大映俳優列伝(36)野口啓二

edajima0516.jpg
大映の十八番のひとつに戦争映画があった。いずれもタイトルが「あゝ」という詠嘆調で始まっていることから「あゝシリーズ」などとも呼ばれるが、決まった名称はない。1959年(昭和34年)の「海軍兵学校物語 あゝ江田島」から始まり、「あゝ特別攻撃隊」(60年)、「あゝ零戦」(65年)、「あゝ海軍」(69年)、「あゝ陸軍隼戦闘隊」(69年)の5本を数える。なお、「あゝ」はつかないが71年の「海兵四号生徒」は「海軍兵学校物語 あゝ江田島」のリメイク物である。
大雑把に戦争映画と言ったが、大部分は若き海軍士官たちの青春を描いた群像映画と言った方がいいだろう。代表的な俳優は5作品全部に出演している本郷功次郎だが、群像劇だけあって有名無名を問わず多くの若手男優が出演している。
その中でも目立っていたのは初期の「海軍兵学校物語 あゝ江田島」「あゝ特別攻撃隊」に出演した野口啓二だ。
生年月日等のプロフィールは一切不明である。一見、本名のように思える野口啓二と言う名前も実はデビュー作「俺たちは狂っていない」(58年)での役名をそのまま芸名にしたようである。この作品で新人ながらいきなり主演デビューを果たしたのである。
ソフト化されたことのない作品なのであらすじしかわからないが、野球で有名な高校の新聞部員・野口が野球部の醜聞を暴いたため不条理なリンチを受けた挙句に自殺してしまうと言う過激な内容だったらしい。
野球部のキャプテン役の小林勝彦、野口のGF役の紺野ユカ、当時現役の高校生で後に東宝へ入社した当銀長太郎もこれがデビュー作である。『日本映画人名事典』によれば、小林や当銀は一般公募に応じてこの映画に出演したらしいので、野口もそうだったのかもしれない。同年入社の本郷功次郎とも同期にあたるわけである。
小林とはその後も「最高殊勲夫人」(59年)などで共演が続いている。そして2人の代表作が「海軍兵学校物語 あゝ江田島」である。
内容はタイトル通り、江田島の海軍兵学校に入学した士官候補生たちの青春物語で、クレジット上は本郷がトップだが、小林が実質的な主演、その親友役の野口が準主演である。
続く「あゝ特別攻撃隊」でも主演本郷の親友役で準主演。いずれも見た目はひ弱そうだが芯の強い若者を演じている。
その後も「犯罪6号地」「熱い砂」(60年)などのアクション物や青春物に準主役クラスで出演していたが、60年10月からは大映テレビ室制作のTVドラマ「拳銃男爵」に主演している。
「少年ジェット」と同じフジテレビの水曜19時半-20時枠で放送された子供向けの30分番組で、テレビドラマデータベースの解説によれば「アクションものだったが、政情不安の時勢(引用注・60年安保や浅沼社会党委員長暗殺のことだろう)のため途中から穏やかな内容に路線変更された」らしい。
ともあれ映画よりテレビが低く見られてたこの時代に子供向けドラマへの転身は格落ちの感が免れない。それで俳優に見切りをつけたのかどうかわからないが、半年でこの番組が終わると芸能界から姿を消してしまうのである。デビューから3年足らずの短い俳優生活だった。

大映映画の世界
スポンサーサイト

にほんブログ村

にほんブログ村

関連タグ: 大映

テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
管理人のサイト
土曜日の美女たち
管理者用
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR