絶望したからに違いないと確信しています)

…尤も(^^;)映画の構成上からすると、この辺りはかなり苦しいところ。と言うのは、いかにこの作品がワット君中心の話であろうと最後は寅さんの「失恋」で終わらないと「男はつらいよ」にならないのですが、肝心の寅さんとマドンナの間には失恋に至るほどの物語も何も生まれていないので、どうにもなりません。そのためワット君を「悪者」にしてでも無理矢理二人の間を裂かないと話が終わらないんですよね。
逆に言うと、マドンナをいかに悪者にしないで寅さんを失恋させるかが難しいところなのです。そのためワット君の姉(藤子)を「とてつもなく純真な心の持ち主」として描いています。
毎週、日曜日の朝には欠かさず教会に通ったり、道端の草花に目を輝かせたり。いい年してちょっとピュア過ぎるんじゃない?という性格にしているのは、そうじゃないとマドンナが寅さんの恋心に気付かないのが不自然になってしまうからでしょう。また、今回のマドンナ役に清純イメージの藤村志保さんを起用したのも藤子の性格の不自然さを少しでも軽減するためであろうと推測されます。
しかしファンとして癪に障るのは、折角マドンナ役を演じながらつまんない使われ方で影の薄かった藤村志保さんのこと。大映育ちの藤村志保さんにとってこれは松竹初出演作で、既にテレビに軸足を移していた志保さんはこの時期の映画出演自体殆どありません。年齢的にもまだお若くてお美しかったのですから、寅さんとマドンナの恋物語が中心の話で出演して欲しかったと思います。

いずれにしろこの作品は映画としてストーリーが破綻しているし、寅さんシリーズは末期を除いて40本近くは観ていると思いますがこれほど不愉快な気持ちになったことはありません。この当時の山田洋次、こうまで不快な若者像を描くとはよっぽど何か腹に据えかねることでもあったんでしょうか?
torasan2001.jpg
torasan2002.jpg
otokora2001.jpg
スポンサーサイト

にほんブログ村

にほんブログ村

関連タグ: 藤村志保 渥美清 松竹
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
管理人のサイト
土曜日の美女たち
管理者用
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR