風速七十五米(メートル)

1963年/大映/田中重雄監督
出演/田宮二郎、宇津井健、叶順子、菅原謙二、高松英郎、浜田ゆう子、見明凡太郎、菅井一郎、北原義郎ほか

物語。「いつか風速七十五メートル以上の大型台風がやって来たら東京のネオンは危険だ!」と説く新聞記者の田村(宇津井健)は台風記者の異名を取っていた。その田村の恋人・照子(叶順子)の父親(見明凡太郎)の経営する建設会社が請け負った巨大ネオンの建設をめぐって、ライバル社の遠藤(菅井一郎)が妨害工作を仕掛けてくる。
ある日照子は学生時代山岳部の仲間だった木谷(田宮二郎)と再会する。木谷は、ネオン建設妨害のため遠藤が送り込んだ手先だった…

物語の実質的な主役は宇津井健ですが、配役クレジット上のトップは田宮二郎です。おそらく大映社内における田宮さんの序列の方が上だったためでしょうが、専属制時代の映画界でこういう現象は珍しくありません。

タイトルからすると一見、台風がテーマのように思えますが、内容は男と女の恋、そして男同士の友情と対決が炸裂する、日活風のサスペンス・アクション物。ただラストでは銀座の街が巨大台風に見舞われる大掛かりな特撮もあるので、サブテーマよりはずっと大きいです。
のっけから巨大台風の襲来を予言して1人で騒いでいる宇津井健の言動は今見るとちょっと奇矯で唐突な感もありますが、当時は伊勢湾台風による甚大な被害の記憶もまだ新しい頃だったので、十分観客にアピールする社会性もあったわけです(伊勢湾台風のニュースフィルムも劇中に使用されています)

お話は、巨大ネオンの危険性を唱える新聞記者の宇津井と、その巨大ネオン建設を請け負っている会社の娘の叶順子が恋仲らしいので、一種のロミオとジュリエットなのかと思ったらそうではなく、父親公認の間柄。その関係が微妙になるのは、叶の昔の恋人で実はネオン建設を妨害するライバル社の手先でもある田宮が現れてからで、そのライバル社に父親を殺されても叶は田宮への想いを断ち難く懊悩します。正義感を振り回すだけの単細胞なお人好し宇津井より、複雑な影を持ったワルの田宮の方が魅力的、と言うわけです。
怒りに燃える宇津井は田宮と対決。しかし、それが正義感からなのか、嫉妬からなのか、よくわかりません。
最後は宇津井の予言どおり七十五メートル級の大型台風が東京を襲い、倒壊するネオンから叶を守ろうとして田宮は死んでしまいます。
結局おいしいところは全部田宮に持っていかれた宇津井健なのに、本人はそれに気づいていないのか、愛する田宮を失い亡き父が最後まで守ろうとしたネオンまで失い(建設費用の莫大な借金だけは残って)茫然としている叶順子をなぐさめるでもなく、例によって「台風は人災だ!」と相変わらずの持論を力説してる・・・というオチ。
こう書くとコミカルになってしまうのですが、一応シリアスなストーリーです。なのに宇津井健のオーバーな熱血芝居のせいなのか、まったく違うところに印象が行ってしまうのは困りもの。後年、大映ドラマに特有の大げさな芝居は大映時代劇の影響だって言う人がいますけど、どー考えてもルーツは宇津井さん本人でしょう。

叶順子はこれが引退作となってしまいました。更に言えば、長年大映現代劇を支えてきた菅原謙次にとってもこれが最後の大映出演作。大映はこの前後に大看板の長谷川一夫、山本富士子を始めとする主演・準主演級の俳優が相次いで退社しています。今にして思えば、この頃から大映没落が始まっていたわけです。
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