ルージュの伝言(松任谷由実)

rougenodengon.jpg『ルージュの伝言』と言うのは松任谷由実(ユーミン)の曲のタイトルであると同時に、彼女の自伝的エッセイの題名でもあります。1983年に角川書店から発行され翌年には文庫化されています。

私の手元にあるのは昭和60年(1985年)の文庫版第12版ですが、当時これを読んだ時の感想は「イヤな女だな~」と言うものでした。

再読していないので、どこがどうしてそう思ったのか細部は忘れてしまいました。ただ、ひとつ覚えているのは、ユーミンが学生時代だかの取り巻きの中に、彼女の真似ばっかりしてる子がいて、その後何年も経ってから(つまりユーミンが有名になってから)偶然再会した時に、相手は懐かしそうに話しかけて来たのに、ユーミンは昔のことを思い出して不快になって無視した、と言うようなエピソードが書かれていたことです(違っていたらごめんなさい)
「オリジナリティのないものを憎む」と言う、彼女の面目が躍如としていて面白くはあるのですが、一般人に過ぎない相手からしてみたら、有名になったとたん見下しているようにしか感じられなかったでしょうね。

あともうひとつは、伊勢正三(「二十二歳の別れ」を作詞作曲した「風」のリーダー)から「ユーミンが都会派とか言ったって、所詮八王子だもんね」と言われて、"田舎者のアンタと一緒にされてたまるか!"と猛烈な反発を感じた、と言うエピソードです。
伊勢正三は確か九州ですよね。1960年代頃の九州と東京八王子と、どっちが田舎なのか私にはわかりません。ただユーミンは「八王子で三代続いた老舗の呉服店」とやらのお嬢様であることが誇りであり、「東京オリンピック」を間近で経験した、と言うことが自慢であることは間違いありません。

まあ伊勢正三の「東京コンプレックス」もどうかとは思いますが、少なくとも1970年代までの「東京」は、確かに「地方」とは違う、洗練された別世界と言うイメージだったと思います。

例えばマイペースの「東京」(1974年)と言う曲があります(♪東京へは、もう何度も行きましたね。君の住む、美し都~)。東京へ行った恋人との遠距離恋愛を歌った、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」系のテーマの曲ですが、ここでの東京は「遠い世界」「夢のような憧れの大都会」として描かれています。当時はまだ、東北新幹線も開通していなかったですしね。その「遠い距離」に引き裂かれた恋人たちの、切ない哀感がこれらの歌には込められていました。
しかしJRのイメージソングにも使われたユーミンの「シンデレラ・エクスプレス」(1985年、アルバム「DA・DI・DA」に所収)となると、もう全く違ってしまっています。そこでは「東京」と「地方」とが物理的にも心理的にも、それほど遠い距離ではないと言う感覚になっているからです。うっかりすると「遠距離恋愛こそ今のトレンドなんだぁ♪」と勘違いして憧れてしまいそうな、軽いノリですね。
ちなみに当時(80年代)、地方都市(県庁所在地)のJR駅舎が建て替えられ、どの都市の駅もみんな同じような外観、そして駅前の様子は全て似たような佇まいになってしまいました。これは当時、私自身が身近で経験したことですから間違いありません。
一方、70~80年代初めぐらいまでのユーミンのアルバムは、せえぜえ30~50万枚ぐらいしか売れていません。それが一挙に100万枚を超えるミリオン・セラーになったのは、80年代後半からです。
つまり地方都市もただの「小都会」や「小東京」になってしまい、それぞれの街の特色や質的な違いがだんだん薄れてしまった時代と、ユーミンが広く一般大衆に受け入れられるようになった時代とが、リンクしていることになります。
ユーミンは『ルージュの伝言』の中で「渋谷の路地裏が私にはロンドンに見える」と書いています。これはユーミンの曲を聴く者にとって「地方都市の路地裏が私には東京に見える」と言うのと同じことでもあります。
「ユーミンの時代」(それは現在も続いている)とは、「何を見ても所詮みんな、表層的で同じものしか見ていない」と言う、想像力の欠如と現実からの遊離を加速した時代の始まりだった…と言ったら、言い過ぎでしょうか。。。
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